女神の見えざる手 2018.2.27 | ギンレイの映画とか

ギンレイの映画とか

 ギンレイ以外も

 アメリカの政治にロビイストが介入することは知っていたが、彼らがなぜ、どのような活動をしているのかは知らなかった。この映画でいっぺんに彼らの働きが分かった。しかも内容が今まさに旬の銃規制問題だ。銃による発砲事件がいくらあっても銃規制が大きく前進することはない、というのが今までの状況だった。

 

 少し前にかなり評判になっていた映画で、見ようかどうか迷った。ギンレイホールでかかるような映画とわきまえて、外した。案の定やってくれた。

 

 同じように気になる映画がある。絶対見る、見たい、見てもいい、時間があれば見る、見る気なし、と分ける。ところが新聞か何かで良いという情報があるとすぐ飛びつきたくなる。そのため見たいと思っていたのが外れてしまう。そうたくさんは行けないので、そういうことになる。

 

 ついでにもう一つ、ギンレイ会員ゆえの問題がある。ギンレイホールで上映される映画の傾向は分かる。例えばアカデミー賞がらみのはやってくれる。単館上映の地味なのも拾ってくれる。どうやら私と好みが似ているらしい。今現在気になっていてギンレイホールでやりそうな映画は「スリー・ビルボード」だ。見たい気持ちを抑えられるか試している。クリント・イーストウッドはほとんどやる。だから「15時17分、パリ行き」は迷うが、我慢できないだろう。

 

 ロビイストのエリザベス・スローンの八面六臂の活躍を書こうにも、ストーリーの全てが見てのお楽しみなので書けない。詐欺師のギミックではないが、だまし合いは楽しく見られるものと、そうでないものがある。この映画は残念ながら後者だ。ただ銃規制側で奮闘するため、銃規制を支持する人には彼女が救いの神のように思える。彼女の正義の戦いに邪魔立てする反銃規制派ロビイストや政治家を悪人にした善悪ものだ。この単純な白黒がアメリカの暗黒をあらわしている。

 

 そりゃあ銃は規制されて当然だ。でもね、今さら数億もの銃が野放しになっている状態のほんの先っちょのところを抑えたって、大勢に影響ないと思う。またそれによって規制がどんどん進んでいって将来的には銃廃止になるという道が開けるのか。これはまさに国連で採決された核兵器禁止条約が将来の核廃絶につながる道以上に困難なことだと思う。アメリカで銃が無くなることは、世界から核兵器が無くなることより難しいことだ。

 

 ロビイストが職業として機能しているのはわかった。つまり企業や団体の代わりに政治家と取引をする役目をする。金も使う。これって程のいいワイロじゃないか。犯罪に相当するような気がする。でもそうなってないのはなぜか。そこにロビイストという、ひとクッションが入るからだ。

 

 どのようにしてロビイストが出来たのか気になるが、うまい隠れみのだと思う。相対する双方から金を取ってうまくやるなんてことも出来そうだ。政治家は金で動く者たちだから。 

 

 ミス スローンの自分を律すること、表裏をわきまえていること、それは立派であるが、少しのほころびが、全てを失う危うさにつながる。事実彼女は拘束の身になった。だがそれもまた彼女の作戦の一端であるように思える。続編が作られることはないと思うが、できたら見てみたい。

 

監督 ジョン・マッデン

出演 ジェシカ・チャステイン マーク・ストロング アリソン・ピル ジョン・リスゴー サム・ウォーターストン ググ・バサ・ロー マイケル・スタールバーグ

2016年