はじめてのおもてなし 2017.9.30 スパイラルホール | ギンレイの映画とか

ギンレイの映画とか

 ギンレイ以外も

 ウェルカム・トゥ・ジャーマニーという仮題がついていた。上映当日に行ってみれば「はじめてのおもてなし」というストーリーからかけはなれた題名になっていた。映画配給会社さん、今からでも遅くないから、別の題名にしてくれ。内容が分かる題名が良い。仮題のままでいいんじゃないの。

 

 難民がヨーロッパに押し寄せ、各国で問題化しているニュースはよく聞く。国によって対応が大きく異なり、ドイツは政府としては大歓迎ということ。政治家のトップがそう言っても、国民全てが同じ考えであるわけはない。しかし概ねそんな気持ちの人が多いということだろう。

 

 だが、現実的にどんな方法で彼らを迎えるのか、となると普通うろたえるだろう。うちに来てもらっては困る、から何人でもオーケーまで様々だ。実のところ主人公の家庭のように、たった一人迎え入れるのだってこのありさまだ。

 

 この大混乱を喜劇タッチで描くことでなんとか映画の体裁を保っているが、深刻にしたら悲劇になるし、どう描いても気楽な話ではないのだ。ここはやはり笑わせて楽しんでから考えるしかない。

 

 国の方針が後押しをしたのだろう、妻のアンゲリカが言い出した。難民を一人受け入れたいと。夫リヒャルトに反対する理由はない。だが気がのらないようである。リヒャルトは自分のことで精一杯、見ず知らずの他人に気が回るはずもない。今一番の関心事は別にある。

 

 リヒャルトは整形外科医だが、美容整形医の友人に、少しずつ治療してもらっている。彼は髪の毛と顔のシワをなんとかしたいが、整形するほどの勇気はない。友人は整形しろ、とうるさい。気にしていないふりを見せるが、実は気にしている。

 

 あと友人の美容外科医のようすが日本の有名美容外科医に似ているのがおかしい。のっぺりとした、いかにも整形が入っている顔と、にやけた顔もそっくり。どうやら国を越えて整形顔は存在するのだ。医師は自分自身を見本に整形するのだろうが、どうも失敗くさい人が多い。美容整形はまだ完璧に遠い。もっともうまくやったのなら、整形くささがないはずだから気づかないことになる。不自然さがなくなれば変にならないだろう。あと年齢に相応しくないシワなしも変だ。女優に多い。でも、素人の人で整形なんかするはずのない田舎のお婆さんで、若く見える人がいるから、年齢だけで判断はできない。人それぞれ、無理しないこと。今や整形も選択肢に入るだろう、でも変なんだよね。カツラもまだまだだし、もしいいのができたら、かぶってもいいかも。

 

 息子と娘がいて、息子には孫がいる。みんな順調、ではない。だけど、深刻な問題を抱えているわけではない。このくらいの問題なら、きっとどこの家にもあるはずだ。むしろ恵まれた家族と言っていいくらいだ。

 

 元気が良いのは妻だけだ。そのアンゲリカも実はアル中気味だ。家族そろってまともではないのに、そこにさらに問題を抱えるというのだから。つまり、順調な国ドイツに問題児=難民を受け入れることのモデルケースだ。でも実のところ、問題のある家庭にさらに問題をつきつけたらどうなるか。この家族でダメなら、上手くいく家族はないことになる。映画をみて、真剣に考えたドイツ人は多くいたと思う。

 

監督 サイモン・バーホーベン

出演 センタ・バーガー ハイナー・ラウターバッハ フロリアン・ダーヴィット・フィッツ パリーナ・ロジンスキ エリヤス・エンバレク エリック・カポンゴ ウーヴェ・オクセンクネヒト ウルリケ・クリーナー

2016年