10/31(火)ブエノスアイレス滞在15日目 バイクの強制保険の代理店へ損害賠償手続きを委任
バス会社との損害賠償交渉を打ち切って、翌日には次の訪問地へ行くつもりで朝から行動を起こした。
バイクをマドリッドからブエノスアイレスへ空輸した際の運送業者(アルゼンチン人)からブエノスアイレスにてバイク修理が必要な場合には頼りになるメカニックがいると紹介された男(セルヒオ)にパニアケースの応急修理できる業者を聞いた。
セルヒオは迷わずに同氏が知っているBMWディーラーへ行けとのことだった。そのアドバイスに従ってBMWディーラーを訪ねた。
部品が無いので応急修理はできないものの、交通事故で被害者になった場合の損害請求の手続きを教えてもらった。
簡単なことであるが、自分のバイクが加入している損害保険の会社から事故を起こした相手方の保険会社へ損害賠償の手続きをしてもらえばよいとのアドバイスだ。
そのアドバイスに従い約2週間前に加入したアリアンツ保険を訪問した。そこで事故を起こしたバス会社を正式に告発する手続きをとった。アリアンツ保険は賠償手続きを行う代理店に当方を電話でつなぐと、そこは強制保険の加入の申し込み手続きをしたスペーサー保険代理店(Speiser Seguros)だった。
スペーサー保険代理店でオーナーのスペーサー氏へ手続きに必要な事故の被害写真、バイクの登録証書等のデータを渡してバス会社への損害賠償手続きを代行してもらうことにした。同保険代理店の手数料は無いとのことだ。
オーナーのスペーサー氏一族はドイツ系の移民だ。ドイツ本国でなく旧ユーゴスラビアのセルビアに住んでいたという。同氏からは当方のツーリングルート上のアルゼンチンの観光スポットを教えてもらう。
明日にはブエノスアイレスを発ちツーリングを再開できると思うと、すっきりした気持ちになれた。
11/1(水)ブエノスアイレスからエントレ・リオス州コンコルディア市へ移動 420km
南米大陸で本格的なツーリングのはじめだ。3日間かけてブエノスアイレスの北約1,300kmに位置するイグアスの滝を目指してブエノスアイレスを発つ。イグナスの滝はブラジルとの国境にある。
渋滞のブエノスアイレス市内の道路を抜け出すのに小一時間ほどかかるが、その後は高速道路の車の流れは順調だ。
ブエノスアイレスを抜けると水量が多いウルグアイ川に架かる橋を渡る。2千~3千トンクラスの大きな貨物船が川を下っている。岸辺は湿地帯となっていかにも南米的な感じだ。
高速道路の舗装は悪くはない。大型貨物自動車は路肩側の車線を走ることになっている。比較的ルールを守っている。
イタリアの高速道路のようにジグザク運転で抜き去る車は見かけない。ブエノスアイレス郊外の6車線の高速道路は路肩側2車線が大型貨物自動車(乗用車も通行可能)。路肩から三番目が大型バス。残る3車線が乗用車専用となる。車線毎に最高速度が時速90km、100km、110km、120km、130kmと規制されているのが面白い。大型貨物自動車は最高速度は時速90kmだ。
コンコルディア市へはウルグアイとの国境となるウルグアイ川に並行した高速道路を北へと進む。
川沿いに点在する民家は高床式だ。おそらく大雨がふれば川が氾濫するのだろう。高速道路も土を盛った場所に作られている。洪水対策だろう。洪水が起きやすためか、道路両サイドはシベリアで見たような見渡す限りの荒地が続く。
(ブエノスアイレスからエントレ・リオス州のコンコルディア市へ行く途中の高速道路沿いの荒地)
道路サイドには掘っ立て小屋のようなバラックも建っている。木と木の間に洗濯物を干したロープが張ってなる。人が住んでいる。電気は通っていないようだ。どのような生活しているのだろうかと気になる。
アルゼンチンはちょうど春から初夏のような暖かい日に変わる陽気だ。道路脇に菜の花が咲いている場所もある。高速道路沿いは耕作地が少ない。小麦が作付けされている畑を少し見た程度で、道路沿い牧草地か荒地のままだ。
ブエノスアイレス首都高速道路はオートバイでも有料だったが、北上するルート12号と14号の高速道は乗用車や貨物自動車は有料だが、オートバイは無料だ。有り難い。
(ブエノスアイレスから近いZarate市の高速道路料金所)
(道路沿いの牧場)
コンコルディア市に17:00前に到着。緯度が比較的南のためか日没は19:00頃と比較的に早い。地球の歩き方には紹介されていない人口15万人強の地方都市だ。
日が落ちてから市内中心部を散歩した。2~3階の建物が多いが、教会等の歴史的建造物はライトアップされている。日本では地方都市の商店街がシャッター通り(商店が廃業してシャッターが下ろされている寂れた商店街)となっているが、この町ではそのようになっていない。
(コンコルディア市の見かけた馬が引く荷車)
(コンコルディア市の夜の商店街)
(コンコルディア市中心部)
(投宿したHotel Federico I)
宿泊ホテルはHotel Federico I 一泊680ペソ(約4800円)
11/2(木)エントレリオス州・コンコルディア市~コリエンテス州・サントトメ 433km
バイクの前照灯が点灯しない。計器盤上にランプに異常ありの警報が出ている。今回のツーリング2日目のロシア極東で生じたトラブルと同一だ。
自ら予備のLED電球と取り換えた。しかし、前照灯は消えたままだ。偶然にLED電球を付けたソケットの金属部分が他の金属部分に接触すると前照灯が点灯した。
ロシアで問題が生じた時も原因は不明で地元のオートバイ販売店のメカニックがいろいろ触っているうちに問題が解決した。
部品の接触不良だ。約30分~40分で問題が解決した。次回同様なことが起きたらすぐに直せると自信がつく。
しかし、今度はスマホのカーナビアプリが急に消えてしまった。原因は不明。またダウンロードしなおさなければと思っている矢先に、今度はホテルのWiFiが繋がらない。
ホテルがWiFiを契約している通信業者のシステムトラブルだという。
次から次へとトラブルが生じる。本来は8時ごろにはホテルを出発するつもりでいたが、問題が解決して出発できたのは11時近くになっていた。
本日の目的地はコンコルディア市の北部約400km先にあるサント・トメ市だ。まだイグアスの滝まで900km近くあるので、サント・トメ市は宿泊するために寄るだけだ。
コンコルディア市の郊外にでると異様な光景を目にした。道路沿いに数多くの掘っ立て小屋が建っている。人が住んでいる。劣悪な環境だ。
発展途上国のスラム街を見ているようでショックキングな光景だ。車の代わりに馬の荷車を使っている人もいる。住人の多くは白人では無い。近隣諸国からの出稼ぎで住みついたかもしれないが、先週会った証券取引所のエコノミストの言葉が頭を遮った。
当方が<現政権は財政立て直しのため補助金を削って市場経済主義を推し進めているのは良いことだろう>と言った際に、同エコノミストは貧困者にとって負担が大きすぎるので補助金削減は賛成できないと言っていた。
その時はピンとこなかったが、数多くの貧困層が住む地域を見た後では、同エコノミストの考えもうなずける。
ブエノスアイレスから北のウルグアイ川沿いは強い風が年中吹いているという。昨日も強い風で高速走行がしんどかったが、今日は昨日以上に強い横風だ。横風のためバイクが斜めになっている。
強風でヘルメットも横に押されて首に力が入る。こんな状態で時速100kmで直線に走行するのは難しい。横に1mぐらいはすぐに動いてしまう。
(コンコルディア郊外公道沿いのみすぼらしい家)
(コンコルディア郊外国道沿いの小さな民家群)
(一年中強風にさらされて樹木は斜めになってしまっている)
(地平線まで続く牧草地)
(道路沿いのサイロ。 ライスセンターとの表示があった)
今日は当方のような大型バイクに跨って走行するライダーを多く見かける。北上しているため気温がどんどん上がり昼間は32度と夏の気温だ。しかも日本のように湿度があるので蒸し暑く感じる。
途中から幹線道路を外れ対面車線の一般国道にはいる。一般国道では乗用車の最高速度は110kmに規制されているが、高速道路と変わらない。
山や丘が無いため、日渡す限りが草原だ。ロシアの草原よりも見通しを遮るものはない感じだ。
ところどころに牛が放牧されているほか民家や集落は無い場所だ。
サント・トメにはいると町の様子はコンコルディア市より粗末な感じの建物が目につく。湿度が多いため建物が汚れたり、朽ち易いのは分かるが、数十年メインテナンスしていない外観だ。
度重なる経済危機で建物をメインテナンスどころではなかったのだろう。40年~50年間ぐらい使われていると思われるアメリカ製のボロボロになった車も見かける。
アルゼンチンの地方都市とブエノスアイレスの経済格差は日本の大都市と地方の差どころではない。
(サント・トメ入口)
(投宿したホテル。 メインテナンスが行き届かなく設備は老朽化していた)
宿泊ホテル ACA Hotel Santo Tome Corrientes 一泊752ペソ(約5,300円)
11/3(金)サント・トメ~ミッシオネス州・プエスト・イグアス 425km
前夜は雷を伴った嵐だった。そのため1時間ぐらいの停電もあった。本日の天気予報ではこれから向かう先は雨だ。
久しぶりに雨具を着てホテルを出発する。このあたりの土地は赤土だ。雨が降ると赤茶の水たまりができ、道路ですれちがうトラックや前を走る車がタイヤでかき上げる水しぶきで、バイク雨具が赤茶色に染まる。
大型トラックが横転している。なんでこんな場所で横転するのかという直線道路だ。しばらく走ると今度は緩やかなカーブでトレーラーが道路の脇で真っ逆さまになっている。高速でカーブを曲がる時にスリップしたのであろう。転覆したトレーラーのタイヤの溝は赤土がぎっしり埋まっているので、タイヤのグリップが効かなかったのだろう。
(雨天で逆さになった大型トレーラー)
(有料道路料金所ではオートバイは無料のため一番右端の路肩を抜ける)
(亜熱帯の森林の中を通る起伏が多い国道)
パラグアイとの国境の町ポサーダス(Posadas)を過ぎ、パラグアイとの国境となるラプラタ川と並行するような道路を約250km北上すればイグアスの滝がある町はプエルト・アグアスに着く。
この道路は、今までの平原の一直線の道路とは異なり、亜熱帯の木々が茂る森林地帯を通る。今までより交通量も多い。
コスタ・リカと言う小さな町でガソリンスタンドの給油した際、ガソリンスタンド横の喫茶レストランを経営する年配のオーナーから<どこから来たか>と声をかけられてた。年配のオーナーはドイツ系3世だった。
ドイツ系のオーナーはおじいさんの代に移住してきたと言う。北アメリカに移住していれば経済的な繁栄を享受できたと思うが、移住先がたまたま南米アルゼンチンだったため成功しているようには見えない。ドイツ語は話す。ドイツには行ったことが無いが、是非行ってみたと言う。
当方が<日本からだ>というとオーナーは<この町の近辺に日本からの移住者が多い地区があり、太鼓を叩いて日本式の祭りもやる>と教えてくれる。
学生時代に戦前ブラジルへの日系移民を題材にした石川達三の小説<そうぼう>を読んだことがあった。悲壮な内容だったと記憶する。ブエノスアイレスから約1千キロ離れたこの地に移住してきた日系人たちも苦労が多かったと想像する。
(ドイツ系3世の喫茶店オーナーは各国の車のナンバープレートを壁に飾っている。日本の仮免許・練習中のプレートも)
(プエルト・イグアス市入口)
(プエルト・イグアス市中心部)
宿泊ホテルはPetit Hotel ICaraguata (一泊31.5米ドル=約3,500円)
11/4(土)イグアスの滝観光
朝から嵐のような風雨が目が覚めた。とても外出できる天候ではない。
ライディングブーツのファスナーの縫い目がほころびてきた。ブエノスアイレスでバスに追突された際にサイドケースの後ろに貼っていた反射板は取れたままだ。
外出で出来ない時は、ツーリング用品の手入れやメインテナンスを行うのに丁度よい。
ただ、ブエノスアイレスで予定外の延泊があったので、この地で予定以上の延泊することは本意でない。
考え直して小雨の中、路線バスに乗って約20km先にあるイグアスの滝公園へ観光に出かけることにした。
(路線バスでイグアスの滝へ行く途中)
イグアスの滝は世界最大級の瀑布だ。ユネスコの自然遺産に登録されている。公園にはテーマパークのように入場門があり、園内を走る小型のディーゼル機関車に乗って瀑布近くまで行く。(公園入場料500ペソ=約3,500円)
イグアスの滝(Cataratas de Iguazu)は数キロの川幅に無数の滝があるが、最大の目玉は<悪魔の喉=Garganta de Diablo>と呼ばれる巨大瀑布だ。
川の水面上に作った建設現場の足場のような狭い橋上を歩き瀑布のところまで行ける。滝下(滝壺)は水しぶきで見えない。足元直下で川の水が数十メートル下の滝壺に轟音と共に落ちている。川幅が広いので、滝に落ちる水量は半端ではない。怖くて泣きだす子供もいた。
滝が無数にあるため、公園には複数の散歩道がある。観光ガイドブックでよく見る滝幅が広い場所、滝下から滝を見上げる場所、乗船して滝壺近くまで行くコース等最低でも半日かかる観光スポットだ。
ここでも多数の中国人団体ツアーの人たちが多い。
(イグアスの滝公園入口ゲート)
(イグアスの滝公園の地図。一番左の滝が悪魔の喉とよばれる大瀑布だ)
(イグアスの滝 悪魔の喉と呼ばれる大瀑布)
(悪魔の喉 大瀑布)
(悪魔の喉の横に広がる幅広な滝群)
(幅広の滝群の滝壺。観光ボートが写真上部に小さく見える)
(公園内は亜熱帯の樹林)