白日青春 生きてこそ 2024.1.27 新宿シネマカリテ1 | ギンレイの映画とか

ギンレイの映画とか

 ギンレイ以外も

 パキスタン難民の少年ハッサンは香港生まれ、言葉も香港のもので、家族とともにカナダへ移住することを夢見ていた。ところがある日、父が交通事故で亡くなり夢は奪われてしまう。

 

 香港へは海を泳いで来た、と「Blue Island  憂鬱之島」のエピソードにあった。同じようにタクシー運転手チャン・バクヤッは泳いで香港に来た。香港がイギリス領になった後に越境する者が多くいたのだろう。人口が自然に増える以上にどこからかやって来た人たち、もちろん中国本土からだ。のちにそれが分かってもおとがめなしで暮らしていた。同じ中国人として無問題だった。

 

 時を経て、ここにさらに難民が入ってきた。難民問題はどこにもある。日本のように難民をシャットアウトする国もある。比べると香港は少し鷹揚か。それでも認定されなければ戻されてしまう。母国では暮らしていけないから、住んでいられないから、虐待されるから、など救いを求めてきたのに。強制送還ともなれば刑務所行きは必定だ。

 

 パキスタン難民の少年とタクシー運転手とが出会う機会はない。それなのに出会った、せまい香港の中で反発から同情、協力へと移っていく。チャン・バクヤッは病気持ちで自由に動けない。ハッサンは動けても子どもらしくない子どもで、大人からはまともに相手にされない。言ってみれば二人のみなしごが意にそぐわない出会いをした。

 

 香港人は香港人の矜持を持っている。中国ではあるが中国本土とは違うという。しかしそういう時代も過ぎた。50年間は以前の状態を維持するという約束は破られた。約束は国際的なもので、国内でのものではない。それを承知の上で中国政府は破った。明らかにわかっていて本土の法律に合わせた。独立国香港は消えた。イギリス統治の香港が十全な状態だったとは言わない。しかし不足な部分はあってもイギリスに任せた地域としての香港はあった。独立しても香港は香港であり続けるはずだった。それがこれだ。

 

 少し前までは香港の独自性の見える映画があったが、今はなくなった。罰則規定のある法律は罰則強化につながる。政府曰く、政権に反する行動がいけないと言うのだ。あれだけ盛り上がった抗議活動に狙いをつけられ、法律を変えた。香港の騒動は皆無になった。

 

 自己を表現する、思ったことを言う、行動に出る、デモンストレーションする、同志が集まる、抗議活動をする。日本の憲法では全て自由にできる。中国はどうだろう。日本だって警察が邪魔だてをする。政府寄りの裁判になりがち、マスコミは弱気というより完全に政府についている。それでも大事で権威ある憲法が自由を謳っている。心強いです。中国の憲法は違うのだろう。

 

 チャン・バクヤッの実の息子が文句を言う。難民の子どもの世話なんかしないで息子の心配してくれ。もっともな言いぐさだ。でもやらなきゃならない責任があるんだ。

 

 精いっぱいの責任を果たしました、たぶん、うまくいくでしょう、うまくいくといいね。成功を祈る!

 

監督 ラウ・コックルイ

出演 アンソニー・ウォン サハル・ザマン エンディ・チョウ インダージート・シン キランジート・ギル

2022年