第二十八章 静奈!早く!
俺達サッカー部は、新人戦県大会決勝まで
たどり着くことが出来た。
決勝戦当日、天気は快晴、気分は最高潮の
状態でスタジアムにむかった。先輩達は、
いつも通りの感じで、少し緊張がほぐれた。
対戦相手、市立高校。強豪校だ。
勝ったことは無いらしい。今までの俺なら
気落ちしてただろう。でも、この大会は
違う、大好きなら彼女と大切な仲間が、
ついていてくれるからだ。彼女、大西静奈
中学時代から好きで、一度はフラれた
こともあったが、ひょんなことから付き合う
ことなったわけで。静奈が、観てくれてるだけ
で俺の力は120%だから。負ける気はしない。
バカなあいつらも、俺にとっては大事な仲間
で、心強く思えた。今日も、応援席に姿が
あった。静奈の友達もずっと応援に来てくれて
た。しかし、なぜか静奈の姿がなかった。
試合までにはと、思ってこの時はそれほど
気にしてなかった。 それからアップが終わり
試合まであと少しになっても彼女の姿は
見えなかった。
俺 「咲ちゃん、静奈は?きてる?」
咲 「朝、電話したら、もうすぐ出るって
行ってたんだけど。まだ、来てない
みたい。さっきから電話してるけど
出ないの」
俺 「マジかよ?もう、始まるんだけどなぁ」
咲 「大丈夫だと思うよ。静奈、約束破る
様なことはしない子だから。何か、
忘れ物とか取りに帰ったりしてるん
だと思うよ」
俺 「・・・・・。」
かわちん「べーやん、心配要らんって!
来たら合図したるから」
まこちゃん「べーやん、長谷川、ここまで
来たら、勝てよ。全国行くで」
加奈 絵里「静奈絶対くるから。今日は
頑張って!応援してるよー!」
長谷川「ありがとう。勝ってくるわ!
べーやん、そろそろ」
俺 「おっおう。やま、ちょっと外見て来て
くれん?迷ってるかも」
やま「そやな、見てくるわ。安心して行って
こいって」
心配だったが、時間が来てしまった。
先輩達を待たせるわけにはいかない。
気合を入れ直した。入場の為整列。隣にいる
市立高校を睨んでる先輩らが、頼もしく
少し滑稽で笑えた。ヤンキーが喧嘩に行く
感じに思えたからだ。
入場。雲一つ無い晴天のグラウンドは、明るく
照らされ、選手の姿が観えた瞬間の歓声に
ビックリした。今まで感じたことのない
地響きがするぐらいの盛り上がりだった。
静奈は間に合ったのだろうか? ここからは
確認は出来ず、長谷川に合図を頼んどいた。
キックオフ!試合が、始まった!
やま「静奈ちゃん、試合始まってまうよー。
早く 来て〜」
咲 「やま〜。静奈いた?」
やま 「いや〜居ないなー」
咲 「もう、電話も出ないし。どこいった
のよー。試合はじまっちゃったよ」
やま「なんかあったのかなぁ?」
咲 「私、グルっと一周して来る。やまは
ここで待っててあげて」
やま「咲ちゃんがここにいて。俺、行ってくる
わ」
咲「ほんま!ありがと」
絵里 「静奈どしたんやろ?」
かわちん「連絡つかんの?」
加奈 「私もさっきから、LINEしてるんやけど
既読もつかん」
まこちゃん「慌てて来てるんやない」
試合は、前半は均衡状態がつづいていた。
俺には、しっかりマークがついて思うように
させてもらえなかった。 長谷川を見ても、
まだ、来てないの合図。
俺 「何やってんだよ。昨日電話でも、
絶対来るっていってたのに!」
少し、苛立ってた。
このとき、彼女は大変なことに巻き込まれて
いたのだった。