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ほんとなかよし

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だったらいいな・・・

ドイル自身がもっとも愛した短篇であり、探偵小説史上の記念碑的作品“まだらの紐”をはじめ、“ボヘミアの醜聞”、“赤毛組合”など、名探偵ホームズの人気を確立した第一短篇集。夢、喜劇、幻想が入り混じる、ドイルの最高傑作。オックスフォード大学版の注・解説にくわえ、初版本イラスト全点を復刻掲載した決定版。


内容「BOOK」データベースより


河出文庫シャーロック・ホームズ全集第3弾「シャーロック・ホームズの冒険」は、ホームズシリーズの1つの作品であり、5つある短編集の最初の作品。「緋色の習作」「四つのサイン」という長編と違い短編集となる「ホームズの冒険」はホームズの魅力を小さくするどころか一段と高めているようにすら感じる。

初見で会った人物が今朝何をしてきて結果どうなったのか?を挨拶を交わした瞬間に言い当てる事が出来ればまるで魔法にかかったようである・・・が、ホームズはそれをやってのける。ホームズの類稀なる知性と経験・知識がそれを可能にしているのですが、ホームズのこの特技はファンが惹き付けられるのみならず彼の愛すべき能力の一つであると思います。この出会いがけにバッサリと相手を切り捨てるような切れ味が短編集では随所に見られます!短編集独特の短さゆえのキレのようなものが完全にホームズの呼吸に合っていると思います、また本作は舞台・テレビドラマ化などもされており「ホームズの冒険」がそのままホームズのイメージとなっている人も多いと言われています。


収録短編は、「ボヘミアの醜聞」「花婿失踪事件」「赤毛連合」「ボコムス谷の惨劇」「オレンジの種五つ」「唇の捩(ねじ)れた男」「青いガーネット」「まだらの紐」「技師の親指」「花嫁失踪事件」「緑柱石の宝冠」「ぶな屋敷」


全12編の短編が収録された本作ですが、まず「花婿失踪事件」と「花嫁失踪事件」と対極の事件が扱われている事が題名からでも判ります、題名が相反するだけでなく様々な事件や事故が取り扱われており、中にはホームズ自身が言うように法的には問題のない出来事を解決する物語も存在しています。この探偵=殺人事件解決という先入観が取り払われたホームズ物語が読めるだけでも短編集の価値あり!

オススメの短編を2つほど紹介したいと思います、読者はもちろんアーサー・コナンドイル自身も短編ナンバー1と評価するミステリオブミステリ「まだらの紐」・・・依頼人の女性ヘレンの双子の姉妹ジュリアは夜な夜な聞こえる口笛に悩んでいたのだが、ある日“まだらの紐”という謎の言葉を残し密室で死亡する。不気味で謎の多い屋敷のミステリを解き明かすためホームズは自ら屋敷で一夜を過ごす!怖さと同時にミステリ解決にワクワクする一級の作品は文句なしの出来栄え!これを読まずしてホームズは語れないという短編です。 次にイチオシなのは「ボヘミアの醜聞」です、ボヘミア国王自らが過去を清算する(醜聞を消す)ためにホームズに依頼するという物語なのですが・・・この話に登場するアイリーン・アドラーという女性はシャーロック・ホームズファンならば必ず話題に挙げてしまう登場人物の一人ではないでしょうか?ホームズが過去を振り返る時に名前を挙げるように読者も必ず名前を挙げてしまう人物となるでしょう、それほどまでに強烈なキャラクターが登場するってだけでも一読の価値あり!これ以外にも全ての短編がそれぞれの特色を備えていますので是非お好みの短編を見つけるのも良いかもしれませんね。


シャーロック・ホームズの冒険 (河出文庫―シャーロック・ホームズ全集)
アーサー・コナン ドイル リチャード・ランセリン グリーン
河出書房新社
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ある日、ホームズのもとを小柄で気品のある、ブロンドの若い婦人が訪れる。十年近く失踪中の父、毎年のように届けられる真珠の箱、そして突然届いた謎の招待状…。死体の傍らに残されたサインをめぐり、追跡劇が幕をあける。円熟期のホームズ物語をあじわえる、「四つの長編小説の中で、最も密度の濃い」傑作。充実した注と解説、全イラスト復刻。


内容「BOOK」データベースより


河出出版シャーロック・ホームズ全集第二弾「四つのサイン」。日本では新潮出版「四つの署名」が定着しているが原題signが署名を指すだけではないことや、カタカナ表記が一般化した事から「四つのサイン」とされている。本作は前作「緋色の習作」に続きホームズの長編小説となっている。

ブロンドの若い婦人(メアリー・モースタン)が持ち込んだ奇妙な依頼・・・毎年謎の人物から届けられる真珠の箱、その人物から招待状が来たのだ・・・ホームズは彼女に帯同し呼び出された場所へ出向くのだが、死体の横に奇妙なサインが残されているという密室殺人現場に遭遇する事になる。全く役立たずで手当たり次第容疑者を逮捕する無能な地元警察を横目にホームズの慧眼が光る!犯人はわかった、後はどうやって捕まえるかだ!?手に汗握るスリリングな追走劇がとてもグッド。ホームズのハードボイルドな一面が見られる作品。

「四つのサイン」の魅力の一つに、ホームズの奇行が挙げられる。「緋色の習作」で既に浮世離れした感性の持ち主である事はわかっていたのだけれど、さらに深まった印象である。まず事件に対する異常なまでの執着心や研究心は並外れたものがあるが・・・その全ての基が、好奇心から成り立っている。その好奇心が人一倍強いホームズは刺激が無くては生きていけない人間なのである。事件が発生しない、もしくはホームズの頭脳では取るに足りない事件しか発生しなかったときに彼は物足りなく刺激が無い時間に鬱々とする・・・そして、コカインを吸引するのだ!作品の時代にはコカインは想像力を豊かにするアイテムとしてそれほど危険視されていなかったとの事であるが、当然麻薬の一種であり。ホームズは完全な麻薬中毒者なのである!確かに名探偵と呼ばれる人物は一癖も二癖もある人物が多いものの、名探偵中の名探偵とされるシャーロック・ホームズが麻薬中毒者だとは実に驚きの設定である。ファンならば周知の事実でも知らない人からすれば驚くべき事と言えるでしょう!ただこの設定は意図的なものと思われます。 というのも、ホームズは事件や事故の真相究明にこそ重きを置いているもののその善悪に関してや社会的な正義の点ではそれほどに執着心がない印象を受けるからです。「緋色の習作」に「四つのサイン」ともに犯人の動機がわかると同情してしまう内容なのですが、ホームズの心にはそれほど響いているようには思えません。むしろ真相究明した自分に酔いしれている印象でしょうか^^ですから自身の品行方正に関しても無関心、無頓着なのだと言えます!その形の一つがコカインの常用に現れているのではないかと思います。

さて、先に無能な警官と書きましたが前作から引き続きホームズは事件解決の手柄を完全に警察に奪われています、ここは面白い所ですね。警察もホームズの頭脳に一目おきながらもけっして敬意を払うわけでもなく、あくまで専門家の意見程度の扱いでホームズに接しています。そしてホームズの方も、自分が利用されている事を知りながらも、特段気にしていない風を装っています・・・この警察組織とホームズの特殊な関係性も作品を読む上で楽しめるポイントではないかと思います。第二弾にして読めば読むほど面白くなるシャーロック・ホームズ!傑作と呼ばれる「四つのサイン」は単独ででも読むべき一冊。



四つのサイン (河出文庫)
アーサー・コナン ドイル
河出書房新社 (2014-05-08)
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おどろくべき知識と観察眼をもちながらも、地球が太陽の周りを回っていることすら知らない特異な男―世界一有名な探偵・ホームズとワトスンが初めて出会い、ベイカー街二二一Bでの共同生活をはじめる、記念碑的作品。オックスフォード大学版の注・解説にくわえ、初版本イラスト全点を復刻掲載した決定版。


内容 「BOOK」データベースより


シャーロック・ホームズは、アーサー・コナンドイルが生み出した架空の探偵。類稀なる観察力と圧倒的な頭脳により数々の難事件を解決するホームズ!相棒のワトスン先生との初めての出会いが描かれた記念すべき作品「緋色の習作」、河出文庫から全集9巻として登場。オックスフォード大学版の注釈と解説に初版本イラスト全点掲載は未読者のみならずファンも必見の全集といえる。

ミステリファンでなくともその名を知らぬ人は居ないのではないか?ホームズは名探偵中の名探偵といえる。以前から興味を抱きつつもなかなか手を出せないでいたのだけども・・・私をミステリの魅力にどっぷりとハメこんでくれたアメリカ・サスペンスの巨匠ジェフリー・ディーヴァーの短編集「ポーカーレッスン」にホームズが登場した事から俄然興味が湧き始めた、ソコに来て河出文庫から全集が出ていると知ったからには読まずにはいられない!といった経緯でホームズ全集その1「緋色の習作」を読むこととなりました。小説の題名に関しては「緋色の“研究”」で知る人も多いのではないでしょうか?翻訳の際における両義的なものから“研究”と“習作”の違いが発生しており、優劣を論じる事もしばしばだそうで・・・学術的な問題は脇において河出文庫「緋色の習作」でブログは統一します。

「緋色の習作」、これはこれはなんて面白い作品なのでしょう。ホームズレベルの名探偵となれば相棒の名も世に知れ渡っているものです、相棒ワトスンとの始めての出会いが書かれた作品であるというだけで作品の価値はぐっと上がる。またこれも良く言われている事ですが・・・ホームズの型破りな性格も作品の魅力の一つであると言えます。事件の推理に対して絶大なる明察力を持つホームズですが、およそ社会的な常識的感覚からはズレています、ワトスン先生(彼は元・軍医)はしばしばホームズの破天荒ぶりに唖然とするものの不思議とホームズを嫌わず帯同するようになります。一風変わった探偵に、生真面目な相棒という典型的な探偵コンビの基本をホームズシリーズは確立したのではないでしょうか?そしてその立ち居振る舞いが素晴らしいレベルで描かれているからこそシャーロック・ホームズがシリーズ作品として成立したのだろうと思います。

さて、肝心のミステリ部分ですが・・・意外や意外!物語の瑕疵が指摘されている部分があるなど完璧なものではないのだそうですwそりゃ~物語の整合性や細かい所まで気にして読むコアなミステリファンならばそういった瑕疵が作品に存在する事は重大な欠陥と感じるのかもしれませんね。ただ僕のような純粋に作品の楽しさのみを尺度にしている読者にとっては十分すぎるといって良い程のミステリでした。まずもって良い点は、犯人を憎む読者はそういないのではないかと思わせる点ですね、殺人事件が発生するんだけども、その事件の背後に隠れていた悲しい男女の悲劇の物語を知った読者は不思議と犯人に同情してしまう。この哀しみの犯人を描いている所が作者の凄い所ではないでしょうか?ホームズで有名な逸話があって、アーサー・コナンドイルは途中でシャーロック・ホームズを書く事に疲弊してしまいむしろ憎んでいたそうな・・・作中で彼を行方不明にしてシリーズを終えようとしたのだけども・・・ファンのあまりにも強い要望で復活させざるを得なかった・・・後半は嫌々書いていた・・・それでも面白い!って逸話。この全集でその雰囲気も味わえるのだろうかと今から楽しみでならない。シリーズ第一集、すばらしい出だしで本当は一作だけを読もうと思っていたのですが既に大人買いを済ませてしまいましたwもう満点のミステリ。今更紹介するまでもない名作はオススメを超えて読まないとモグリってレベルの作品。


緋色の習作 (河出文庫―シャーロック・ホームズ全集)
アーサー・コナン ドイル オーウェン・ダドリー エドワーズ
河出書房新社
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祖父と母との不義の子として生まれた宿命に苦悩する人主公時任謙作は、単身、尾道に向い、千光寺の中腹の家を借り、一人住いを始める。しかし、瀬戸内海の穏やかな風光も、彼の心に平安をもたらさない。長年月を費してなった志賀直哉唯一の長篇。


京都での結婚、妻の過失、子どもの死などを経て、舞台は日本海を見おろす大山に―作者が人生と仕事の上で求めてきたものすべてが投入され、描き尽くされた、近代日本文学に圧倒的な影響を及ぼした代表作。


内容「BOOK」データベースより


「暗夜行路」は志賀直哉唯一の長編小説、主人公である時任(ときとう)謙作という題名で新聞連載される予定だったが挫折、17年の歳月を経て生み出された難産作品。志賀直哉は「私小説」「心境小説」という日本独特の文学スタイルの最高峰作家、「暗夜行路」は「心境小説」の金字塔と言われるまでの名作である。放蕩に更ける小説家・時任謙作、見に覚えの無い拒絶により終わった過去の恋愛、それは自身が祖父と母の不義の子である事実が原因であった事を知る、やがて直子と結婚し平穏な日々を過ごしていたが、長男の生後間も無い病死・・・そして妻の不貞・・・自らの力の及ばぬ何かに抗うかの如く霊山大山に身を寄せる謙作はやがて、全てを赦す境地に達する。心境小説ならではの、主人公の心の機微が読者に突き刺さるだけではなく、主人公が感じる芸術や風景を同化して楽しむことができる名作、終盤の舞台である霊山大山を描いた風景描写は日本文学史上白眉と賞賛される名場面である。


「君には、出来るだけ今までの関係をそのまま残しておきたい気があるが、何も知らない間はいいが、これからも続けようというのは少し無理だ。破(こわ)れる部分は破してしまい、破しても破れない部分だけ残して、其処に不安のない関係を作れたら作るより仕方ない。もし根こそぎ、打破(ぶちこ)わしてしまうようなら、それも止むを得ない」


己の存在意義が揺らぐほどの真実を知って尚、このような台詞を主人公は言うのだが・・・全てを知った上で全てを赦すという時任謙作の心は、まるで鉄ででも出来ているのだろうかと感じたものである、ありとあらゆる事に達観し冷静な判断を怠らない彼の姿勢は日本男児として理想形の一つである。だが反面凄く危うい印象も受けた、喜怒哀楽の全ての感情が計算の基で成り立っているようにすら感じたからである、だからこそ後篇に登場した妻・直子の存在が際立つ、子の死や不貞といった話題こそあれど夫婦の愛がなんとも美しく、そこには計算なんてものは一切なく無償の愛が夫婦の間に存在している。この美しい姿が暗夜行路の題名に相応しい数々の苦難の中で輝いて見える所はただただ素晴らしいと感じる。作者あとがきにて書評家に“恋愛小説であると評価を受けて驚いたとの記述があるが、深い悲しみを乗り越えてもなお沸き立つ自然な感情は愛と呼ぶに相応しいのではないか?これは現代的な考えなのでしょうか?読者の心境の数だけ読解が生まれる、これが心境小説なんだと思わせてくれる一冊。

作者が中心となって心境が語られているのですが、案外他者が何を思っているかについてはさほど書かれていないように思います、例えば良き理解者である謙作の兄・信行なのですが・・・ある日会社をたたんで出家します・・・そこに何か大きな事件が隠れていたり何か心境の変化のようなものが絶対にあるはずなのに書かれていない、というよりもそこは解らないと一言で片付けている。この圧倒的な謙作の主観のみで構成されているのも非常に面白い点だといえます。世間や常識がどうであろうと私はこう思う!といった頑固一徹な印象でしょうか?それでいて非常に共感できる価値観の持ち主なだけに絶妙と言わざるをえませんでした。

最後に、我が子を失う物語というのは現代ではめっきり減りましたかねぇ~出生率そのものは下がっているのですが出産時や産後に子どもさんが亡くなる事が作中当時に比べると少ないように思います、志賀直哉は次男六女と昔ながらの子宝に恵まれていたものの長男と長女が生後まもなく病死するという経験をしているそうです・・・そのあたりの慟哭にもにた悲しみの感情が作中にもにじみ出ており。やはり印象に残る場面ではないかと思います。医療の進歩はこういった悲しい出来事も消化していっているのだなとしみじみと感じました。今の我々が悩んでいたり葛藤している事が未来が変わっていく第一歩なのかもしれないなぁなんて心境小説を読んでいて思ったものです。名作中の名作「暗夜行路」は、様々な事を思い感じながら読んで欲しい素敵な一冊。 作中に登場する場所に赴いたりしたときはパラパラと再読してみたくなる風流をそなえた作品でした。


暗夜行路〈前篇〉 (岩波文庫)
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文久三年八月。「みぶろ」と呼ばれる壬生浪士組は、近藤勇ら試衛館派と、芹沢鴨の水戸派の対立を深めていた。土方歳三を慕う島原の芸妓・糸里は、姉のような存在である輪違屋の音羽太夫を芹沢に殺され、浪士たちの内部抗争に巻き込まれていく。「壬生義士伝」に続き、新選組の“闇”=芹沢鴨暗殺事件の謎に迫る心理サスペンス。


芹沢鴨の愛人お梅、平山五郎の恋人吉栄、新選組の屯所、八木・前川両家の女房たちは、それぞれの立場から、新選組内部で深まる対立と陰諜を感じ取っていた。愛する土方のため、芹沢暗殺の企みに乗った糸里の最後の決意とは?息を飲むクライマックスと感動のラスト。巻末に著者と輪違屋当主の対談を収録。


内容「BOOK」データベースより


浅田次郎版新撰組三部作第二作「輪違屋糸里」、新撰組の“闇”=芹沢鴨局長暗殺事件の謎に浅田次郎ならではの視点や切り口で解き明かす!新撰組の本当の姿・芹沢鴨の本当の姿、時代や事件に翻弄された女性達の生き様をとくとご覧あれ・・・


見所その1 女性視点でみた芹沢鴨暗殺事件 芹沢鴨暗殺の場にいた、芹沢鴨の愛人・お梅、平山五郎の部屋にいた吉栄、平間重助の部屋にいた糸里、そして新撰組隊士の世話をする八木家・おまさ、前川家・お勝といった実在の女性達を前面に出し活き活きと描き創作を交える事で芹沢鴨暗殺事件の一連の物語を形成している。夢を見、男性を愛し、自らの生を感じ取る彼女たちの活躍は胸を熱くさせるだけでなく、武士や時代といった視点ではなく対人間としての新撰組の姿を浮かび上がらせる。


「世の男すべては、女のやさしさを食ろうて生きてる。」


なんとも男性作家の筆から、かようなオドロオドロシイ台詞が紡ぎだされるものであると感心してしまった、悲運・非業としか思えぬ状況に陥って読者も気分が沈んでしまう展開もあるかもしれない・・・だけど感動のラストまで是非とも読み更けて欲しいと思います。新撰組や武士といったテーマを抜きに人間ドラマとして読み応え抜群の物語。


見所その2 芹沢鴨と新撰組の新たな一面 浅田次郎の描く人物像はけっして醜いだけでなくそして美しいだけでもない、本当に人間らしい多面性を兼ね備えている人物が多い。 芹沢鴨といえば傍若無人で乱暴狼藉を働く人物とイメージが固定されていたように思うが・・・浅田次郎はそう決め付けない、新撰組は近藤勇ら試衛館派が百姓や御家人次男坊などの寄せ集めである事に反して氏素性から完全なる武士であった芹沢鴨の立場やお役目の重荷に視点を置くことで芹沢鴨の苦悩や葛藤を細かく描いている、暗殺事件に関しても、悪を粛清する新撰組といった単純な善悪事件とは描かず百姓対武士の下克上といった構図を用いる事で、より根が深く意味深な出来事であったと解釈できるように仕上げている 本書を読んで芹沢鴨を初め新撰組そのもののイメージが大きく変わったと感じる読者も多いのではないだろうか?これは見どころ1の女性の視点を用いる事でなしえた技といえなくもないが、浅田次郎の巧みな構成は仮説を超えた物語を生み出している。一つの事件を描くときに、当事者の人間像を見事に作り上げることで一つの物語を生み出す、まさに巧みの技といえる。素晴らしいの一言である。


最後に、私は浅田次郎三部作を「一刀斎夢録」→「壬生義士伝」→「輪違屋糸里」と読みましたが、作品順は「壬生義士伝」→「輪違屋・糸里」→「一刀斎夢録」であります。どの順番に読んでも問題はありませんが・・・刊行順を拘る方は是非とも後者の流れで読まれる事をオススメいたします。「一刀斎夢録」に関しては各書でちょいちょい登場し強烈な印象を残している斎藤一の物語ですので、いわばスピンオフ的に読める読み物ですので浅田次郎版新撰組愛をもって読むべし!シリーズ通しての見所は、無名隊士や無名脇役を主役級に描く浅田次郎マジック!時代小説ファンならずとも楽しめるって所もグッド♪



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