ニューヨークのウォール街で働いてるなんて、まさに経済の中心にいる感じだ。資本主義の象徴のようなところだから。ここは何かを生産することがないのに、一番偉そうにしている。
結婚しない女、じゃなくて単なる結婚していない女というだけのようだ。その上きっと結婚するよ、画家のソールと。しないのは、前のがまだ残っているからだ。懲りているからだ。
結婚している状態で、その中に安住しちゃっていて、ふとある日、夫が去っていく。空気みたいな存在だったとしても、エアがなくちゃもう生きていけなくなる。彼女は綺麗だから男には不自由しない。だが付き合いはしても再婚にはならない。元の夫が振られて戻ってきたいと言ってきた。めったやたらに気落ちしている。自業自得でしょ、といさめる。と同時に気持ちが揺れる。
それにしても、まあ、こんなにもてて、どうしましょう。女友だちからは、もっと遊べと言われるし、独身生活を楽しみましょうか、と迷う。離婚経験あり、子どもありの女性はもてる。
傷を癒すのは時と、新しい男しかない。娘は娘で15歳らしく振舞っているし、ぽっかりと開いた穴を埋めてはくれない。ここに見られるのは、つまり安定した妻の座をふいに失した女のあがきというもの。あなたならどうしますか、といった軽い問い。映画が質問をしてくる。それに答えを出してもいいし、自分に置き換えて考えるのもいい。
でも映画に正解を求めるのは無駄なことだ。今はやりの自立する女性を描いているものと思ってたのに、がっかり。ああそうだった、題からして An unmarried woman だもの。それだけのことだったのか、とここで膝を打った次第。
私の好きな俳優アラン・ベイツが出ていた。彼の口調の見事さは、このアメリカ映画の中にあって光っていたのは言うまでもなく、引きずり回していた感もあった。
全体として言えば、この映画、落第じゃないけれど及第点はつけられない。からしが足りないというより、全くない。マザースキーとしては良い出来とは言えない。
私としては、女性は unmarried であろうと married であろうとも変わることなく強く生きて欲しい。
女も平凡だからこそ、それについていた男もまさにノーマルだったね。彼の方の結末も、やっぱりそうかと思わせたものだし、私といたしましては、あまりにもありきたりのストーリーを追ったのみで、ニューヨークの景色をしみじみと見つめておりました。ただニューヨークで働くのって羨ましいなと思った。
監督 ポール・マザースキー
出演 ジル・クレイバーグ マイケル・マーフィ アラン・ベイツ クリフ・ゴーマン パット・クイン ケリー・ビショップ リサ・ルーカス リンダ・G・ミラー アンドリュー・ダンカン マシュー・アーキン ペネロープ・ルッシアノフ ノヴェラ・ネルソン レイモンド・J・バリー アイヴァン・カープ
1977年