ファースト・カウ 2024.1.6 新宿武蔵野館2 | ギンレイの映画とか

ギンレイの映画とか

 ギンレイ以外も

 話の頭とお尻が繋がっているのは、後からわかってくる。それはここでは書かない。

 

 料理人のクッキーと中国人移民のキング・ルーは、アメリカン・ドリームを求めてオレゴン州にやって来た。共に成功を夢見る彼らは意気投合し、ある計画を思いつく。1820年はまだ西部開拓前の頃、しかもオレゴンだなんて、アメリカ地理に疎い私には一体どこなのかと迷う。調べてみたらアメリカ西部だった。それじゃ西部劇になるのかな。昔でいうインディアンとガンマンの戦いなんて、実際にはどうなってたのか。アメリカが大陸での勢力を拡大していった歴史はわかっても、一人一人の地道な生活意欲が伴っていたことをしみじみ思った。男たちが未開地を開拓するのものんびりしたもので、そんな中、こんな話もあったんだね。

 

 動物の毛皮を捕まえて売り買いする集団があった。毛皮にも流行があって、最近は本場パリではどうのこうの、と話したりしている。捕まえる動物にも流行があるんだ。ビーバーは昔は高く売れたのが今は売れなくなったとか。でもまだ毛皮が動物愛護の精神に反するとか言われていなかった。動物を無闇に捕まえるのは良くない。いくら売れるからといって捕まえ続ければいずれいなくなってしまう。そうして消滅した動物はどれくらいあったか。人間の手で滅ぼされた動物は同じ動物の人間に復讐する術もなく、いなくなってしまった。

 

 地球上に生きる動物の中で、今のところトップに立っている人類の天下はいつまで続くだろう。生命の歴史をたどってみればホモ・サピエンスもいずれ滅びる。次代のスターは何になるか。文明はあったほうが面白い。本能で生きる十アルファで大きく変化する。人類の失敗を取り返す何ものかに期待しよう。

 

 それはさておき、商売を始めるきっかけがいつどこにあるかは未知数だから面白い。クッキーとキング・ルーが始めた菓子作りは大成功するまでいけば良かった。でもお菓子好きだけど気の荒い男たちばかりの土地では難しい。冒頭の場面を思い出すと気が滅入る。あれ、無くして希望を持たせてほしい。

 

 アメリカは開拓史を撮るに値する広大な土地がまだまだ残ってる。クッキーで一本の映画を作れるんなら他のテーマでいくらでも撮れる。映画の領域は過去未来を自由に行き来する。いくら作ってもネタが枯れることがない。アメリカ映画もリメイクが多くなっていたが、材料はいくらでもある。勇ましい西武開拓史ばかりではない。ささやかだが希望がある、でも挫折もあるに違いない、もしかしたら大成功! 成功ばかりが目立つけど、こんな裏話に金が埋まっている。

 

監督 ケリー・ライカート

出演 ジョン・マガロ オリオン・リー トビー・ジョーンズ ユエン・ブレムナー スコット・シェパード ゲイリー・ファーマー リリー・グラッドストーン

2019年