ゲンセンカン主人 1993.8.13 シネマアルゴ新宿 | ギンレイの映画とか

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 ギンレイ以外も

第一話『李さん一家』  第二話『紅い花』  第三話 『ゲンセンカン主人』  第四話『池袋百点会』

 

 つげ義春の四話のオムニバス四本の内、三本まで見て、これは見て失敗だったかな、と思った。つげ義春は名前だけは知っていたが、読んだことはなかった。絵の雰囲気も特別好きな感じではなかったのに、どういうわけか見る気になったのだ。そしたら、これでしょ。この世界には入って行けないかな、と思い始めたらそうでもない、といつの間にか思い始めた。シネマアルゴらしい作品選びの乗ったわけ。

 

 三本目の「ゲンセンカン主人」の暗さにようやく慣れてきた、と思ったら終わってしまって、次のが始まる前につげ義春自身の物語が展開していた。そしたら、これも四本の内のひとつだった。まったくの創作の世界にはどうしても入り込めなかったようで、同じように暗い話ではあっても彼のノンフィクションの方はごく自然に受け入れられた。それは、この映画の時代が昭和三十年代の始めごろで私自身にとっても懐かしく思い出せる共通項であったからだ。子どもの私があんな暗い生活を送っていたわけではないにしても、あの時代の雰囲気がとてもよく出ているのに感心した。「泥の河」よりも徹底した時代の映像作りは神業に近い。この映画の好悪はさて置いてもこのことは特筆されるべきことだ。やれば出来る、安易に流れなかったしぶとさに作者の心意気を見た。奇妙に惹かれるものがあった。いや、好きになった。でも漫画は見ない。

 

監督 石井輝男

出演 佐野史郎 横山あきお 中上ちか 久積絵夢 荻野純一 水木薫 川崎麻世 岡田奈々 杉作J太郎 きたろう

1993年