バウンティ・ハンターズ二次 (前編)〜幼い頃の記憶〜 | 信の虹 ー신의 nijiー

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ここは韓国ドラマ「信義」の登場人物をお借りして楽しんでいる個人の趣味の場です。
主に二次小説がメインです。ちま(画像)の世界も大好きです。
もしも私個人の空想の産物に共感してくださる方がいらっしゃったら、
どうぞお付き合いください^ ^

こんばんは。今日は信義のお話しではありません( 人 )"
ふと先日観た「バウンティ・ハンターズ」の二次が思い浮かんで、つらつらと書いてみました。
 
イ・ミンホさん演じる主人公のサンとその兄貴分のヨウ(ウォレス・チョンさん)、二人は以前同僚だったということで。
ならば大人になってから知り合ったのかなと思いますが、
このお話しは二人が同じ養護施設にいたという架空の設定で書きました。サンは中学、ヨウは高校ぐらいの年齢のイメージです。
(映画の内容には全く触れてないのでネタバレにはならないと思いますが、先入観を持たずに映画を観たい方はご注意くださいね)
 
 
 

Upload by Monika Setionoさん

 

風に乗って自由に駆け抜けて
雷鳴と稲光の力強さを追いかける
そして果てしなく広いこの海を胸にいだく
たとえ小さなセイルしかなくても、きっと遠くまで航海できる
 
(バウンティ・ハンターズ主題歌「RUN」by羽泉&イ・ミンホ より一部引用&意訳)
 
 
 
バウンティ・ハンターズ二次 (前編)〜幼い頃の記憶〜
 
 
「サン、お前の中国語って、たまに変だよな」
 
孤児院、向陽園。庭仕事が趣味だという小太りの優しい園長は、地元では有名人だ。
そこで暮らす韓国人の俺は、まだ周りの奴にそんな風にからかわれることがあった。けれど韓国人のユンおばさんに言わせると、俺の韓国語はもっとおかしいそうだ。
ここに来て6年が過ぎた。あと1年で韓国よりもこの国で暮らした時間の方が長くなる。

 
向陽園は親のいない子供達をただ養育するという施設ではなく、園内に学校があり、勉強を教える教師がいる。下手に普通の家庭で育つよりも高い教育や教養が受けられるという、少し変わった施設だった。
 
俺は7歳まで韓国で暮らし、その後一家で中国へ来たらしい。
らしい、というのは俺の記憶が定かじゃ無いからだ。
英才教育でも受けていたのか、俺は中国語だけじゃなくて英語とフランス語も少し話せた。
後から大人に聞いた話しだけど、父さんは貿易業を営む事業家で、中国支社の事業が軌道にのるまでの数年の間だけ拠点を移すつもりで華の国へ渡った。
それに母と俺も一緒に付いていったそうだ。
 
そう言われれば部屋の窓の外の真っ白いバルコニーや、そこから眺める自宅の青いプールを何となくだけど覚えている。
家ではパーティーが開かれて、沢山の人が招待された。
蝶ネクタイを付けるのを嫌がって逃げる俺を、母さんが追っかけていた記憶も残っている。
 
けど、その時の父さんと母さんの顔は自分ではよく覚えていない。
写真は残っていたから、顔は後から覚えたような感覚だ。
 
父さんと母さんは急に天国へ行ってしまった。
俺を家に留守番させて、国賓や企業の経営者が集まる席へ参加した日のことだった。
原因は交通事故とかじゃない。
イベントで打ち上げる為に会場に用意された大量の火薬が突然爆発したんだ。
正確には事故なのか事件なのか真相はわからないままで、今に至っているという。
 
その辺の頃の事はよく覚えていない。
俺は7歳でこの園に来た。そしてそれまでの記憶が殆ど無いんだ。
けど人間、小さい頃の記憶なんてあってもせいぜい5歳ぐらいからだろう。
5歳も7歳もたいして変わらないから、それについては気にしていない。
 
きっと忘れた方が楽だったんだろう、と思う。何もかもに恵まれていた記憶や両親との幸せな思い出。
それらがあると、一人きりで異国の土地で生きてゆく為のメンタルが保てなかったのかもしれない。
 
家が裕福だったのに、何故中国の孤児院にいるのかって?
その理由は大人達が話しているのを聞いてしまって知った。
 
事故がきっかけで父さんの進めていた事業は立ち消え、おまけに会社が乗っ取られたんだそうだ。
それも血の繋がりのない奴に。
もちろん父さんと母さんの親戚や兄弟が手を尽くしたけど駄目だったらしい。
せめてもと俺を引き取ろうとした人達はそいつに脅されたり酷い目にあったりして、結局韓国に連れ帰るのも危険だからって、目立たぬように中国のこの施設へ入れられた。
創業者の息子が同じ韓国に居ては、いつまた社内でクーデターが起こるかわからないから、会社を乗っ取った奴は俺の命まで奪う勢いだったそうだ。
 
以前、父さんの企業が栄えたせいで、そいつの会社が潰れかけた事があったらしい。
そいつはずっと深い恨みを抱えていたんだろう。チャンスを狙ってたってわけだ。
俺にはたいして記憶が無いしここでの生活が全てだから、父さんの仇を取ろうなんていう立派な意気込みなんて無い。
むしろそいつがそこまでして奪い取った地位は、そんなに良いものなんだろうか。と疑問にさえ思っているんだ。




後編へつづく