赤い月たちが想うこと 第一話 | 信の虹 ー신의 nijiー

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ここは韓国ドラマ「信義」の登場人物をお借りして楽しんでいる個人の趣味の場です。
主に二次小説がメインです。ちま(画像)の世界も大好きです。
もしも私個人の空想の産物に共感してくださる方がいらっしゃったら、
どうぞお付き合いください^ ^

16/09/02 追記
前置きで「このお話しは最後に重い印象を受けるかもしれないです」と伝えておいた方が良いかもと思い、追記しておきました。
ふと前のお話しを振り返る事があって、久しぶりに読んでみましたが…。
やっぱり最後がちょっと暗いですね。このお話し。
自分の中ではウンスと夫婦になる節目に、ヨンの心の奥底に僅かに残っていたものが浄化したイメージだったのですが…。
赤月隊がどういう思いで散ったのかと想像すると凄く重くて、そちらに気持ちが偏りすぎていたのかも知れません。
後味の悪い印象を持たれた方がいたら、本当に申し訳ありません!

しん
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こんばんは。お久しぶりです。
今回のお話しは先日催されたりえさんの期間限定グルっぽの中から思いついたお話しです。
妄想スレ板でご自身の考察や検証を披露いただいた皆さん、そしてjさん、Oさん、りえさんに感謝です。

メヒの最後についてのお話しです。
メヒが苦手な方は読まずに通り過ぎてくださいね~。
一話目はほぼヨンとウンスしか出てきません。
ドラマの中の登場人物の動きとは若干異なる部分があります。
全部で四話、一日一話ずつ更新します。

うーん、なんでいつも前置きが長くなっちゃうんだろう…(笑)
すみません、以上です!

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赤い月たちが想うこと 第一話


「はぁ~、疲れたぁ~」

婚儀を終えて屋敷へ辿り着いたウンスは、早々に夜着に着替えると寝台へ寝そべり、倒れ込むように目を閉じた。
医仙が地上へ戻った事を極秘にして欲しいと願ったヨンは、婚儀も出来得るだけ簡素に、数え切れる程の人数の中で祝言を挙げた。
王へは「一臣下の婚儀に王様を列席させる訳には」と断ったのだが、王からの「王妃が"迷惑で無ければ共に祝いたい"と言うておる」という言葉を聞きつけて、
ウンスは「是非!」と王と王妃を婚儀へ誘った。
「私はここでお世話になった、たっくさんの人を呼びたいのに、この人ったら二人だけでも構わないって言うんですよ?」などと、王妃とチェ尚宮を前に愚痴を漏らしていた。

王宮の片隅でひっそりと、しかし厳かに行われた祝いの儀式。
参列者は王と王妃、チェ尚宮とアン内官、近衛からはペ隊長のみ。
ウンスが望んでいた結婚披露パーティとは随分真逆のものだったが、それはそれで神聖な気色を感じる良いものであった。

それに、後日“みんなを屋敷へ呼んで宴会”をする約束は既に取り付けてある。
ウェディングドレス風に誂えた衣装を持って、ヨンと二人で新婚旅行へ行く許しも得ている。
ソウルの両親の顔が全く頭に過ぎらなかったというと嘘になるが、その寂しさや故郷を捨てた罪の意識と引換えにしても得たい幸せがここにはあるのだと、改めてウンスはその思いを噛み締めていた。

粛々とした雰囲気に緊張しながら堅苦しい婚儀を無事に終えると、ウンスは一気に解放された心地になり、我が家の寝床へ突っ伏した。

…が、先程から熱っぽく自分を見つめるヨンの視線が痛い。
酒気を帯びた艶めく瞳で真っ直ぐに射抜かれると、気恥ずかしくてまともに目を合わせられない。
今日のヨンは王様の御前だというのに、手短に催された宴の膳で珍しく酒が進んでいた。

にじり寄るように寝台へ向かい来る新郎へ、努めて雰囲気を変えようと、ウンスは誤魔化すように話しかけた。
「あ、そう言えばあなた、帰りに叔母様に何か言われてなかった?何だって?」

ヨンはウンスの髪の毛へ差し伸べた手を一瞬止めて答えた。
「ああ、あれは何でもありません。仕事の事です」
少しばかり、ヨンの瞳の色に苦味が走った。

「そう?」
確か…”王様の御前で…阿呆面しおって…”とか何とか聞こえた気がしたんだけどな。
その後、頭を小突かれてるように見えたけど。

ウンスが巡らせているうちに、気づけば頬にヨンの手が添えられている。
上から迫り来るように近づく大きな影を、ウンスは慌てて遮った。

「ちょ、ちょっと待って」

「何です」
苛立ちの色が黒い瞳によぎる。

「今日は、いいんじゃない?その…しなく、ても」

「どうして」
今度は驚きの色が走る。

「いや、えっと、正直今日は慣れない事して疲れちゃって。
ほら、衣装も髪飾りも重くて大変だったし」

「理由にならぬ。初めての夜ですよ、今宵は」
再び瞳に熱を帯びる。

「だって、婚儀の前からここで一緒に住んでるんだから、初めても何もないじゃない。
……昨日だって、その…したわけだし」

「早く寝なければと言うから、昨夜は十分に抱けなかったではないですか」

「私はあれくらいでもう十分!
とにかく、今夜はもう寝ましょ。くったくたなの。
たまには昔みたいに手を繋いで寝るのも、新鮮じゃない?」

ね?お願い。

と、ウンスが顔の前で手を合わせて首を傾げて見せると、
ヨンはがっかりしたように頭を垂らして深い溜息をついた。

ごめんね。と言いながら、夫の場所を空けてやるように横へ体をずらそうとした途端、
するすると衣を解く音がする。

「え?」

「堪えるなど、無理です」

「ちょっと!ひゃ、くすぐったい」

「妻となった初めての夜ですよ」

「あ、明日だっていいじゃない」

「良くありませぬ」

「なにが」

「けじめが」

「は?何よそれ。ちょっと…ん…馬鹿…」

「馬鹿でも阿呆でも…何とでも言ってくれ。今宵ばかりは…譲れません」

幾度も柔らかく口付けを施しながら「ウンスや」と、ねだるように耳を食むと、妻となったばかりの恋しい人は絆(ほだ)されたのか呆れたのか、「ああもう」と短い溜息をつき、胸板を押し返すようにしていた腕の力を抜いて、目を閉じた。

ヨンは床に広がる栗色の髪に指を差し込み梳かすようになぞると、その感触に目を細め、満悦至極の笑みを浮かべた。