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エルドラド 「時をかける言魂」 『時かけ』と仲里依紗に魅せられて

ただの戯れ言?!またはエッセイのようなもの。
そしてボクは時をかける。

『SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム』


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【出演】
山田真歩、安藤サクラ、桜井ふみ、増田久美子、加藤真弓、駒木根隆介、水澤紳吾、岩松了


【監督・脚本】
入江悠




“うちらは歌う!明日は今日よりも輝く”




ヒップホップ・ファッションに身を包んだデブ&チビが田舎道を歩いている。

「ホントにこの道で合ってんのかよ?しっかし、何もねえじゃねえかよ、群馬!」

この二人こそ、サイタマノラッパー‘SHO-GUNG’のIKKUとTOMだ!

前作で病死した‘伝説の先輩’DJ TKDことタケダ先輩が、生前に繰り広げたという‘伝説のゲリラライブ’の聖地を探しに群馬を訪れたのである。

「サイタマから来たんだぜ。群馬でガツーンといわせてやろうぜ!」


一方、地元の群馬で実家のこんにゃく工場を手伝いながら退屈な日々を送るアユム。


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いつものようにバイクでこんにゃくを配達していたところに……偶然、通りかかったIKKUとTOMが道を尋ねる。


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「あのさ、タケダ先輩の聖地どこだか知ってる?」
「……!!」
「タケダ先輩って言ったって分かるわけないじゃん」
「まあ、そうか。ヒップホップやってる奴もいねえよな~こんなド田舎」
「失礼だよ」


ところが……アユムにとってタケダ先輩は‘憧れの伝説の人’だった!

高校時代、地元で行われたタケダ先輩のライヴを観て感化され、女子だけで結成されたラップチーム‘B-hack’の一員だったのだ。


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だが、たいして人気になることもなく、ヒップホップに夢中だった仲間たちも卒業後は散り散りになってしまい、やがてヒップホップ自体のブームも過ぎ去り……若かった彼女たちもいつしか大人になり、今はそれぞれが生活に悩みを抱える地味でモヤモヤとした日常を送っていた。


しかし、この日の出来事をきっかけにして昔の情熱が蘇ったアユムは……かつての仲間らと共に、一夜限りのライヴを行おうと思い立つ!


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かつての‘B-hack’のメンバー。

貧乏旅館の一人娘・ミッツーは、経営不振から借金に追われて母親が蒸発。
東京から戻ってきて借金返済に四苦八苦していた。

ヒモつきのソープ嬢・マミーは、健気に働いては中国人の恋人に貢いでいる。


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そんな二人をアユムは説得し、後輩のビヨンセとクドーも加えての‘B-hack’再結成と相成る。


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早速、彼女らはタケダ先輩の聖地である河原に足を運び、タケダ岩を前に活動再開を報告する……と、そこにひょっこり現れるIKKUとTOM。


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「やっと見つかったよ~ここかよ、タケダ先輩の聖地は」
「何だよ、おめえら」
「あ?俺らは‘SHO-GUNG’だよ!タケダ先輩の一番弟子だよ」
「あ?ふざけんな!タケダ先輩の一番弟子は、うちらなんだよ!」
「うるせーな。サイタマからはるばる来てんだよ、こっちは」
「サイタマ?車で30分じゃねえか!」

こうしてサイタマVSグンマの‘毒舌ラップバトル’が幕を開けるのだ。

「グンマは関東の水ガメだぞ」
「サイタマの方が東京に近いぞ」

そしてIKKUとTOMは、彼女たちが保有していた世界に一枚しかないというタケダ先輩のCDを強奪し、這う這うの体で逃走していくのだった。

「二度と群馬に来んな、バカヤロー!」


彼女たちは、再びラップの楽しさを思い出す。

「あれ、これでアタシの人生よかったんだっけ?」

様々な動機から再び集まった女子ラッパーたちの目標はひとつ。
自分たちがかつて見た夢のために、一晩かぎりのライヴをすること!これからの人生のために、もういちど歌うこと!


が、実際に活動をしようとすると20代後半の女子にはあまりにもたくさんの壁がたちはだかってくる。

仕事やら結婚やら家族やらお金やら……いろいろと現実的なことが目白押しだ。


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果たして、彼女たちはいくつもの壁を乗り越えて歌うことができるのか?


「アタシは歩む。アタシは歌う。明日は今日よりも輝く!」




『SR サイタマノラッパー』の続編で、群馬県を舞台に移し、かつてヒップホップに青春を捧げた女子ラップグループ再結成の顛末を描く熱い青春ドラマ。



前作の主人公たち、IKKUとTOMが‘伝説のラッパー’タケダ先輩の故郷である群馬を訪ねて来るところから物語は始まり、狂言回し的な役割を果たしている。


‘B-hack’のメンバーたちとのヒップホップ合戦を、入江監督お得意のワンシーンワンカット長回しで捉えたシーンは必見!

若者が抱く夢と現実のギャップをストレートにラップで表現する様は、心に響くと同時に観る側のボルテージも一気に高まっていく。



27歳にしてラップグループを復活させるアユムは、実家のこんにゃく工場を手伝う地味~な女子。
ルックスはパッとしないし、金なし、彼氏なし、夢もなしのないないづくし。

そしてミッツーは潰れかかって借金まみれの旅館の娘、マミーはヒモつきソープ嬢。
いずれも悶々として冴えない生活を送っている。

しかもライヴハウスもなきゃ、レコード店もない群馬の片田舎……でも「夢よ再び!」とヒップホップライブを企画しようするも、現実的な問題は山積み。

まずライヴを演るには金がかかる。(諸々で100万!)
彼女らはその資金を確保するために奮闘するのだ。

選挙カーのウグイス嬢では、ラップに乗せて候補者名を連呼したり(ちゃんと韻を踏んでいるあたりが可笑しい)アユムは親に内緒で、こんにゃくをソープランドに卸して小銭稼ぎをしたり。(こんにゃくプレイで使うらしいあせる

そんな時、彼女たちにライヴステージのオファーがくる!
「人前で歌えて、ギャラまで貰える!」

目一杯のオシャレをして意気揚々と現場に向かう5人だったが……用意されていた衣装は、なんと水着。

しかしギャラのためなら仕方ないと妥協し、プールサイドの簡易ステージで水着姿で歌い踊る‘B-hack’。
あまりにもミジメなステージに、ビヨンセとクドーは控室に戻ってから怒りが爆発!

「水着で歌ってどこがヒップホップなんだよ!もう付き合いきれない。後は3人で勝手にやれよ!」と脱退。

ミッツーは言う。
「‘キラリ未来輝く’なんて歌詞、もう恥ずかしくって歌えないよ……うちら、全然輝いてないし。今のアタシたちの姿を歌詞にしなきゃダメだよ」

3人は出直しを誓い合うが……やがてミッツーとマミーも群馬から姿を消してしまい、また独りぼっちになってしまうアユム。

「カッコイイ大人になってたはずなのに全然、ダメだった……」

結局、また何もない日常へと戻っていくアユムだったが、母親の三回忌の日……思わぬドラマが待っていたのだ!


三回忌の酒の席。
アユム、ミッツー、マミーに加えてIKKU、TOMまでが乱入してのラスト10分の壮絶なラップシーンは今回も圧巻!号泣必至!


ダサくてイタくて、とてつもなく愛しい、若者達の行き場のない思いが、これでもかとぶちまけられる。


前作も面白かったけど、続編もメチャメチャ面白い。

笑いあり、涙ありで~~輝いていた10代後半から今は20代後半の輝きを失ってしまった女子たちの再生物語がリアルに綴られていて、共感できる部分も多々あり。


男子のダメっぷりとはまた違った女子のダメっぷりもサイコーです。


主演の山田真歩が素晴らしい。
おかっぱ頭にメガネ姿がブスカワイくて、とてもキュート。

そして存在感抜群の安藤サクラが、これまたいいのだ!!


「♪シュッシュッシュッ うちらのハートは シュッシュッシュッ うちらハートのロイヤルストレートフラッシュ!♪」

観終えた後は、このメロディーが頭から離れなくなること間違いなし!



そして……サイタマノラッパーシリーズ第3弾~~次の舞台は栃木だ!
(第4弾は茨城で、北関東を席巻か!?)

『ステキな金縛り』


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三谷作品らしい楽しい枝葉のエピソードと遊び心が満載で、且つ次から次に登場する超豪華な大所帯の役者陣が繰り広げる抱腹絶倒の法廷劇。
まさにキャッチフレーズ通り‘笑えて泣ける’映画になっています。



三谷監督が敬愛する1950~60年代アメリカ映画のロマンチックコメディ風オープニングタイトルバックが洒落ていて、早くもワクワクさせられる。


冒頭で、この映画の軸となる殺人事件の様子が描かれ(その場所が時代がかった洋館というあたりもいい)いきなりあの人気女優が死ぬ!


次には主人公であるエミの自宅へと場面は変わる。

寝坊してドタバタと支度を始めるも、髪はボサボサで化粧っけはゼロで地味~~なスーツ姿。

その際、亡くなった父親の写真の隣にフランク・キャプラの『スミス都へ行く』のDVDが立てかけてあるのがなにげにチラリと映るのだが、この作品が後に重要な意味を成してくるのです。


それからは、ホラー、サスペンス、ハートフル、コメディ……と色んな要素がテンコ盛りのサービス精神満載のストーリーが展開されていき、最後まで全く飽きさせない。


とにかく登場人物たちが、みんな凄く魅力的!


主人公のエミ役の深津絵里の『悪人』とは180度違うコメディエンヌぶりはかなり笑えるし、クルクル変わる表情もとてもキュート。

法廷シーンでは地味なスーツで通すも、私服や部屋着はちょい派手で可愛いのだ!
ちなみに私服は伊勢丹で買っているみたいです(笑)。


そしてこの映画のもうひとりの主役が、西田敏行演じる落ち武者の幽霊・六兵衛さん。

最初はゾンビみたいなおどろおどろしい形相で登場するも、徐々に人間っぽい雰囲気になっていく変化が面白い。髪型を気にしたりしてね(笑)。

武士言葉で話していたかと思ったら突然、「~~じゃん!」なんて現代用語も使いこなすし、ファミレスでもフツーに「カルボナーラ」を注文……(ただ幽霊なので食べることは出来ず、匂いだけで食べたつもりになるんだけれど)と、421年前の人間とは思えないほど21世紀に馴染んでいる(笑)。

これは、客がつけっぱなしのテレビを年中観ているから、いつの間にか現代の情勢に詳しくなってしまったから……らしい(笑)。


エミのボス・速水役の阿部寛は、見事な(?)タップダンスを披露。(でもラストのタップダンスは、ちょっと切ない)

人生最期の時を迎えようとしているというのに、エミの頼みをちゃんと聞いてくれる律儀で心優しい人物!?


エミ、六兵衛と法廷で対峙する小佐野役の中井貴一も好演。
六兵衛が引き起こす超常現象を「トリックだ!」と真っ向否定。
ところが……この小佐野、実は六兵衛がちゃんと見えていたのだ!

それをエミに見破られるくだりは、爆笑ものです。

ところで~「超常現象なんかトリックだ!」と豪語する小佐野に対し、弁護側に控えるは速水役の~~そして『TRICK』の上田次郎こと阿部寛。
これって、なにげないオマージュ?(笑)。
(そういえば、矢部謙三も出てるしあせるあせる


この主要カルテット以外にも、濃いキャラが続々と登場!


六兵衛について研究する歴史学者で六兵衛の子孫でもあり、慰霊碑建立に力を注ぐ木戸健一役の浅野忠信。

殺された鈴子、その双子の妹・風子の二役で、悪女ぶりが怖いくらいにハマっている竹内結子。

若くして亡くなったエミの父親で彼女の目標であり、心の支えでもある輝夫役の草剪剛。
ラストでハーモニカを使ってエミと会話をするシーンは、泣けます。


他にもファミレスのウエイトレス姿が激カワの深キョン、金髪ストリッパーの篠原涼子、霊界からの使者で‘キャプラ好き’の小日向文世、売れない役者で、一世一代の熱演を六兵衛に邪魔されてせっかくのアップを台なしにされてしまう佐藤浩市、胡散臭い陰陽師で最後には月まで飛ばされてしまう市村正親、小心者の被告人の‘愛は勝つ’KAN、なんと深津絵里の恋人役で後に結婚することになるTKOの木下(大抜擢!)、金田一耕助シリーズに出てきそうな旅館の女将で、三谷作品には欠かせない戸田恵子、オールバックに口ヒゲが妙にイヤラしい山本耕史、変な髪型をした医師の唐沢寿明など……もの凄いメンツが勢揃い!

そしてそして~忘れちゃならないのが、第二の落ち武者(?)で、「こう見えても髪のセットに1時間かけてるんですから」のタクシー運転手・生瀬勝久。(とうとう矢部謙三がヅラを脱いだ?あせる
生瀬さん、メチャメチャ笑わせてくれます。



全編に笑いに満ち溢れた映画なれど、ちゃんと泣けるシーンも用意されている。

ラストシーンでの……六兵衛からエミに贈る最高のサプライズはもちろんホロリとなるところだけど、実は自分はここが涙のツボではなかった。
もう泣けて泣けてしかたなかったのは~~小佐野と愛犬との再会シーン。

六兵衛が見えているのにも関わらず、頑なに心霊現象を否定し続ける小佐野に対して、エミと六兵衛は事故死した小佐野の愛犬を‘あの世’から連れてくるのだ!

「お前、会いにきてくれたのか!いつも車には気をつけろって言ってたろ。よしよし、さあ、おいで!」
何よりも大切だった愛犬をおもいっきり抱きしめ、嬉しそうにじゃれあう小佐野。

これ、可愛がっていた愛犬を亡くした経験がある者にとっては、号泣必至のシーンかと。(中井貴一の表情も素晴らしい)



また、三流弁護士のエミの成長物語でもあり……六兵衛さんの力を借りて難事件に挑み、彼女の前に立ちはだかるエリート検事の小佐野と真っ正面から渡り合い、クライマックスでは、真犯人と法廷で対決!

この時のエミの凛とした佇まいは、痺れるくらいステキです。



それと最後の最後にちょっとしたお遊びも。
六兵衛が‘THE END’を吹っ飛ばし~~「やっぱ、これでしょ!」と画面の上からドーンと降ってくる……‘完’の文字。

そして映画を観ている観客に向かって「どうもありがとうございました~~さよなら~~!」と手を振る六兵衛さん。


思わずニコニコしてしまうエンディングです。
(エンドロールでのオマケ写真も楽しい)



三谷監督曰く、
「映画館へ来たお客様にその一時だけは日常から離れ、目一杯笑って元気になって帰ってもらいたい」

まさにその通りに、目一杯笑って、目一杯楽しませてもらいました。

『ステキな金縛り』……ステキな映画でした。