『監督失格』【1】 | エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

TOHOシネマズにて『監督失格』を鑑賞。


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【監督】
平野勝之




“『何故、ここにカメラがあるのか?』”




1996年、夏。

映画&AV監督の平野勝之は、当時恋人だったAV&映画女優の林由美香とともに、東京から北海道へと自転車の旅に挑戦。


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新宿を出発し、目的地は北海道の礼文島沖に浮かぶ無人島のトド島まで、走行距離1,052km、41日間にも及ぶ行程となる。

「自転車旅行に挑戦すると言ったら、彼女は‘私も行く’と言ってくれた。嬉しかった」


しかし、この二人……恋愛関係にはあるが、平野は妻帯者。
つまり、これは不倫旅行なのである。


日焼け防止も万全に意気揚々とペダルを漕ぐ由美香だったが、運動経験ゼロの彼女は初日から早くもダウンして弱音を吐く。


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「疲れた……疲れたよ」
「ゆっくりでいいからさ、のんびり行こうよ」


急な坂道を登り、交通量の多い道、はたまた田舎道をひたすら走り……テントを張って野宿と、苛酷すぎる旅。


こうして旅の一部始終をカメラで記録することにより、平野は由美香の本質に迫ろうとする!


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最初の1週間は、あまりの辛さに毎日のように泣き続けていた由美香。

「帰りたいよ……もう帰りたい」
「帰る?」
「帰らない!最後まで走る」


時には東京の母親(由美香ママ)に泣きながら電話をして慰めてもらう。

「ママ、疲れたよ、辛いよぉ……帰りたいよぉ……あ、メロン食べた?送ったやつ。早く食べた方がいいってお店の人が言ってたよ……ああ、疲れたよぉ。でもママの声を聞いたら元気でた!頑張るよ!」


ちなみに由美香ママは、都内では有名なラーメン屋のチェーン店を手広く経営する女社長。
見た目はほとんど男で(?)怖そうで豪快な雰囲気だが、実は優しい一面もある女性だ。


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「由美には早く結婚してほしいのよ。てっきり平野君と一緒になるのかと思ってたのに」

そんな由美香ママに初めて会った際の平野の第一印象は……‘パパだと思ったら、ママだった’。


自転車旅行は、様々なアクシデントやトラブル(酔っ払って床におしっこをしてしまったり……由美香はそのことは全く記憶にないのだが)数々の人々との出会いを通じて進んでいく。

途中で出会った青年は、
「3年間、自転車で放浪の旅をしている。でも近いうちに結婚するから、今回が最後の旅です」

それを聞いた由美香は、
「彼女がかわいそう。そんな彼氏、私は絶対に無理だね。だってさ、3年もどこにいるか分からなくて会えないんだよ。淋しくて無理!いつもそばにいてくれないとダメだもん」

徒歩や竹馬(!)で旅をしている人もいると聞き、これにはさすがの二人も唖然。


そんな時、二人の間には葛藤が生じ始める。

そして……遂には喧嘩にまで発展!
だが、平野はそのシーンは撮影していなかった。

「なんで撮らなかったの?」
と不満げな由美香。

「カメラ回すなんて、そんな余裕なかったし」
「ふ~ん……‘監督失格’だね」

ちなみに喧嘩の原因は、由美香の目の前で平野が妻に電話をかけていたから。

「フツー、有り得ないでしょ。許せないよ」


紆余曲折を経て、とうとう目的地であるトド島に到着!
二人は全裸になり記念撮影をするのだった。


ところが帰路の途中で、またまた大喧嘩となり、平野は思わず由美香の顔を張ってしまう!

ますます険悪になる二人だったが……先に折れたのはやはり平野の方だった。

「泣いて謝って許してもらいました」
「そこをなんで撮影しなかったの?」
「さすがに撮れないでしょ。俺、ボロボロ泣いてんだよ」

由美香はまたこの言葉を投げかける。

「‘監督失格’だね。失格だよ。最高の画なのにさ」


この自転車旅行記は、後にドキュメンタリー映画として劇場公開されることになるが……タイトルが『由美香』と決定したまさにその日に、平野は由美香からフラれてしまう。


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平野はそのショックを振り払うように再び北海道への自転車旅行記録の映画撮影を敢行。

それが次の恋人で女流監督と旅した『流れ者図鑑 さまよえる全ての人々へ』と、独りで厳冬の北海道を走った『白 THE WHITE』』であり、‘自転車三部作’と呼ばれることとなる。


しかし平野は、どうしても由美香を忘れられず……失意から映画を撮ることができなくなってしまう。

その間も由美香とは‘友人’としての関係は続いていた……電話やメールで相談に乗ってあげたりと。


そして時が経ち……由美香は34歳に。

再びメガホンを取る決心をした平野は‘AV監督の自分史’を映画にしようと製作に着手。

となると、やはり由美香は外せない。
二人は久しぶりの再会を果たし、平野はカメラを向ける。

「平野さん家に来るの、久しぶりだね。別れて以来だもんね。私ももう34だよ……もうすぐ5」

今は年下の彼氏と付き合っていると屈託なく話す由美香。

「可愛いんだよ~年下の男は。でも最近ねぇ、上手くいってないんだよね。風俗の女とデキちゃってさ」

由美香はひとりの男と1年以上続いたことがない。
その年下の彼氏とも、程なくして別れてしまう。


そんな時、平野は由美香と約束をする。
「誕生日の日に、自宅でインタビューの撮影をさせてほしい」

‘りょうかい!待ってるよん’
とメールが届き、当日に平野はカメラを持って自宅を訪れるが……チャイムを押しても無反応、電話も通じず、メールの返信もこない。


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「留守かな?でもこんなの初めてなんだよね。絶対に仕事をすっぽかすコじゃないし。でも一度、ヤクザに監禁されたことがあって……付き合ってたヤクザの男と揉めて。だから今回もちょっと心配なんだけど」


一抹の不安を抱えながらも由美香の自宅を後にし……翌日、再び足を運ぶ平野だったが……そこには衝撃的な事実が待ち受けていた!



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