6300キロの川の流れをさかのぼると源流に着く。その先のさきっちょの水源を見たい。その想いが彼をして長江に再挑戦させた。NHKの「長江 天と地の大紀行」は見た覚えがある。そこにディレクターの姿は見えない。作る側だから現れなくて当然。阿部力が中国語を駆使して長江沿いの村々を訪ね歩く。実は彼の行動を動かすのは誰あろう竹内亮だ。この再会はディレクター竹内亮の長江で会った人との再会だ。これは彼しかできないことだ。10年前のものに不満があったわけではない。彼が中国に住んで10余年、自身が感じた中国の発展がどれほどのものだったか、10年前と対比させることができるに違いないと踏んだ。
まず自然である長江の流れは不変でも大河の岸辺には変化があった。10年の変化は大きくあった。中国は特に多いんじゃないか。僻地の寂れた村が金持ち集団になったり、政府の政策次第でどうにでも変わる。個人の力も無視できない。中国はアメリカじゃないけれど、世渡りをうまくやれば出世できるし、金儲けにもつながる。もちろん逆になることもある。明日の成功を夢見ても見なくても、どっちに転ぶかは分からない。そんなことがあるのが中国だ。10年経った長江に来て見たことは、凄まじい発展と変化だった。
この監督のユーチューブは見たことがある。中国に興味があるので観光以外の真面目なのを見たかった。でも軽いかな、と思った。その流れでこの映画も敬遠していたきらいがあった。しかしやはり中国の魔力にはかなわない。見てみようじゃないか、とビックカメラの8階へ。ここはそごうデパート以来ずっと来ている。買い物するのはたまにであり、ほぼちら見の素通り。買うのでなければちゃんと見るのもしない。映画はちら見も何もない、しっかりと見ましょう。
上海から始まる。外灘から見る高層ビルと塔の景色。映像で見ても実際に見てもすごい景色だ。有りそうでない、じゃなくて本当にある。人が作った建造物の代表だ。これから見るのは人たちと人工物でない自然の景色だ。人工物がこの先永遠に存在することはない。いつ壊れるか建て替えられるかする。対し自然は壊れるか崩れてもそれが自然だ。
上海から南京、武漢、重慶、雲南、チベットまでカメラがとらえていく。これはテレビの映像ではもったいない。映画館のスクリーンサイズでも足りないくらいだ。ここのスクリーンが大きくないのが物足りない。さまざまなエピソードの一つひとつが中国の典型だろう。上手くいってる人、そうでもない人、思わぬ成功を見た人、そうでもない人。どこにでもある人たちの生活がここにもあった。
監督 竹内亮
ナレーション 小島瑠璃子
2024年