転職すること〇回。

(〇が一桁とは限りません。)

 

代償として、何度も面接を受けることになりました。

 

子供が生まれてからは、仕事の内容よりも条件を重視せざるを得ず、受けた面接の大半は、和やかなものでした。

 

大学の非常勤職員や派遣職員の場合、英語の資格がある、もしくはコネがあれば、顔合わせ程度の面接で決まりということも珍しくありません。

 

ただ、たまに新卒採用並みの本格的な面接が用意されていることもありました。人員の入れ替りが激しい職場では特に。

 

ドアを開けると、鋭い十の瞳が、こちらに一斉に向けられ、2.5mほど離れたところにパイプ椅子がポツンと置かれているパターンです。

 

事前に面接官ごとに質問が割り振られているらしく、様々な切り口の質問を何とか乗り切ったと思ったら

 

「では、最後に英語で志望動機をお願いします」

 

外国人相手ならまだしも、日本人のオジさん(教授を含む)を前に英語でスピーチ。こんなに恥ずかしいことはありません。

 

神妙な面持ちを忘れずに、頭から絞り出すように読み上げました。実は、前日、必死に覚えたフレーズ。ヤマが当たり、ニンマリするのを抑えるのも大変です。

 

回を重ねるごとに、面接には慣れていったものの、もう結構というのが本音です。転職回数は、クッキーの枚数よりは少ないのですが、お腹いっぱい。

 

夫の出身地で買ったクッキーは激甘。

 

ところで、外国人と結婚したことで敏感に反応してしまう言葉といえば、「ペラペラ」「ハーフ」「バイリンガル」など。

 

正体は謎です。得体のしれないものが、すぐそばにあると、かえって言葉の使用には慎重になるものです。

 

あえてタイトルに入れてみた「ペラペラ」。外国に住んでいても言葉に苦労している人がいるのと同様に、国際結婚をしても「ペラペラ」になるとは限りません。

 

初めてフランス語の求人に応募したのは、15年前。しかも、URGENT。今では「急募」は避けるべき案件だと理解していますが、20代半ばの私は飛び付きました。

 

何だか難しそうな職務内容
 
求人に書かれた「求める人物像」は
 
français courant, anglais parlé, connaissances en informatique et si possible connaissance du tissu industriel dans la région du Kansai
 
フランス語が流暢であること、英語が話せること、パソコンの知識、可能であれば、関西の産業構造の知識を有していること。
 
10ヵ月の留学、2年間の自動車部品メーカー勤務。全く自信はありませんでしたが、ここ、大阪でフランス語を使う仕事の求人が出るのは稀です。
 
履歴書と職務経歴書を送ったところ、早速、面接の案内が届きました。「急募」とはそういうものです。
 
今では、言語の四技能「話す」「聞く」「書く」「読む」のうち、「話す」のが最も楽なのですが、当時は、「書く」「読む」のほうが自信がありました。
 
「話す」のが苦手なのはどうしようもありません。想定される質問(自己PR、志望動機、前職の退職理由、自分の長所・短所等)をフランス語で準備し、鏡に向かって笑顔で何度も練習。
 
他の応募者と差別化するために、こちらから投げ掛ける質問をこれでもかというほど用意しました。的を得た質問をして、相手にたっぷり話してもらい、気分を良くさせるという戦略です。
 
フランス人との会話を操ることで、2次面接も乗り切り、その数時間後に電車の中で、採用を知らせる留守電に気付いた時は、天にも昇る気持ちでした。
 
その後、地獄を見ましたが、「急募」とはそういうものです。でも、働きながら、通訳・翻訳の学校にも通わせてもらい、四技能を磨くこともできたので今では感謝しています。

 

オフィスで偶然、目にした書類にも、「会話力は他の候補者に劣るものの、質問内容が良し」と書かれていました。口下手でも、ペラペラでなくても、チャンスを掴めば、こちらのもの。

 

大人になってからの試験、旅行、面接。当日の朝、「なぜ、こんな面倒なことを」と後悔が頭をよぎるのですが、人生を前に進める刺激材であるのも確かです。

 

引継ノートの一部と就職活動用のファイル。ようやく処分できそうです。

 

もう面接を受けることはないと思っていたら、最近、気付きました。外国人に日本語の個人レッスンを行うというのは、顔合わせのたびに「面接」を受けるようなもの。

 

どうやら面接から逃れられない運命のようです。口下手の挑戦はまだまだ続きます。