Maquette/Arc | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 Arcという、ありがちといえばありがちなバンド名、FranceはParisからTGVを使えば50分かからずに到着するLoir川に面した湖畔のような雰囲気を持ったCommune Vendômeから登場し、たった1枚のアルバム80年に残して消滅してしまった5人組。9世紀に成立したVendôme伯領の本拠地で、France最古のChansonとも言われる“Le Carillon de Vendôme”で知られ、2年ほど前にLouis Vuittonが新たにAtelierを開設したことでも知られる中世からの歴史あるこの地で、彼らは独特のAcousticな肌触りのあるFrance伝統柔らかな抒情性と“Rock Theatre”の精神と甘美な幻想性を持った音楽を生みだしていた。おそらく巡りあわせが悪かったのか、もし、この作品が70年代初頭に世に出ていたならば、と思わせるほど、1作で消えたバンドとは思えない音楽性と楽曲の完成度の高さ、演奏技術の堅実さに驚かされる。元々はTroublesと名乗って75年に7" inch Single“Wright Or Wrong / Liar”をリリースしていた4人組に、新たにVocalが加わってArcという名前で活動するようになったという。ベースのJean-François Mesuron、ドラムスのFrédéric Morice、鍵盤奏者のJean-Louis Besnard、ギターのPatrick Loiseauに、VocalのSerge Ferrandというメンツ。静と動のContrastが見事についた展開の妙やギターのArpeggioやエレピ、Synthsizerにウネるベース高い技巧を持ったキレの良いドラムスによるEnsembleは実に見事で、特にリズム面が弱いと言われる同時期のFranceのバンドの中でもレベルの高い仕上がりになっている。VocalもAngeやMona Lisaの伝統を受け継ぎながら、個性を発揮している。Franceの先達のバンドより、サウンドやEnsembleがかなり洗練されており、彼らがこのまま活動を続けていたらと思うと残念ではあるが、500枚しかプレスされなかったというこの隠れた良作が近年Reisueされ、心地良く楽しんでいる。

 

 『Maquette』はArcが80年Le Kiosque d'Orphéeからリリースしたアルバム。

アルバム1曲目“Quand”は流麗なギターのArpeggioから始まる。Synthesizerがウネリると6/8拍子のBeatにのってFranceらしいLyricalなVocalとChorusが登場するも、VocalはTheatricalに叫び、魔界へと誘われていく。Rollをうまく使ったドラムスと印象的なフレーズを弾くベースが良い。のびやかなギター幻想的なSynthesizerEffectをかけたベース、そして煌くエレピによるEnsembleもイイ感じ。

ギターと鍵盤の魅惑のUnisonから始まる“Oraison Funèbre”。端麗なエレピSpacyにウネるSynthesizerのEnsembleも良いが、Arpeggioを効果的に使ったギターのバッキングが素晴らしい。VocalはFranceらしいTheatricalな持ち味を発揮していている。緩急自在で一糸乱れぬリズム隊も良し。

ギターのArppegioとベースによるMysteriousなイントロから始まる“Ami”。Vocalは、やはりTheatricalながらGentleな佇まいで魅了し、優美なエレピも加わり、音数の多いベースと心地良いEnsembleを形成する。何気にビシバシとキメていくドラムスの小技が心地良い。AngeのChristian Decampsのような哀感に満ちたTheatricalなVocalが登場し、ザクザク刻むギターのRiffと共に一気に妖しく幻想的な世界へ連れ込まれていく。

エレピをバックにギターのRiffがカッコイイShuffleSouffle Colore”。Minimalで心地良いギターのArpeggioにウネるベースがイイ感じ。

アルバム最後をシメるのは技巧的なドラムスから始まる“Les Cités”。浮遊感のあるエレピウネるベースがカッコイイ。

(Hit-C Fiore)