小さい頃、よく見た夢。
夜の遊園地の、小さな古いメリーゴーランド。
あたしはよくそこで一人であそんでて。
いちばんちいさい木馬と仲良しだった。
夜中すぎ、真っ暗になって、誰も居なくて、しんとしずかで。
ジェットコースターも止まってるのに、
木馬とお友達のあたしは、とくべつに乗せてもらってた。
音楽がならないまま、こっそり動くメリーゴーランド。
星空は明るくて、怖くなかった。
あたしが乗ると、「やぁ、待ってたよ」って木馬が言って、
あたしたちは色々な話をした。
草って気持ちいいの?とか、遠くに走るってたのしいかな、とかそうゆう話。
今思うとかなりファンタジーなんだけど、
子供って「常識」がないから話したい相手と話せるんだよね。
あたしは小学校低学年まで話せた気がする。
ぬいぐるみとか動物とか、風とか木とか。
木馬はむかしは馬だったけど、足を悪くしてメリーゴーランドになったっていってた。
そのまえもなにかだったけど、今はそんなことどうでもいいやって。
おとなの木馬たちはうわさしてた。
もう、メリーゴーランド乗る人いないのかなぁって。
小さな遊園地だったし、遊園地のお客さんが少ないみたい。
しんぱいはてきちゅうして、
ある夜、
メリーゴーランドは使えなくなって、カバーがかけられていた。
あたしの小さいお馬さんはー!?
かなしくて、ないてたら、おとなの木馬たちがなぐさめて、
「あの子だけは引き取られていったのよ」って教えてくれた。
あたしはそれから夜の遊園地に行かなくなって、夢のこともわすれて。
しばらくしてあたしは小学生になった。
がっこうからかえってきたら、家の倉庫の近く、おじいちゃんのがらくた置き場に
白い木馬が1頭だけ ひっくりかえってた。
そこにいた誰かに、「これどうしたの」って聞いたら、
「遊園地でいらなくなったっていうから、1頭だけ貰ってきた」
って言われた。
「あの木馬だ!!」 ってきづいたけど、
遊園地に行ってたことは秘密だったから、言わなかった。
木馬は、もう動かないただの木馬だったし。
話せそうにも無かった。
そこから先は、木馬の記憶がない。
ただ、
パパもママもおばあちゃんも、庭で木馬なんて見たことがないっていう。
あたしも、現実のなかで木馬と遊んだことは思い出せない。
どこからどこまでが夢で、本当なのか、よくわかんなかったから
全部夢だってことにしてた。
だけど木馬を見て思い出したの。
じっさい結構びっくりもした。
今はもうあたしは木馬と話せないから、彼かどうかもわかんない。
ただすっごく懐かしい気がした。
誰が木馬をつれてきたんだろう。