「怠け数学者の記」
小平邦彦
1915年生まれ。
有名な数学者で日本人初のフィールズ賞の受賞者でもあります。
ワイルの元で研究していたのですが、ひょうひょうとされていて
アメリカでの生活についてよく書かれています。
「委員会でも、向こう(アメリカ)だと、全権を任せてしまう。
(日本では)小さなことでも、みんなが出てこなければ、決められない。
だから雑用が多くなる」
このことについては、最近発刊されたGoogle社の仕事の流儀の本で
同じようなことが載っていました。
即決することの重要性。
持ち帰って決めたり、後手後手になるほど、仕事が増える、といったこと。
「いろいろな分野の人が集まって、そこで、若いメンバー同士で話し合う。
数学のヴェイユ先生や社会学者のリースマンなどといった偉い先生たちと話したり。
それが、まったく楽しかった。自由なフリートーキングで、どうこうしようというものではない。
目先の利益にすぐ跳ね返ってくることばかり考えていては、本当の学問の進歩はないですね」
ワイルの研究所で一番有益だったのは
様々な最先端の実験器具ではなく「ティータイム」と呼ばれる時間だったそうです。
色んな研究者が集まってきて、いろんな分野の話をフリートークでする。
これがしっかりと、学問に繋がるそうです。
人間は、理性的な生き物だと言っているものの
利害関係が絡んでくると、とたんに冷静な、理性的な判断が出来なくなりがち。
更に、利害関係が関わってくるものに対して本能的な判断を下した後
それを正当化する理由を探すために理性を使う傾向があるとも言及しています。
人間は、動物(本能)から逃れられないとしても、
せっかく人間に生まれたからには、理性的な生き物に近づきたいものですね。
小平先生の本を読んでいると、そうした、自分の中の本能と向き合い
少し離れたところから、冷静に、理性的に、物事をみていく大切さを
改めて感じました。