文系大学院の進学にありがちな「モラトリアムの延長」 | 英語の音韻論と、英語の発音と、ときどき日常。

英語の音韻論と、英語の発音と、ときどき日常。

このブログは、筆者の大学・大学院での主専攻である英語音韻論や英語音声学を主とし、英語学、言語学、日常のこと、私の興味のあること等を纏めたものである。

筆者は2024年3月に大学院博士前期課程を修了。

質問等コメント大歓迎。

※ 転載禁止
※ 引用禁止

今回は、『文系大学院の進学にありがちな「モラトリアムの延長」』というテーマでお話ししたい。

 

 

  そもそも、大学院に進学する人ってどのくらいいるの?

 

本題に入る前に、大学院に進学する人の割合について、簡単に見ておこう。

 

内閣府男女共同参画府が公表した「令和3年度 男女共同参画白書」によれば、大学(学部)を卒業後、直ちに大学院(研究科)に進学する人の割合は、男性が14.2%、女性が5.6%(いずれも2020年)となっており、男女ともに現在は低下傾向にあるようである。

 

 

 

  モラトリアム=猶予期間

 

さて、本題にある「モラトリアム(moratorium)」とは、「猶予期間」のことを指す。ジーニアス英和辞典第5版にはこのような記載がある。

 

moratorium /mɔ:rətɔriəm, mɑ:-|mɒ-/ 【p.1369】

名(複 ~s, -・ri-a /-riə/)

① 〔…の〕一時停止, 活動停止〔on〕

② (非常事態などでの債務の)支払い猶予(令), モラトリアム

③ 〘心〙モラトリウム《成熟した社会人になる前の猶予期間》

 

なぜ、モラトリアムの話をするかというと、就職活動の失敗により、大学院への進学を検討する大学生が少なからず存在するが、私はこの「就職活動の失敗により、大学院へ進学することで、新たに新卒の資格を得て就職活動を行うこと」には反対だからである。

 

これは単純に私の気持ちではなく、大学院での学びや研究が、モラトリアムを理由に進学する人にとってどんなにつらく、しんどいものか、その惨状を理解しているから、という理由がある。

 

速い人では、大学3年生の夏ごろから意識し始め、大学3年生3月の解禁を機に、一斉にスタートを切る就職活動だが、上手くいくかどうかはその人次第。全く内定をもらえない人もいれば、内定をもらうことができたものの、自分の第一志望ではない(言い換えれば「滑り止め企業」)人もいるだろう。

 

勿論、第一志望の企業から内定を得る人もいるし、第一志望ではなかったものの、現在の就職活動に納得した方もいると思う。そういった方々は心配することはないと思うが、全く内定をもらえていない人、内定状況に納得していない人は、大学卒業の時期が近づくにつれ、だんだんと焦りが生じる。

 

いや、第一志望ではないものの、何処からか内定がもらえている人は、まだ良いかもしれない。問題は、全く内定をもらえていない人たち。彼らの末路は、

 

1.ニート

2.フリーター

3.就職浪人

4.戦略的留年

5.大学院進学

 

のいずれかが考えられるが、このなかで1番やってはいけないものが「大学院進学」だと考えている。

 

 

  なぜモラトリアムの延長としての大学院進学はダメなのか

 

なぜ「大学院進学」がダメなのか。全く内定をもらえていない人のなかで、大学院進学を考える人は主に2つのパタンに分けられる。

 

1つ目は、何かをきっかけに、研究したいことを大学4年生のうちに見つけることができ、さらに大学院での研究の見通しを立てることができた人。このような方は、きっかけはどうであれ、努力次第では大学院での学び・研究を良いものにすることができると思う。

 

2つ目は、ただ単に新卒の資格が欲しい人。このような方は、大学で就職活動を失敗した⇒これからどうするべきか⇒あ、大学院に進学したら、また新卒として扱ってくれるんじゃね?⇒よし、怠いけど進学するか、という思考プロセスを持っており、これが一種の「モラトリアム」だと見做すことができる。

 

大学院に進学するのは個人の勝手。赤の他人である私が口を出す資格はない。

 

そもそも、大学院への進学は指導教員の許可が必要だし、許可が貰えた以上、「あなたは修士論文をかく素質がある」と指導教員が判断したと考えることができる。

 

しかし、モラトリアムの延長を理由として、大学院へ進学することは、私はおすすめしない。最初に言った通り、私は反対の立場であり、そのように考える人たちには少し止まって考えていただきたいと思っている。

 

その理由は次の通り。。

 

大学院でも授業は普通にある+研究をしなければならないので、就職活動に割く時間がない

 

そもそもあなたは研究課題やストラテジーを持っているか?

 

学費はめちゃくちゃかかる(200万円~)

 

大学院に進学したからといって、就職に有利になるわけではない。文系ならなおさらである。

 

大学院に進学しても、生涯賃金が大学卒と同じか、それ以下になることもある。文系ならなおさらである。

 

このなかで私が特に言いたいのは、1つ目の「就職活動に割く時間がない」。

 

大学院生は研究で忙しい。

 

授業のコマ数や取得しなければいけない単位数は大学生と比較すると格段に少なく、そのような情報を知った学生が「楽勝じゃん」と勘違いするパタンが多い。

 

だが、授業数が少ないのは、それ以外の時間をすべて研究に費やすため。論文指導を除き、授業では研究に必要な必要最低限の知識しか教えてくれないから、必然的に授業以外の時間を学びや研究に費やすことになる。

 

そのような中で、なんの研究課題も持っていない、なんのストラテジーも持っていない、そのような学生が就職活動をできると思うだろうか?

 

私は、修士課程の修了ですら難しいと考える。中退になれば、面接で絶対に突っ込まれるだろう。

 

 

  モラトリアムを想定しない就職活動を!

 

私も現在、修士課程に在籍しながら、就職活動を行っていますが、正直言ってかなり忙しい。

 

iPhoneのカレンダーアプリは予定でほぼ埋まっており、One Noteは研究と就職活動のノートがほぼ半々…勿論、授業にもちゃんと出席しているし、研究もしっかりと行わなければならない。

 

だからこそ、今、就職活動を行っていて、中々芳しい成果が得られないな…と不安になっている学生さんに伝えたいと思う。

 

モラトリアムの延長としての大学院進学を想定しないこと

 

私から今言えることは以上。最後まであきらめずに、就職活動を頑張ろう。