健康保険と介護保険の一部負担金

 

医療機関の窓口で払う、健康保険の一部負担金

保険診療は、かかった医療費の一部を払えば良いことになっています。

その割合が、全員3割なのは、70歳までです

 

70歳以上になると、年収によって、負担割合が変わります。

70歳~74歳の医療費の自己負担は、2割と3割の2種類です。

この年齢の人は、以前は全員、1割負担でしたが、負担割合が引き上げられ、2018年以降、1割の人は、いなくなりました。

75歳以上の後期高齢者は、以前は、1割と3割の2種類でしたが、2022年10月から、新たに2割負担が加わり、その結果、自己負担は、1割~3割の3種類となりました。

 

収入によって、区分けされる場合、どんな場合でも、ボーダーにいらっしゃる方がいます。

もし、もう少し、収入が少なければ、半分の医療費で済んだのに、と、ちょっと悔しい思いをしている方もいらっしゃるかもしれませんね。

そのため、思いのほか医療費がかかって、かえって手取りが減る場合もあるでしょう。

 

介護保険を利用した場合の負担割合も、収入によって、1割~3割と開きがあります。

そして、その収入要件は、健康保険と微妙に異なります。

 

今回は、健康保険と介護保険の、負担割合の振り分け条件を、おさらいしてみましょう。

特に65歳を過ぎた方は、振り分けのルールを知って、ご自分の負担額のシミュレーションをしてみることが大切です。

 

健康保険の自己負担割合

 

まずは、70歳~74歳までの健康保険の自己負担割合です。

 

次に、75歳以上の後期高齢者健康保険の自己負担割合のルールです。

74歳までと比較して、少し複雑になってきます。

 

 

3割負担となる「現役並み所得者」は、基本的には課税所得が145万円以上の方ですが、例外規定がありますので、次回に取り上げたいと思います。

 

介護保険の自己負担割合

 

続いて、介護保険の自己負担割合の振り分けフローチャートです。

ここでは65歳以上の利用者の場合です。

40~64歳の方、生活保護受給者、住民税非課税者は1割負担となります。

 

65歳以上の方の自己負担

 

 

振り分けの基準となる所得も金額も、健康保険と異なっていますね。

介護保険は、介護認定を受け、介護保険制度を利用するようになって初めて、自己負担割合を意識することになると思います。

しかしながら、介護保険を利用する場合、同時に医療も受ける方が殆どだと思います。

両方とも1割で済むのか、それとも、介護保険と健康保険の割合が異なるのか、老後の必要経費を考えるに当たって、やはりチェックしておきたい事項です。

 

所得について

 

フローの中には、課税所得合計所得など、基準となる所得が、色々出てきて、判定フローをわかりにくくする一因となっています。

 

●課税所得とは?

判定に用いる課税所得は、住民税課税所得で、税金がかけられる所得です。

収入から公的年金等控除、給与所得控除、必要経費などを引くと、「所得金額」が算出され、それからさらに、基礎控除や扶養控除、社会保険料控除等の「所得控除」を引いたものが「課税所得」となります。

 

●合計所得金額とは?

収入金額から必要経費に相当する金額や、控除額を控除した金額のこと。

年金受給者や給与所得者であれば、公的年金控除や、給与所得控除を引いた金額です。

基礎控除や扶養控除などの「所得控除」を、差し引く前の金額ということになります。

 

●収入とは?

所得税法上の収入金額です。

したがって、年金収入には、非課税年金(障害年金、遺族年金)は含まれません。

必要経費や公的年金控除等を差し引く前の金額です。

 

●「その他の合計所得金額」とは?

合計所得金額から年金収入に係る雑所得を引いた金額です。

 

●「年金収入+その他の合計所得金額」を、合算して判定するのはなぜか?

健康保険と介護保険の自己負担割合判定フローを見てください。

健康保険のフローでは、課税所得28万円以上の人がいる世帯に対して、また、介護保険のフローでは、合計所得金額が220万円以上、160万円以上の人に対して、改めて「年金収入+その他の合計所得金額」を聞いていますね。

なぜ、このように複雑な判定を行うのでしょう。

税法上の控除の関係で、実質的な収入額が少ないにもかかわらず、課税所得や合計所得が高くなるケースがあります。

夫婦ともに無年金で、給与収入のみの世帯などが、これに当たります。

その負担能力を考慮して、年金以外の所得金額を判定基準に入れているのです。

課税所得や合計所得だけでは判定できないケースを、救済する措置と言えるでしょう。

 

今後の介護保険負担額について

 

介護保険については、以前、次のようなニュースがありました。

厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会は、昨年12月20日、令和6年度に予定される制度改正に向けて、介護保険制度の見直しに関する意見書を公表。所得が高い高齢者の保険料の引き上げや、サービスを利用した際の負担額の引き上げが焦点だったが、「給付と負担」の見直しに関しては、令和5年夏まで結論を先送りした。

 

厚生労働省は3年に1度、介護保険制度を見直すことになっています。

2年前の年末に、改定の内容をまとめることが通例ですが、後期高齢者の医療保険で、2割の負担を増やしたばかりというタイミングを考慮して、結論が先送りされたとのことでした。

 

介護保険の負担額について、今後は、2割を負担する対象者を拡大する方向で議論が進むことになっています。

負担が増える対象となる人の年収要件が、これから議論されることになるようです。

今後は介護保険の負担割合の振り分けも、今より厳しくなっていきそうですね。

 

健康保険や介護保険の負担については、過去の記事も参考にしてみてください。

 

 

 

 

 

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