息子が赤ん坊だった頃

 

公園を歩けば、面識のない人から

 

と言われ、悪意がないだけに返答に困りました。

 

地下鉄に乗れば、視線がベビーカーの赤ん坊に注がれる。ここまでは、よくある話です。

 

少し違うのは、その視線が、そばに立つ私の顔へと移る。まぁ、これも許容範囲です。

 

息子と私を代わる代わる、二度見、三度見される。ここまでくると、睨み返します。

 

大阪のおばちゃん、言葉も視線も包み隠さないんだから。そこが、好きでもあるのですが。

 

習い事の送迎をしていた頃の話。あくまでも笑い話のつもりです。

 

ある日、息子と地下鉄に乗り込むと、空いていたのは通路を挟んで向かい合った二席だけ。

 

別々に腰を下ろすと同時に、私の隣のおばちゃんが

 

えっ、これ、あんたの子?

 

(はい)

 

全然、似てへんやん

 

ほんま、似てへんわ

 

普段なら立ったままの二駅。その日は、体調が悪く、座ってしまったのを後悔しました。

 

とりあえず、話を終わらせようと

 

「ハーフなんです」と、普段あまり口にしない言葉を使ったのが、裏目に出て

 

ハーフか。ダンナさん、どこの人?

 

(フランスです)

 

フランス。ええの捕まえたやんか。

 

大阪人といっても、十人十色です。

 

周りの乗客の同情を感じながら、下を向いたまま、駅に到着するのを待ったのでした。

 

その晩、急性胃腸炎と判り、真夜中、独りでバケツに顔を突っ込んだ、苦い思い出と共に鮮明に覚えています。

 

 

フランスでは、アジア人顔と言われる息子。少なくとも、おでこ、顔の輪郭、頭の形は、私そっくりです。

 

周りから大きいと言われる目も、まぶたの窪みは、白人に比べたら、ずっと浅いのです。

 

大阪に生まれて良かったなぁ。

 

と口にする、正真正銘の浪速っ子(なにわっ子)です。