ティメー・クンデンを探して 2024.2.17 ヒューマントラスト有楽町2 | ギンレイの映画とか

ギンレイの映画とか

 ギンレイ以外も

 一台の車がチベット高原を走っていく。車に乗っているのは映画監督、カメラマン、ドライバー、そして社長と呼ばれる男。一行はチベット歌劇『ティメー・クンデン王子の物語』をモチーフにした次回作の役者探しの旅の途上にあった。

 

 ドキュメンタリーなのかドラマなのかがわからない中間の映画があるとすれば、これはそんな一例だ。試しにやったことを後から再現するとこうなる。一度やってみているので、もう一度作るのはさほど難しくない。安易な作風と言ってしまうと失礼かもしれない。でもこの方法は悪くない。前作があるので後作の出来は保証されている。失敗のない作り方だ。これなら誰でもできる。できるならやってみろとか言われそう。できません、映画を作るなんてとんでもない。

 

 映画を作る過程を描いている。シナリオは決まってない状態。まずは出演者を探す。チベットでは有名なのだろうティメー・クンデン王子の話で、それを知っているか演じたことがある人が条件。実際に演じた人は多くいるようで、セリフは忘れたいたり歌もうろ覚えながら歌える。これならなんとか見つけられそうだ。日本ならなんだろうな、思いつかない。知っていても歌えたり演じられるかは別の話だ。まして映画に出るとなると演技経験者でも一歩引くだろう。映画は学芸会でも祭りの出し物でもない。

 

 車の中での会話は社長が一人でしゃべるしゃべる、彼の話も映画の一部、というか全部に近い。試しに彼の話を除くと素人の演芸会になってしまうから、社長は必要か。

 

 オーディション参加者は、やってみたいけど恥ずかしい、この場でのことだけならいいけれど、映画は後々まで残るし。など映画のハードルは高い。観客としてなら良くても出るとなると困惑するし、出てみたい気もする。どうだろう、映画にちらっとでいいから写ってみたいとは思う。そんな感じでなかなか決まらない。

 

 けっきょく映画を作り始めるまでにならない。映画作家はこんな無駄をいくつもやってるのかもしれない。苦労話を見ても仕方ない。できた映画はこれです、と見せてくれればこの映画は完成する。従っていつまでも未完成。

 

監督 ペマ・ツェテン

出演 マンラキャプ カトゥプ・タシ リクデン・ジャンツォ ツォンディ ドルマキャプ サンジェ・タシ トゥルク・ジャホンツァン ロブサン・テンペル

2009年