市子 2023.12.9 シネマロサ2 | ギンレイの映画とか

ギンレイの映画とか

 ギンレイ以外も

 市子は気持ちを高揚させるため、好きで口ずさんでる心地の良い歌で落ち着こうとした。彼女の声が耳に残って、映画が終わって映画館を出て人混みにまぎれても音が残り続けた。にじにはそんな効用があるようだ。うまく歌いあげるのは無理でもハミングならできる。

 

 無戸籍の件は説明を聞いてわかった。法律の穴は方々にあって、それを埋める努力のない日本は相当遅れてる。外国人にも難民にも優しくない。それどころか日本人にも冷たい。なんでも政治で解決できるわけではないが、困ったときに助けがあってしかるべきではないか。でも市子にどんな手助けができる?

 

 長い同棲中の男が女に結婚しようと言う。同棲は結婚の助走ではないが結婚のレールには乗っている。同棲も長くなると結婚しなくてもいいんじゃない、となってしまう。どうせ同じこと、と思うのだ。

 

 ところがどっこい、籍を入れる結婚は違うのだ。特に市子の場合、届けを出すのに戸籍を取ったりすれば家族のこと自分のことが知られてしまう。これは仕方ない。そこから逃げた市子。8月12日に申し込まれて次の日に逃走、この変わり身の速さよ。

 

 ここはしばし待て、なんだかんだ言って待って貰えばいいじゃなか。男がバイクで来る音がする中、バッグに荷物を入れて、窓から下に降りようとしたのにバッグに手が届かない。バッグは諦めて走って逃げた。そこまでする必要があったのか。真実を話せばいいだけじゃないか。彼女が抱えた事実は話すに易くないにしても、話せばわかってもらえる。前に進むか後に下がるか、別れるかでしょう。結論を先延ばしにして自分を追い込むだけでしかない。

 

 家族関係が複雑なのは仕方ないし、市子に責任はない。それでも自分の立場を組み立て直し、やり直そうと思わなかったのか。自分の思いだけでは生きていけない。そこから逃げたくても逃げられない。

 

 母親のなつみから言われるままに運命を受け入れ、こんがらせていき、いまや四面楚歌回りは壁だらけ。この夏の日、この機会を捉えて問題解決に向かえばいいんじゃない?

 

 人生相談か占い、弁護士なんかじゃない! 自分でやるしかない。あまりにも多くの人間にかまわれ自分て誰、って感じは不安だ。市子を理解するには市子にならなければならない。

 

 面白い話を組み立てたつもりでしょうが、ついていくのが大変。少しづつつじつまを合わせつつ進んでいく。最終的には他人の解説をのぞいてどうにか分かった。反則技を駆使は駄目でしょ。それならいっそ訳のわからない方が良かった。

 

監督 戸田彬弘

出演 杉咲花 若葉竜也 森永悠希 倉悠貴 中田青渚 石川瑠華 大浦千佳 渡辺大知 宇野祥平 中村ゆり

2023年