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エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

某シネコンにて『DOG×POLICE 純白の絆』を鑑賞。

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【出演】
市原隼人、戸田恵梨香、村上淳、カンニング竹山、阿部進之助、矢島健一、堀部圭亮、小林且弥、松金よね子、小柳心、本田博太郎、相島一之、きたろう、伊武雅刀、松重豊、時任三郎


【監督】
七高剛




“それは、最高の装備か、真実の絆か”


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有名企業やショッピングモールなどを狙った連続爆破事件が起こる中、現場で野次馬の整理を担当していた早川勇作は、ひとりの不審な男を目撃する。

‘もしや爆破犯か?’

慌てて逃げる男を単独で追いかけ……激しい格闘の末に逮捕するが……その男は爆破事件には何の関係もない‘クスリの密売人’だった。


そんな時、彼は偶然にも一匹の犬の命を救うこととなる。
アルビノとして、この世に生を受けた真っ白な犬を。


抜群の検挙率を誇るが、協調性に欠け、単独行動も厭わず……人一倍強い正義感を持ち、真っ直ぐな性格。刑事だった父を尊敬し、自分も刑事を志望する若い警察官の勇作。


いよいよ念願の刑事に昇進かと心弾ませていたが……彼に下った辞令は意に反して‘警視庁警備部警備二課装備第四係’という部署への配属だった。


「警備犬?」

そこは精鋭の犬の訓練士‘ハンドラー’と13頭の警備犬がいる警備犬の訓練所だった。

警備犬とは、人を救い、人を制圧もする存在。

災害時の人命救助に加えて、爆発物などの捜索から犯人の制圧といったテロ対策としての警備出動という任務も負っている……が、警視庁に警備犬が導入されて30年、未だに一度も警備出動の実績は無かった。

ありえない人事異動に仕事への意欲を失う勇作。


そんな勇作を迎える‘装備第四係’のメンバーは……
心優しき係長の向井、SAT出身の竹清、オタクだが情報収集の達人の西村、逮捕術全国3位の永井、そして紅一点で勇作の教育係になる水野夏希。


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忸怩たる思いを抱く勇作は、夏希に言い放つ。

「俺たちは警察官じゃない!税金で養われてる‘犬屋’って呼ばれてんだぞ!」


程なくして勇作は、シロと出会う。それは勇作が命を救ったあの犬だった。

勇作同様、シロもまた優秀な警察犬の血を引い引いていながら、劣性遺伝で生まれたために、警備犬への道を閉ざされてしまっていた。

「今日からシロがお前のバディだ」


勇作は、そんなシロに自分を重ね合わせ、警備犬へと育成しようと決意する。


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勇作の情熱と愛情により、厳しい訓練にも耐えてその才能を徐々に開花させていくシロ。
いつしか二人の間には、言葉を超えた親和と絆が芽生えていく。


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一方、警視庁を震撼させる連続爆破事件は頻発し、四係への出動要請もくるが……。

勇作は厳しい現実を突きつけられる。

「警備犬は‘装備’にしか過ぎない。もしもの時は、人間の楯になることを要求される」
「装備?楯って……そんな」


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哀しき宿命を背負う警備犬のシロに、勇作は人の盾となるよう指示ができるだろうか?


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「お前はただの装備なんかじゃない……俺のバディだ!」


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警備犬の訓練士が、ハンディキャップをもつ犬と共に大事件の解決に挑む熱血アクション。


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上層部からは「犬屋」と呼ばれ、「そんなに犬が好きならペットショップにでも勤めてろ!」とまで言われてしまう四係。

そんな彼らが難事件解決に向けて立ち上がる!

「いいか、犬屋の意地を見せるぞ!行くぞ!」



冒頭のショッピングモールのド派手な爆破事件にはじまり、容疑者らしき男を追跡し、大格闘をする勇作。

掴みはOK的なオープニングだったのですが……物語が進むにつれて尻すぼみ気味になった感も?

エンタメ作品だから細かいことはスルーして観ればいいのでしょうが、どうしても粗やご都合主義な展開が気になってしまった。

ドラマチックな流れにしたいのは分かるけれど、それがリアリティ無視のツッコミどころ満載の内容になっちゃってます。


爆破犯もいかにも的なステレオタイプ。
異常者っぽい雰囲気を前面に出すためか、純白のブリーフ一丁でパソコンの前に座る、突如ケラケラ笑い出す、ヘラヘラしながら逃走……など、何とも分かりやすいベタキャラ。

それにしても、まるで小学生が穿くような純白のブリーフ姿は、意味があったのか?
あ、もしかしてこの映画のサブタイトルである‘純白の絆’に引っ掛けていたのかも……て、そんな訳はない(笑)。



‘日本一の熱血俳優’市原隼人!
この作品でも相変わらず熱い、熱い、熱い!

しかも襲い掛かる火の海に飲み込まれるなど、文字通り熱い!?
でも火よりも熱い男は、そんなのへっちゃらなのだ!

市原隼人は歳を重ねるごとに、ますますカッコよく、いい役者になってきていますね。


ヒロイン役の戸田恵梨香は、クライマックスに見せ場は用意されているものの、トータル的には何となく地味めな扱い?


それからフィギュアオタク役のカンニング竹山が、なにげにいい味を出してました。(この人、他の作品でもそうだったけど、ちょっと気の弱い役がメチャ似合う)


あと時任三郎と松重豊のツーショットは、二人とも190センチ近い長身だけに異様な迫力あせるあせる


『監督失格』


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“未だに乗り気になれない 何故なのか?”




2005年、35歳の誕生日前日に自宅で急逝した林由美香。
元AVアイドル、その後はピンク映画で活躍し、絶大な人気を誇っていた女優である。


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林由美香をめぐる14年間に及ぶ美しくも壮絶な愛の記録と、大切な人の「喪失」、それに向き合う人々の「再生」を描いた人間讃歌でもあるドキュメンタリー。



平野勝之と林由美香との出会いは、平野のAV監督デビュー作である『由美香の発情期』。

当時、すでに大人気AV女優だった由美香に対し、平野は全くのド新人。由美香は完全に平野を見下していたらしい。

その際、由美香はこう言ったという。
「撮ってもいいよ」


やがて多数のAV作品の撮影を通じてお互い切っても切れない存在になり、自然と恋愛関係へと突入していく。


自転車旅行の記録を撮影中、すべてをさらけ出そうとする由美香は、二人の痴話喧嘩を撮らなかった平野に「監督失格」を言い渡す。
それはお互い愛しあい、信頼しあっているからこそ出た言葉なのかもしれない。

また女優としては「最高に面白い画を提供したのに、なんで撮らなかったのよ」というもどかしさもあったのかも?


しかし監督としての立場と、感情を持った一人の男としての立場の狭間で平野の気持ちは揺れ動く。

「監督失格かもしれないけど、撮れなかった」


一方の由美香はとにかく自由奔放。
カメラの前でも躊躇なく泣き、怒り、笑い、ふてくされもする。
ベロンベロンに酔っ払った末に失禁し、平気で裸にもなる。
気持ちいいくらいの潔さだ。

彼女曰く、
「面白いことがしたいだけ」


由美香が自分について語るシーンも興味深い。

「両親が離婚してから、16で家を出て独り暮らし始めて、お金ないから60万で処女を売ったけど騙されて20万しか貰えなくて……それからどこかの社長と月60万で契約したけど逃げられちゃって……で、ヤクザのおじさんに頼んでそいつ捕まえてもらって金ふんだくってやってさ……それから六本木でホステスしてる時に事務所からスカウトされたの。最初はグラビアだけだったんだけど、そのうちAVに誘われてさ、二ヶ月悩んで……出ることに決めたんだ。もう私の人生、‘ガンガンエロ’で生きてきたから。女優としてはさ、人生を切り売りしてきたよね」

短いながら濃密で壮絶な人生を歩んできた由美香だが、その反面……
「結婚をして、子どもも欲しいよ。幸せな家庭に憧れる。それが夢」
と普通の女の子らしい部分を垣間見せたりもする。



この映画の後半は、あまりにも衝撃的な場面となる!

※完全ネタバレになるので、これから映画を観る予定の方は、絶対に読まないでください。





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前述したように由美香不在の翌日、再びインタビュー撮影のため彼女の自宅を訪れる平野。(カメラ助手として女性弟子が帯同)

平野のいつものスタイルで、マンションに入る直前からカメラを回し始める。

チャイムを押すが、今日も全く反応なし。
平野は郵便受けの隙間から中の様子を窺う。

「犬の声がする。何か、中にいるっぽいな、由美香いるよ、これ、きっと」

平野は由美香ママに電話をして事情を話す。
程なくして合い鍵を持っていた由美香ママが駆け付けて来る。

「昨日から連絡取れないからさ、私もおかしいなとは思ってたのよ。何か平野君、感じ変わったわね~太った?」
「そうですか?ハハハ」

二人は嫌な不安を覚えつつも、まだ冗談混じりの会話をする余裕があったが……。

ドアを開けた瞬間、異様な気配に気付く。

「何か臭う!臭いよ!」

異変を察した由美香ママは、玄関先から動くことができず、
「ダメ!怖くて入れない!平野君、見てきて」

平野が由美香の部屋に足を踏み入れるや、
「ウワッ、嘘だろ!ヤバイ、ヤバイ!もうダメだよ、これ!臭いも凄い」
との声がし……慌てて出て来て、
「警察、警察!救急車もう遅い。警察!」

(由美香の部屋にまではカメラは入らない。平野の声だけしか聞こえてこない。故に観ている側は、嫌でも想像力を掻き立てられることになる)


それを聞いた由美香ママは、
「えー!何があったのよ!何したのよ、由美!」
と泣き崩れる。

「ここの番地分かる?あ、隣の部屋の人に聞いてきて!早く!」

助手は、カメラを床に置いて直ぐさま出て行くが……スイッチはオンになったままなので、その後の一部始終を無人のカメラが撮影し続ける!

ただただ右往左往する平野。
知り合いに電話をして「由美が大変なことになっちゃった……」と、床に突っ伏して号泣する由美香ママ。

その由美香ママに、大はしゃぎでまとわり付く犬の姿が切ない。

また突っ伏した体勢になったため、カメラのベストアングルに収まってしまう形となってしまったのは何とも皮肉だ。


平野は警察に電話をして事情を話すがなかなか埒が明かない。

「ですから、俯せで倒れてるんです。もう完全にダメみたいで……臭いも凄いんですよ。え?ですから……」

すると由美香ママは、いきなり電話口に向かってこう怒鳴りつける。

「ガタガタ言ってないで早く来いよ!こっちは大変なことになってんだよ!」

やがて、警察が到着し……平野が事情説明をしているところでカメラは止まる。


しばらくして、知らせを聞いて慌てて駆け付けてくるのが、これまた由美香の元恋人でAV監督のカンパニー松尾である。
彼は由美香がまるで荷物のように運び出されていく現場を目撃してしまい、激しいショックを受けて号泣。

「死んじゃった……由美香が死んじゃったよ……」

そこに急に降ってくる雨……。


林由美香、享年34歳。
死因は、酒と睡眠薬を飲み過ぎたことによる事故死。
35歳になる2時間前の死であった。


由美香の告別式には、千人以上もの人が参列し、別れを惜しむ。
そして、棺をかつぐのは……平野、松尾ら由美香の‘かつての男たち’つまり、元恋人たちだった……。


奇しくも由美香の死体の第一発見者になった平野だが、彼は由美香の最期を撮らない、撮れなかった。

「天国からだか地獄からだか分かんないけど、彼女はきっとこう言うでしょうね。‘私の最期の衝撃的な姿を提供したのに、何で撮らないのよ。監督失格だね’って」


そんな平野は由美香の死後、新聞や週刊誌から思わぬバッシングを受ける!

‘何故、死体の第一発見者がカメラを持っていたのか?’
‘本当は事故ではなく事件ではないのか?’
‘平野は、由美香の死に関係しているのではないのか?’

あることないこと、面白おかしく憶測記事を書かれてしまう。


そんな中、由美香ママと平野の間で確執が起きる!

彼女も平野の行動に疑惑を抱き、こう感じていたのである。

『何故、ここにカメラがあるのか?』


遂には弁護士を通しての話し合いが行われ、‘あの映像’は封印するという念書が交わされる。
つまり二度と人目には触れることのない幻の映像となったのだ。


ところが、時を重ねるうちに平野と由美香ママの険悪だった関係は次第に修復されていく。
電話やメールで相談しあう仲になっていた。


そんなある時、由美香ママはポツリと……
「平野君、あの映像、使っていいよ」
と信じられない言葉を口にする。

「由美は平野君にまだ付きまとってるんだよ。あの時、平野君がカメラを持っていたのは偶然じゃなく、由美が導いたのかもしれないね」


平野はAV監督デビュー作で由美香に「撮っていいよ」と言われ、今度は由美香ママから「使っていいよ」と言われた。


こうしてその言葉がキッカケとなり、由美香の死という現実に直面し喪失感に苦しんでいた平野は……2010年、再びカメラを手に取り、由美香と向き合おうとする。


それを後押しし、プロデュースを買って出たのが映画監督の庵野秀明。
彼は映画製作で悩み苦しんでいた時期に『由美香』を観て、心が癒されたのだという。
「林由美香の映画を絶対に撮るべきだ」と平野に進言したのだ。


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『監督失格』の撮影はスタートし、平野は由美香ママへのインタビューも敢行。

「もう5年になるのね。あの時は、本当に辛かったわよ。遺影に向かって‘何でよ!何があったのよ!由美!’なんて叫んだりもしてね」


ところが、ちょっとしたアクシデントが勃発。
平野のミスで音が録れておらず、再度インタビューをお願いする羽目になってしまう。

「えー、音が録れてなかったの?何やってんのよ、あんた。監督でしょ(笑)。そんなんじゃ監督失格だね」

なんと由美香にだけでなく、ママにまで「監督失格」と言い渡される平野。
(ママは何気なく言ったのだろうが、この時点では由美香も同じ言葉を発していたことはママは知らない)


過去の映像の再編集、新たな撮影をするうちに、平野はやっと気付く。

「由美香が俺に付きまとっていたんじゃない。俺が由美香に付きまとっていたんだ」


彼は彼なりの方法で、由美香を送ることにする。

ギックリ腰の痛みに耐えつつ、カメラに向かって声を搾り出す。

「これから由美香の葬式をします」


深夜の街、自転車に乗った平野は由美香への思いを叫びながら……号泣する自分にレンズを向ける!
由美香との過去に決着をつけるために。

「逝けー!逝っちゃってくれー!早く逝っちまえ!」


エンディング曲、矢野顕子の「しあわせなバカタレ」が流れて、平野の壮絶な姿とともに映画は幕を閉じる。
(まさに平野監督は‘しあわせなバカタレ’、愛すべきバカタレだ!)



過去の記録と新たに撮影した映像とを再構成し、平野監督と林由美香との14年に渡る愛の軌跡が綴られてゆく。

愛するひとの死と向き合う平野監督の姿が胸に突き刺さり、ラストシーンでは観ている側も号泣必至!


身近な人との出会いと別れ、そしてそこからの再生をテーマに、この映画は平野勝之でしか撮り得ない映像を映し出し‘女優&ひとりの女性としての林由美香’の核心に迫って突き進む。


スクリーンと対峙しているうちに、いつしか平野監督の喪失感が伝染すると同時に感情移入し、同化してしまった。

平野監督と林由美香の生活に割り込み、二人の生き様を体感し、ショッキングな死を見届け、最後は葬式に参列したような気分にすらなる。


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平野監督にとっては‘過去の喪失’と真っ向から向き合う作業となっただけに「作るのは本当にきつかった」らしい。

また『由美香』を再編集した理由を「絶対に外せない要素だった」と発言。
『由美香』を観ている者にとっては、自転車旅行シーンはちょっと長すぎるのでは……と感じるかもですが、監督の言うようにこれがあったからこそ、後のシーンが生きています。


ところで、平野監督は由美香の死の場面を撮るべきだったのか?
撮らなくて正解だったのか?
(常識的には撮るなどとは有り得ない話かもしれないが)

ただ由美香自身は、撮ってほしかったと思って死んでいったのではないか?
不謹慎を承知で言えば、やはり彼女がどんな死に方をしたかを見せるべきだったのではないだろうか?

もしくは、こんな風にも考えられる?
由美香は敢えて酒と睡眠薬を多量に飲み、自ら死を選んだ。
そしてその場面を平野監督に撮らせようとした。

「凄いでしょ、平野さん。最高の画だよ!これ撮らないと本当に監督失格だよ」




長々と感想を書いてきましたが、こんなんじゃとてもとてもこの映画の凄さは伝わらないです。
とにかく観てください……と言いたい!
(賛否両論ある内容だし、おもいっきり嫌悪感を感じる方もいるかもしれないけれど)

できれば『由美香』と松江監督の『あんにょん由美香』(これにも自転車旅行のシーンが収録)も併せて観れば完璧です!


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『監督失格』は、ドキュメンタリー映画史上に残る大傑作だビックリマークビックリマークビックリマーク


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ちなみに『監督失格』上映終了後、平野監督の舞台挨拶があり、興味深い話を聞くこともできました。

その後、出口で観客ひとりひとりを見送っていた監督に握手をして頂き、少しお話もさせてもらい感激。

エキセントリックなイメージとは違って、こちらが恐縮してしまうくらい腰が低い方で、とても丁寧に答えて下さり感謝しています。

「ありがとうございました」と深々と頭を下げて観客を見送る姿も印象に残りました。



TOHOシネマズにて『監督失格』を鑑賞。


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【監督】
平野勝之




“『何故、ここにカメラがあるのか?』”




1996年、夏。

映画&AV監督の平野勝之は、当時恋人だったAV&映画女優の林由美香とともに、東京から北海道へと自転車の旅に挑戦。


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新宿を出発し、目的地は北海道の礼文島沖に浮かぶ無人島のトド島まで、走行距離1,052km、41日間にも及ぶ行程となる。

「自転車旅行に挑戦すると言ったら、彼女は‘私も行く’と言ってくれた。嬉しかった」


しかし、この二人……恋愛関係にはあるが、平野は妻帯者。
つまり、これは不倫旅行なのである。


日焼け防止も万全に意気揚々とペダルを漕ぐ由美香だったが、運動経験ゼロの彼女は初日から早くもダウンして弱音を吐く。


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「疲れた……疲れたよ」
「ゆっくりでいいからさ、のんびり行こうよ」


急な坂道を登り、交通量の多い道、はたまた田舎道をひたすら走り……テントを張って野宿と、苛酷すぎる旅。


こうして旅の一部始終をカメラで記録することにより、平野は由美香の本質に迫ろうとする!


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最初の1週間は、あまりの辛さに毎日のように泣き続けていた由美香。

「帰りたいよ……もう帰りたい」
「帰る?」
「帰らない!最後まで走る」


時には東京の母親(由美香ママ)に泣きながら電話をして慰めてもらう。

「ママ、疲れたよ、辛いよぉ……帰りたいよぉ……あ、メロン食べた?送ったやつ。早く食べた方がいいってお店の人が言ってたよ……ああ、疲れたよぉ。でもママの声を聞いたら元気でた!頑張るよ!」


ちなみに由美香ママは、都内では有名なラーメン屋のチェーン店を手広く経営する女社長。
見た目はほとんど男で(?)怖そうで豪快な雰囲気だが、実は優しい一面もある女性だ。


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「由美には早く結婚してほしいのよ。てっきり平野君と一緒になるのかと思ってたのに」

そんな由美香ママに初めて会った際の平野の第一印象は……‘パパだと思ったら、ママだった’。


自転車旅行は、様々なアクシデントやトラブル(酔っ払って床におしっこをしてしまったり……由美香はそのことは全く記憶にないのだが)数々の人々との出会いを通じて進んでいく。

途中で出会った青年は、
「3年間、自転車で放浪の旅をしている。でも近いうちに結婚するから、今回が最後の旅です」

それを聞いた由美香は、
「彼女がかわいそう。そんな彼氏、私は絶対に無理だね。だってさ、3年もどこにいるか分からなくて会えないんだよ。淋しくて無理!いつもそばにいてくれないとダメだもん」

徒歩や竹馬(!)で旅をしている人もいると聞き、これにはさすがの二人も唖然。


そんな時、二人の間には葛藤が生じ始める。

そして……遂には喧嘩にまで発展!
だが、平野はそのシーンは撮影していなかった。

「なんで撮らなかったの?」
と不満げな由美香。

「カメラ回すなんて、そんな余裕なかったし」
「ふ~ん……‘監督失格’だね」

ちなみに喧嘩の原因は、由美香の目の前で平野が妻に電話をかけていたから。

「フツー、有り得ないでしょ。許せないよ」


紆余曲折を経て、とうとう目的地であるトド島に到着!
二人は全裸になり記念撮影をするのだった。


ところが帰路の途中で、またまた大喧嘩となり、平野は思わず由美香の顔を張ってしまう!

ますます険悪になる二人だったが……先に折れたのはやはり平野の方だった。

「泣いて謝って許してもらいました」
「そこをなんで撮影しなかったの?」
「さすがに撮れないでしょ。俺、ボロボロ泣いてんだよ」

由美香はまたこの言葉を投げかける。

「‘監督失格’だね。失格だよ。最高の画なのにさ」


この自転車旅行記は、後にドキュメンタリー映画として劇場公開されることになるが……タイトルが『由美香』と決定したまさにその日に、平野は由美香からフラれてしまう。


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平野はそのショックを振り払うように再び北海道への自転車旅行記録の映画撮影を敢行。

それが次の恋人で女流監督と旅した『流れ者図鑑 さまよえる全ての人々へ』と、独りで厳冬の北海道を走った『白 THE WHITE』』であり、‘自転車三部作’と呼ばれることとなる。


しかし平野は、どうしても由美香を忘れられず……失意から映画を撮ることができなくなってしまう。

その間も由美香とは‘友人’としての関係は続いていた……電話やメールで相談に乗ってあげたりと。


そして時が経ち……由美香は34歳に。

再びメガホンを取る決心をした平野は‘AV監督の自分史’を映画にしようと製作に着手。

となると、やはり由美香は外せない。
二人は久しぶりの再会を果たし、平野はカメラを向ける。

「平野さん家に来るの、久しぶりだね。別れて以来だもんね。私ももう34だよ……もうすぐ5」

今は年下の彼氏と付き合っていると屈託なく話す由美香。

「可愛いんだよ~年下の男は。でも最近ねぇ、上手くいってないんだよね。風俗の女とデキちゃってさ」

由美香はひとりの男と1年以上続いたことがない。
その年下の彼氏とも、程なくして別れてしまう。


そんな時、平野は由美香と約束をする。
「誕生日の日に、自宅でインタビューの撮影をさせてほしい」

‘りょうかい!待ってるよん’
とメールが届き、当日に平野はカメラを持って自宅を訪れるが……チャイムを押しても無反応、電話も通じず、メールの返信もこない。


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「留守かな?でもこんなの初めてなんだよね。絶対に仕事をすっぽかすコじゃないし。でも一度、ヤクザに監禁されたことがあって……付き合ってたヤクザの男と揉めて。だから今回もちょっと心配なんだけど」


一抹の不安を抱えながらも由美香の自宅を後にし……翌日、再び足を運ぶ平野だったが……そこには衝撃的な事実が待ち受けていた!



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