福岡伸一『動的平衡』 記憶物質は見付かっていないのではなく存在のしようがない。 ヒトを構成する分子は次々と代謝される。脳細胞といえど例外ではない。 ここに記憶というものの正体がある。 記憶とは脳のどこかに古い順に並んでいるのではなく 『想起した瞬間に作り出されているなにものか』なのである。 つまり過去とは現在のことであり、今、懐かしいという状態にあるに過ぎない。 (分子生物学者 福岡伸一)