幸福の設計 1995.12.13 ユーロスペース | ギンレイの映画とか

ギンレイの映画とか

 ギンレイ以外も

 アントワンとアントワネットはアパートの屋根裏部屋に住んでいる。金が無いのでラジオを聞くか小説を読むくらいで映画にもいけない。アントワネットが買った宝くじが80万フランの大当り。アントワンはオートバイが買える、アントワネットも赤ちゃんが持てると大喜び。

 

 翌日、アントワンは工場を休んで賞金を取りに出かける。地下鉄の切符売り場で当たりくじを失くしてしまう。

 

 いいなあ、昔の映画は。パリの街並みにも歴史はある。それも50年ばかりの昔だけど、とてもなつかしく感じる。それは何から来ているのか。それはパリに限らない。東京でも大阪でもいい。まったく知らない町でも構わない。この映画、1947年のものだから、戦争が終わってそう年も経っていない。でも、すっかり明るいパリが写っている。にぎやかな街並みに沢山の人が歩いている。フランスもかなり爆弾を落とされただろうから、裏に回れば焼け跡もあっただろうが、表通りはまったくきれい。デパートにも商品がたくさん並んでいる。この映画の原題はANTOINE ET ANTOINETTE、仲の良い二人はパリのアパートに住んでいる。最もパリではアパート以外に住むところはないらしい。

 

 自転車があんなにも簡単に分解できるものとは知らなかった。トラックにぶつかって壊れた自転車のタイヤを取り替えるので、新しいのをもらって来るんだけど、裸のタイヤだけを持っていく。バゲットを手で持つのは見てもいい感じ。でも、食べ物を袋に入れないで持つのは不潔、と言えないこともないけど。フランスだと何でも様になるから不思議。そうそう、この映画で、二人でサッカーを見に行く場面があるんだけど、すごく混んでて、なんだか嬉しくなっちゃった。すごい人気なんだね昔から。

 

 宝くじは最近買わなくなった。確率がひどく低いからだ。でも、当たらなくても一時の夢を買える、と思えばいいらしい。パリの二人も買った。

 

 当たった! 80万フラン、一等だ。思いがけない大金を手にしてどうのこうの、という物語は多い。この映画は、一時お預けを主人公に食わせる。当選した宝くじをなくしてしまうのだ。なにしろ当選した券を換金しにいく途中の地下鉄の切符売り場での出来事だ。映画を見ている人にはそれが分かっている。なのに、主人公には分からない。あんな大切なものを、もっと大事に扱わなければ、と思う。だけど、なくしものをするときはどんなに用心していても、してしまうものだ。前日、80万フランを手に入れたらどうしよう、と「確実な夢」を語り合ったのに、、、、。

 

 宝くじは、当選した券を持参した人に当選金を渡すもので、それがたとえ盗まれたものであっても、拾ったものであっても、当会としては渡さざるを得ないし、又そうするのが当然である、みたいなことになっていて、これは当たり前のことであり、落としたのが悪い、となる。仕方のないことだ。確実な期待が空振りになった時ほどがっかりすることはない。もしや、あそこで落としたのではないか、とあちこち探し回っても、見つからない。だんだん足は重くなる。何て報告したらいいのか、あれだけ楽しみにしていたのに。彼女に電話でもかければいいものを、でも出来ない。そんな内に、地下鉄の切符売り場に勤めている友達の口から彼女にこのことが知らされてしまう。

 

 お互いの気持ちをいたわり合う二人。もともとなかったお金だもの、あきらめればいい、との結論がそれぞれで成り立ったのかどうかは知らないが、まあそんなとこだろう。相手にあって言い訳をしたい、だけどどう言えばいいのか、酒でも飲まずにはいられない気分。入ったカフェではちょうど結婚したばかりの二人を祝うパーティの真っ最中。顔見知りでもあったので、お祝いを言ったり、祝いの飲み物をもらったりする内に話題は宝くじのことに。世間は広いようでいて狭いもので、ここでいっぺんに物語は解決へと進む。何はともあれ、幸せな二人です。忘れ物にはご注意を。

 

監督 ジャック・ベッケル

出演 ロジェ・ピゴー クレール・マッフェ ノエル・ロックヴェール アネット・ポアーヴル ポーレット・ジャン ジャック・メイラン ピエール・トラボー イヴェット・ルーカス バランシー、ジャンヌ・マグナ ユゲット・ファジェ フランソワ・ジュー ピエール・ルプロー ガストン・モド ジュディット・カルリエ マルソ チャールズ・カミュ マデゥ・シアム エミール・ドレン

1947年