猛獣珍の恋愛小説 -2ページ目
第三十章 優勝の影に隠された秘密
俺達、星光工業高校サッカー部は、
県大会新人戦を優勝した。
全国の切符を手に入れた。
決勝戦の後、皆んなで祝勝会をすることに
なった。静奈達と俺らいつものメンバーで。
決勝戦から2日後、学校近くのハンバーグ屋
で開催された。
祝勝会後、静奈と2人きりになった。
長谷川、咲ちゃんが気を使ってくれたみたいだ
静奈 「優勝ってすごいね。ほんとに勝っ
ちゃうんだもん。」
俺 「俺も、あの時フリーキックを蹴った時
のこと冷静になってみたら
めっちゃ怖くなってきたもん」
静奈 「私、神様にお願いしたもん。多分
皆んなねw」
俺 「あの時さぁ、静奈の方見たの
分かった?」
静奈 「やっぱりそうだったんだ。目が合った
気がしたもん。距離があったから
そんな気がしただけかなーって
思ってた」
俺 「見ててくれって。俺、小学生から
サッカー初めて、馬鹿みたいに
毎日ボール蹴ってさぁ、中学で
やっと優勝手前まで行って、何も
出来ず負けて。でも、今日は
静奈が居てくれて、仲間も応援
してくれてさぁ、絶対!行ける!
ゴール決めれる!って自信が
湧いてきたんだよね」
静奈 「私は、神様お願いしますって感じ。
こんな気持ち初めてだったな〜。
ゴールした後、ヤス君最高に
カッコ良かったよ。スタンドの
皆んなが注目して、歓声が上がった
瞬間、何でか涙が止まんなくなったの
でも、顔は笑ってるの。
で、咲ちゃん達見たら、
皆んな泣いてるんだもん。
また、泣けてきちゃって」
俺と静奈は、あの時のことを一生忘れないね
って話た。
俺 「そういやぁ、なかなか来ないから
心配したわ、何してたん?」
静奈は、うつむき何か言いにくそうな様子
だったが•••
静奈 「家でて、駅まで行ったらお弁当忘れ
たのに気づいて、慌てて取りに帰った
の。そしたら、転んじゃって。
その時、足擦りむいちゃって、走る
と痛くて。遅くなりました。
ホント、鈍臭くて、ごめんなさい」
俺 「電話しても出ないからさぁ」
静奈 「電車の中で、マナーモードにして
降りた後もそのままで向かって
たから、全然気づかなかった」
俺 「電話してくれたら、良かったのに」
静奈 「恥ずかしくて、ごめんね」
俺 「足、酷く擦りむいたみたいやし
肘も怪我してるやん。派手に行った
なー」
静奈は、恥ずかしそうにうつむいてると
ばかり思ってた。後から、思い出せば、
少し考えこんだ辛そうな表情だった
ようにも思う。
優勝して、テンションMaxの俺は、全く気付
いてあげれなかった。
別れ際、彼女はホントに喜んでくれた
普段は、照れ屋な消極的な彼女が、この日は
違ってた。
俺に何も言わず抱きついてきた。
この時もっと、何かを察していてあげてれば。
彼女もテンション上がってるんだとばかり。
この時、
俺も初めて彼女を抱きしめた。
少し俺より背が低いくらいな彼女。彼女の
顔はうつむき加減で、俺の胸のあたりに
ある感じだった。彼女の髪からいい匂いが
したのは覚えてる。静奈は、
「おめでとう。よかったね」を何度も繰り返し
また、泣いていた。
俺は、嬉しくて彼女をより強く抱きしめてた。
5分くらいたったのだろうか、
俺 「どうした? 大丈夫か?」
と尋ねた
静奈 「・・・・・・。うん。ホントに
おめでとう。怪我して、不安だった
の知ってるし、練習頑張ってたのも
知ってるから、私まで嬉しくなっちゃ
って。ごめんね。大丈夫だから」
俺 「静奈がいてくれたから。俺の方こそ
お礼言わなきゃだめかもな。
こんな俺と、付き合ってくれたことに
感謝やし」
静奈 「今日さぁ、ほんとにカッコよかったよ
皆んながヤス君に注目したとき、
彼は、私の彼氏です!って言いたく
なっちゃったw。すごいでしょ!
って自慢したかったもん」
俺 「恥ずかしいけど、叫んでくれても
良かったのに」
静奈 「嘘だ〜。それはやめてっていうよ」
俺 「アハハ。確かに」
彼女の笑顔に少し安心した。
そして、この日改めてお互いの気持ちを
確認出来た気がして、別れた。
しかし、この日から静奈とは連絡が
取れなくなるのだった。
第二十九章 揺るぎない自信の源
思うようにいかない試合展開。
静奈は、なぜかこない。そんな感じで前半が
終わった。
咲 「静奈、どうしたんだろ?なんかあった
のかなぁ?」
加奈 「電話ずっとつながんないしね。」
かわちん「べーやん、気にしてこっちばっか
り見てるで」
絵里 「早くしないと後半始まっちゃうよー」
皆んな、段々心配になってじっとして
られなくなっていた。
長谷川「静奈ちゃん。どしたんだろな?
まだ、来てないみたいやな?」
俺 「おう、まだみたいやな。それより
相手強いな。マークかなり厳しいわ」
静奈のことは、心配だったが、少し強がって
試合に集中してるフリをしてしまった。
長谷川「そやな、先輩らも中々、いつもみたい
に行ってない感じやな」
俺 「このままやったら、先にいかれて
まうわ。なんとかせなな」
そんな時だった。咲の携帯が鳴った。
静奈からだった。
咲 「もしもし、静奈どないしたん?
今、どこ?」
静奈「ごめん。もう少しで着くから。試合
どうなってるん?」
咲 「まだ、同点よ。早く来て、べーやん
安心させてあげな、あかんで」
静奈「ごめん。ちょっと色々あって。」
絵里「大丈夫なん?待ってるよ」
加奈「入口で待ってるから」
まこちゃんが、俺らに合図をくれた。
電話があって、もうすぐ着くよ。がんばれ!
身振り手振りでだったが、そう言ってるのは
何となく分かった。
長谷川「よかったわ、事故でもあったんか
思たわ。べーやん、よかったな」
俺 「心配かけんなや。こんなときに」
俺は、安心したのもあってか、冷たい返ししか
しなかった。
後半が、始まって5分ぐらいたったとこで
静奈の姿が目に入った。手を振る彼女の存在
は、俺にとって揺るぎない自信の源だった。
咲 「静奈こっち!こっち」
静奈「ごめん。良かったまだ、終わってなく
て。皆んな、心配かけてごめんね」
絵里「電話ずっとかけてたのにどしたん?」
皆んな慌ててたせいか、静奈の汚れた服に
擦りむいた手と膝に気付いてなかった。
やま「静奈ちゃん、血が出てるよ?
服も汚れてるし、どした?」
やまが、気付いた。
絵里「うわ!どしたん?」
静奈「あっこれ•••。さっき慌てて来たから
転んじゃって。これぐらい大丈夫だから」
咲 「もう、何やってんのよ。」
まこちゃん「ちょっと待ってて。サッカー部の
子に言うて、応急手当様の薬
借りて来るわ」
静奈「これぐらい、大丈夫。ありがとう」
まこちゃん 「バイ菌入ったらいかんし、
待ってて」
試合は、均衡状態が続いてたが、
相手のミスから、ゴール前で、フリーキックを
とった。ここだと思った。先輩達もだいぶ
疲労が見え始めてた。キッカーを願い出た。
決める自信があった。何の根拠もない自信が
あった。後、10分。チャンスはもう多くは
ない。先輩達も悩んでるようだった。
そんなとき、交代の合図が出て、ここで
長谷川が出てきた。
長谷川「監督からです。山部に託せだ
そうです」
先輩達もその一言で、納得してくれた。
俺に託すと。 俺は、観客席の静奈を見た。
彼女は👍を空に突き立てるように、そして
俺に、自信を与えるかのように見えた。
迷いはなかった。このボールをあのゴールに!
長めの助走から、思いっきり振り切った!
ボールは相手守備陣の壁を超えて、ゴール
左隅にむかった!
静寂の間があった気がした。
ゴーーーール! 拳を突き上げた!
俺「よっしゃ〜!」
会場中が、ざわめいた!
仲間たちにもみくちゃにされながら、静奈たち
がいる観客席の近くまで行った。
俺「静奈!やったぞ!やったぞ〜!」
静奈は、笑顔で手を振ってくれた。
静奈「遅くなってごめんね!ちゃんと、
見たから。見たから」
咲ちゃん達と抱き合って喜ぶ彼女をみたら、
最高に嬉しかった。こう言う場面を何度も
夢に見たことがあった。現実になってること
が不思議な感じもした。
試合は。この一点で決まった!
何と、優勝してしまった。全国にいけること
になった。まだ先のことだと思ってた全国挑戦
が決まったのだ。
閉会式を終え、皆の待つ所に向かった。
やま「やったなおい!」
かわちん「あれは痺れたわ!ヤバかったわ!」
咲 「ほんと、ドキドキ💓したー」
加奈「カッコ良すぎへん。静奈が来たら
シュート決めるんやもん」
絵里「ドラマみたいやんなー」
まこちゃん「ほんまやで。惚れてまうやろ」
長谷川「俺が出ててたこと、皆さん気付いて
ました?」
やま「そうなん?ボール触った?」
長谷川「おい!がんばったちゅうねん」
かわちん「知っとるって。冗談やって」
「wwwwwww」
俺「静奈、来るん遅いって。何かあった?」
静奈「ちょっと転んじゃって。携帯とか
皆んな飛んでっちゃって、探すの時間
かかったゃった、ごめんね」
俺「派手にこけたんやなー。皆んな心配して
たんやで」
静奈「皆んなごめんね。おっちょこちょいが
酷くて」
俺 「怪我してるやん。大丈夫?
服も汚れたままやんか」
静奈「大丈夫、消毒もしてるし。これぐらい
テニスやってても、たまになるしね
慌ててたから、服の汚れも気にならん
かった。ほんまやね、だいぶ汚れてた
るわ」
咲「もう、しっかり者の静奈が、珍しい。
彼氏の試合で、緊張してたんちゃう?」
咲「折角、私らお弁当持ってきてたけど、
食べる暇なかったから、どうしよっか?」
かわちん「忘れた。今日の楽しみの一つやった
のに」
長谷川「折角やから、皆んな食べようよ。」
俺 「腹空いてるし、そうしよ!」
静奈「私、お弁当バラバラになってたから
捨ててしもうたんよ。ごめんね」
俺 「残念やけど、しゃーないか。咲ちゃん
らの分けてもらおうぜ」
静奈「うん」
咲ちゃん達のお弁当を、皆んなで頂いた。
ワイワイ騒ぎながら、優勝の余韻にもひたり
最高に楽しかった。
俺は、この時、静奈の異変に全く気付いて
なかったのだ。
第二十八章 静奈!早く!
俺達サッカー部は、新人戦県大会決勝まで
たどり着くことが出来た。
決勝戦当日、天気は快晴、気分は最高潮の
状態でスタジアムにむかった。先輩達は、
いつも通りの感じで、少し緊張がほぐれた。
対戦相手、市立高校。強豪校だ。
勝ったことは無いらしい。今までの俺なら
気落ちしてただろう。でも、この大会は
違う、大好きなら彼女と大切な仲間が、
ついていてくれるからだ。彼女、大西静奈
中学時代から好きで、一度はフラれた
こともあったが、ひょんなことから付き合う
ことなったわけで。静奈が、観てくれてるだけ
で俺の力は120%だから。負ける気はしない。
バカなあいつらも、俺にとっては大事な仲間
で、心強く思えた。今日も、応援席に姿が
あった。静奈の友達もずっと応援に来てくれて
た。しかし、なぜか静奈の姿がなかった。
試合までにはと、思ってこの時はそれほど
気にしてなかった。 それからアップが終わり
試合まであと少しになっても彼女の姿は
見えなかった。
俺 「咲ちゃん、静奈は?きてる?」
咲 「朝、電話したら、もうすぐ出るって
行ってたんだけど。まだ、来てない
みたい。さっきから電話してるけど
出ないの」
俺 「マジかよ?もう、始まるんだけどなぁ」
咲 「大丈夫だと思うよ。静奈、約束破る
様なことはしない子だから。何か、
忘れ物とか取りに帰ったりしてるん
だと思うよ」
俺 「・・・・・。」
かわちん「べーやん、心配要らんって!
来たら合図したるから」
まこちゃん「べーやん、長谷川、ここまで
来たら、勝てよ。全国行くで」
加奈 絵里「静奈絶対くるから。今日は
頑張って!応援してるよー!」
長谷川「ありがとう。勝ってくるわ!
べーやん、そろそろ」
俺 「おっおう。やま、ちょっと外見て来て
くれん?迷ってるかも」
やま「そやな、見てくるわ。安心して行って
こいって」
心配だったが、時間が来てしまった。
先輩達を待たせるわけにはいかない。
気合を入れ直した。入場の為整列。隣にいる
市立高校を睨んでる先輩らが、頼もしく
少し滑稽で笑えた。ヤンキーが喧嘩に行く
感じに思えたからだ。
入場。雲一つ無い晴天のグラウンドは、明るく
照らされ、選手の姿が観えた瞬間の歓声に
ビックリした。今まで感じたことのない
地響きがするぐらいの盛り上がりだった。
静奈は間に合ったのだろうか? ここからは
確認は出来ず、長谷川に合図を頼んどいた。
キックオフ!試合が、始まった!
やま「静奈ちゃん、試合始まってまうよー。
早く 来て〜」
咲 「やま〜。静奈いた?」
やま 「いや〜居ないなー」
咲 「もう、電話も出ないし。どこいった
のよー。試合はじまっちゃったよ」
やま「なんかあったのかなぁ?」
咲 「私、グルっと一周して来る。やまは
ここで待っててあげて」
やま「咲ちゃんがここにいて。俺、行ってくる
わ」
咲「ほんま!ありがと」
絵里 「静奈どしたんやろ?」
かわちん「連絡つかんの?」
加奈 「私もさっきから、LINEしてるんやけど
既読もつかん」
まこちゃん「慌てて来てるんやない」
試合は、前半は均衡状態がつづいていた。
俺には、しっかりマークがついて思うように
させてもらえなかった。 長谷川を見ても、
まだ、来てないの合図。
俺 「何やってんだよ。昨日電話でも、
絶対来るっていってたのに!」
少し、苛立ってた。
このとき、彼女は大変なことに巻き込まれて
いたのだった。
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