ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ 2024.5.11 シネスイッチ銀座1 | ギンレイの映画とか

ギンレイの映画とか

 ギンレイ以外も

 グアンタナモ収容所はアメリカにとって都合の良い場所にあり、使い勝手のある施設のようだ。アメリカ国内ではないので、キューバなのでなど言い訳が効く。どういう手段で手に入れたか知らないが、アメリカにとって好都合な場所は手放さないだろう。植民地を解放しないのと同じこと。

 

 だけどそんなとこに入れられた囚人はいい迷惑だ。裁判なし、刑期未定、死刑にはならなくても、ほぼ終身刑。

 

 ドイツ、ブレーメンに暮らすトルコ移民のムラートが結婚した。妻がイスラム教なので宗教的対応を知ろうと思ってパキスタンに研修に行く。知り合いを訪ねて話を聞こうとしたのだろう。これは何と殊勝な心がけだこと。褒めこそすれ責める必要はない。ところが旅は悲惨な結果になる。

 

 ムラートの見かけがイスラムっぽく見られたのか。日本でも見かけで職質されるのは最近裁判になった。黒人かイスラムかなどと警官が勝手に判断して警察の特権を執行する。たとえ日本人でも強面に見える人物は要注意だ。私は自転車に乗っていて持ち主の名前を調べられたことがある。私が自転車泥棒と疑われたのだ。こんな気持ちの悪いことを日常的にやられてはたまらない。

 

 裁判するのは分かる、応援したいし、警察はむやみにやらないで欲しい。よほど暇かノルマでもあるのだろう。インバウンド歓迎と言いながら実は歓迎してない。

 

 オーバーツーリズムなんて初耳な言葉が飛び交うようになった。ものごとには適量があるようです。狭い国土にわんさか押し寄せると、観光地だって生活してる人がいる。そこのところは当地を知った人がわかること。大変な目にあってから後悔しても元に戻せない。目隠しとか立ち入り禁止なんかしたら評判が落ちるだけ。まあ人気のあるうちが花かも知れないけど。

 

 ムラートの母ラビエは電話帳で見つけた弁護士事務所に乗り込んで話を聞いてもらおうとする。たまたま弁護士のベルンハルトがやって来たところだった。弁護士は予約してください、と返答する。これは当然のこと。でも私には緊急の用事がある、の一点張り。

 

 予約なんかしてちゃ間に合わない。この母親の勢いに負けた弁護士ベルンハルトは他の用事をキャンセルして彼女に付き合うことにする。そこから電光石火に解決へ、と行かないのは当然。長い年月が必要になった。

 

 争点1、タリバンの嫌疑を晴らす    争点2、グアンタナモ収容所から出る  争点3、裁判で勝利する。

 

 彼女はアメリカに行って、あちら側の最高責任者ジョージ・W・ブッシュに直接問いただしたい。大西洋を泳いでも渡る勢いの母でした。母ラビエが強引だけどそれは息子への愛情ゆえのこと、応援したくなる。映画の終わりに本人の写真が見られるが、似てる! 弁護士までそっくり。

 

 事実は映画のようにたやすく解決することはない。何年もかかってしまった。ブッシュは謝らないしグアンタナモ収容所もなくならないまま。

 

監督 アンドレアス・ドレーゼン

出演 メルテム・カプタン アレクサンダー・シェアー チャーリー・ヒュブナー ナズミ・キリク

2022年