研究計画書の書き方 | 英語の音韻論と、英語の発音と、ときどき日常。

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このブログは、筆者の大学・大学院での主専攻である英語音韻論や英語音声学を主とし、英語学、言語学、日常のこと、私の興味のあること等を纏めたものである。

筆者は2024年3月に大学院博士前期課程を修了。

質問等コメント大歓迎。

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今回は「研究計画書」の書き方について、簡単に解説しようと思う。

 

先に書籍紹介しておくと、私はこれを参考にしていました(制作・著作 / ***)

 

 

  そもそも研究計画書とは?

 

そもそも「研究計画書」とは、いったい何なのだろうか。

 

端的に言えば、大学院に進学する意思を持っている大学生あるいは社会人が、進学を志望する大学院において、「何を(What)」、「なぜ(Why)」、「どうやって(How)」という3つの観点を中心に、どのように研究を進めていくかを纏めたものだ。

 

これは大学院の入学試験を受験するために必要な書類の1つであり、大学院の入学試験における面接はこの研究計画書を基に、また筆記試験(語学および専門科目)の内容も提出した研究計画書によって左右されることがある。

 

英語論文や日本語論文を書く予定なら語学試験は英語が一般的だが、例えばロシア語論文を書く予定なら、語学試験はロシア語になるなど、論文をどの言語で執筆するかと、大学院入学試験(語学)はリンクしていることが多い。

 

 

単に大学院の入学試験のために必要なだけじゃない?

 

大学院入学試験のために執筆し、実際はその通りに行かないことが殆どである研究計画書だが、研究をはじめる前において、研究計画書を執筆することは非常に重要である。

 

研究計画書を執筆する目的として、主に以下の4つが挙げられる。

 

(1)志望する大学院研究科研究室や指導教員とのミスマッチを防ぐ

(2)受験生が大学院でやりたいと思っている研究が、本当に価値のあるものかどうか、

(3)受験生自身が大学院へ進むのにふさわしい人物かどうか

(4)これまでに調べてきた先行研究を纏めて、今後の研究の展望を大まかにでも明らかにすること

 

このなかで、大事なのは(2)と(3)だ。

 

たとえ筆記試験の点数が良くても、研究計画書の内容が悪ければ、つまり受験生がやりたいと思っている研究が価値のないものであると大学院側が判断すれば、大学院側は問答無用でNGを出すだろう(⇒(2))。

 

いや、ガチで。

 

また、大学院に進学を希望する時点で、ある程度の素質を問われる。ここでいう「素質」とは、いきなり研究を行えるかではなく、研究に関して自分のオリジナリティを出すことができる見込みはあるのか、ということだと考えられる(⇒(3))。

 

 

研究計画書の字数は?

 

研究計画書の字数は、もちろん大学院によって異なるが、大体1,000字、1,500字、2,000字で指定されていることが多い。因みに私の大学院は800字(中途半端)。

 

この字数は、研究計画書を実際に書いていると、「全然足りないじゃん!」と感じる方が多いと思うので、どちらかといえば分かりやすさを重視するようにしたい。

 

勿論、大学院の入学試験ではその道のプロ(うち1人は指導教員ですから、完全なプロ)が試験担当者になるが、彼ら先生が分かるレベルの語彙は全然使ってよいので、兎に角分かりやすい、読みやすい研究計画書というモノを目指すべきである。

 

 

  研究計画書の基本的な構成

 

最初に述べた通り、研究計画書は「何を(What)」、「なぜ(Why)」、「どうやって(How)」という3つの観点を基に執筆していく。

 

 

何を(What)

 

あなたが一体何を研究するのか、研究のテーマを書こう。大事なのは、ここで字数稼ぎをしないこと。「本研究では○○○○を行う。」で大丈夫。

 

(時数稼ぎしたいのはわかるが、研究計画書を書く上では、ここはそんなに大事ではない)

 

 

なぜ(Why)

 

あなたがなぜこの研究をするのか、そしてこの研究はどのような価値を有しているのか、研究の理由や背景を書こう。3つの観点の中で、これが一番重要なので、しっかりと考えてほしい。

 

一番良いやり方は、「先行研究において○○の点が問題になっているから、それを本研究で検証する」といったように、自分がやりたいと思っている研究に関する先行文献の批判から入ること。

 

卒業論文や修士論文では、(勿論博士論文でもそうではあるが、)先行研究の扱いは非常に大事だ。先行研究なくして卒業論文や修士論文を完成することは絶対あり得ない。

 

もちろん、なんでもあてずっぽうに批判をしていいわけではない。その批判は、その研究において「もっともらしい」と考えられるものでなければならない。


時間の流れと共に、その研究に対する研究者の考えも進化していくから、もっともらしい批判は結果に関わらず、しっかりと評価されるのだ。

 

 

どうやって(How)

 

あなたはどのようにこの研究を行うのか、そしてその研究方法でどのような事を検証することが可能か、研究の方法を書こう。

 

ここもなるべく字数を節約していきたいところだが、実際には研究方法は具体的に書かなければならないから、結局は字数をくってしまう。

 

 

 

  研究計画書の書き方を具体的に見てみよう!

 

では、研究計画書の書き方を具体的に見ていこう。以下の例は、私が実際に提出した研究計画書を一部改変したものである。

 

研究テーマのタイトル

 

最初に「研究テーマ」をタイトルとして書く(なかには、タイトルを「研究計画書」と題し、表題の記述を必要としないところもある)。

 

私なら「tの弾音化」が研究テーマになるが、これだけでは、tの弾音化の「何を」研究するのかが分からない。

 

私は現在、tの弾音化の生起環境を研究しているから、「tの弾音化の生起環境について」、また弾音化はtだけで起こるものではないから、「歯茎音の弾音化の生起環境について」と記述すると、「何を」の部分が簡単にわかると思う。

 

(例)「tの弾音化について」⇒「tの弾音化の生起環境について」⇒「歯茎音の弾音化の生起環境について」

 

※ 弾音化を例に挙げれば、「私は弾音化の生起環境は/t/だけを調べたいんだ!」というのであれば、「tの弾音化の生起環境について」というタイトルでも大丈夫だろう。

 

また、私はつけていないが、タイトルに副題をつけることで、より分かりやすくなる場合がある。ここはお好みで大丈夫👌

 

(例)歯茎音の弾音化の生起環境について ~ ○○のデータを例に ~

 

導入

 

導入部分では、研究の背景から、何を研究するのかを書いていく。

 

研究の背景として、先行文献の主張やデータに異議(批判)があったりだとか、難しいかもしれないが、自分の研究が過去⇒現在⇒未来という時間軸でどのような価値を発揮していくか、といったことにフォーカスを当てていく。

 

どちらにせよ、最初にいくつかの先行研究を引用し、これまでどのような研究が行われてきたかを説明することは、この研究をなぜ行うのか、ということに意味を持たせるという理由で非常に大事である。

 

また、何を研究するのか、という部分については、研究の名前をそのまま書くよりも、その研究によって何を明らかにできるのか、を簡潔に書いた方が良いだろう。

 

私は、先行研究の批判から入った。以下はその一部だ。

 

(例)tの弾音化については、AあるいはBという観点などから膨大な研究が行われているにもかかわらず、未だ明確な答えが出ていない未解明な点が存在する。(省略)本研究の目的は、tの弾音化について、その定義をこれまで提案されてきた、Cという分析とDという分析のうち、どちらがより優れているか、(省略)これを明らかにすることにある。

 

終結へ

 

私は2段落構成で書いたので、導入の次はいきなり終結部であるグラサン

 

導入部では「何を」研究するか、「何故」研究するかを織り交ぜて書いていったので、終結部では「どのように」研究するかを書いていく。

 

ここで大事なことは、その記述に現実味を帯びさせることだ。

 

大学院の研究は長いようで短い。その期間内で「しっかりと」完結できるような方法を考えたい。まちがっても留年を想定しないように。

 

私は博士前期課程(修士課程)の1年次と2年次に分割して書いたが、纏めて書いても問題ないかもしれない。

 

加えて、どのように研究するかにおいて、音声学であれば音声分析、(別の分野なので全く分かりませんが、)社会学や経済学だとフィールドワークやインタビューなどといったように、どのように自分の主張を裏付ける研究データを集めるか、その手段を必ず書くこと

 

ここは面接において、必ず突っ込まれる。

 

(例)1年次は、研究テーマに則した先行研究の文献、資料の収集と精査を中心に行う。本研究において重要な事は、研究テーマに関する音声学者の意見を多く収集し、これを整理することにある。(省略)また、資料の収集は音声データについても同じである。特に、(省略)アメリカ合衆国の代表的なメディアのアナウンサーの発音などを収集の対象とする。これを行うにより、一般的に言われている「母音に挟まれたtが弾音化の対象となる」という記述が(省略)、検証することが可能となる。

 2年次においても、1年次と変わらず、研究テーマに則した先行研究の文献、資料の収集と精査を行う。本研究では、理論の裏付けとなる証拠に細心の注意を払う必要があるため、より多くの先行研究の文献、資料を必要とする。これらを基に、tの弾音化の定義の分析や生じる環境について考えたい。

 

※ わたしは書いていないが、最後にこの研究を行うことで、どのような結果が得られるかという予想を書くケースもあるようだ。


(例)研究の結果、〇〇〇〇という結果が得られることを予想する。

 

参考文献リスト

 

勿論、参考文献リストを提出することは必須だが、その参考文献リストの字数が研究計画書本文の字数に含まれるか、という点で、大学院によって異なる。必ず確認しておこう。

 

 

研究計画書に志望動機は含まれないの?

 

基本的に、研究計画書に志望動機は含まれない。

 

「本研究は、○○を明らかにすることにある」という表現が、結果として自分は大学院で研究したいんだという意思表示に取れなくもないが、それはさておき、一部の大学院では、研究計画書にも志望動機を書かなければならない所があるようだ。

 

私の大学院では、志望動機は研究計画書と別に提出した。

 

 

  研究計画書を書く上での注意点

 

最後に、研究計画書を書く上での注意点をまとめておく。ぜひチェックリストとして活用していただければ幸いである。

 

(1)研究テーマが、志望する大学院研究科研究室の主たる研究テーマに則しているか

(2)研究テーマに、学術的意義は存在するか

(3)研究テーマに、社会的意義は存在するか

(4)研究計画に、一貫性はあるか

(5)研究計画に、先行研究は示されているか

(6)研究計画は、具体的か

(7)研究の方法において、インタビュー時のプライバシーの保全など、倫理的配慮がなされているか

(8)大学院在籍中に実現可能な研究計画であるか

(9)大学院から研究計画書の書き方が指定されている場合、その書き方に則っているか

(10)参考文献リストは、大学院から提示された方式に則って書かれているか

(11)文法ミスや誤字脱字がないか

(12)研究計画書を書いてみて、あなたは本当にそれが実行できるのか

 

 

  研究計画書は提出前に第三者にチェックしてもらおう!

 

研究計画書は、大学院入学試験の提出書類の中で1番といっていいほど重要なものである。自分でセルフチェックするだけでなく、他人にもお願いして、二重三重のチェックを行いたい。

 

基本的に、一度提出した書類は、どのような理由であれ、返却、後再度提出することはできない

 

研究計画書からはじまる楽しい大学院ライフを!