Steve Harleyが今年3月17日に人生の幕を閉じた。2018年には初来日公演が企画されたこともあった。残念ながら、そのAcoustic Trioでの公演は直前になって中止となったしまったが、観たかったなあ。Steve HarleyといえばCockney Rebelというユニークなグループを率いて、いわゆるGlam Rockという括りで語られることが多い。英国音楽好きとしてはCockney Rebelも勿論好きなバンドであるけれど、ソロになったHarleyの音楽が自分にとっては結構ツボであった。かつてメイクを施して派手な衣装で着飾っていたHarleyがWitに富み、英国独特の屈折した作品を作り出していた頃ほどの毒も妖しさもないかもしれないが、少々寂しくなった頭髪部を晒して普段着姿で真摯に歌う、けれど楽曲のそこかしこにどうしても漂う英国の香りがたまらなく魅力的だった。Cockney Rebel解散後LAに短期間ながら移住したり、Hammersmith Odeonで行われた Kate BushのConcertにPeter Gabrielと飛び入りしたり、Cockney Rebelを再編したりしながら、地道に音楽活動を続けて、近年では頭もすっかりハゲて化粧もせずに、アコギを片手に歌い続ける姿が印象的であった。自分にとってはEMIと契約して70年代後半にリリースされた2枚のソロ・アルバムは商業的にも成功を収めることも出来ず、酷評されたが大好きな作品であった。以前ご紹介した『Hobo With A Grin』はLA録音を含みCockney Rebelの仲間たちに加えてBill PayneやPaul Humphrey、Michael McDonald、Fred Tackett、Bill Champlin、Bob Glaubといった米国のMusicianも参加した作品であった。本作は約1年間過ごしたLAからLondonに戻ったHarleyが英国の素晴らしい音楽仲間と制作したアルバムである。もう若くはなくかつて派手で華やかな生活を送ってきたMusicianが時代に迎合せず、誠実で気取りを捨てた、本来のSongwritingとVocalの素の魅力を発揮した隠れた名作である。
『The Candidate』はSteve Harleyが79年にリリースしたアルバム。ProduceはJimmy HorowitzとSteve Harley自身。お馴染みStuart ElliottのドラムスにJo Partridgeのギター、Backing ChorusのYvonne Keeley、そしてJohn Giblinのベースとくれば、文句なし。加えてギターにPhil Palmer、Nico Ramsden、SaxにSteve Gregoryといった英国の名手が揃い、鍵盤には名手Joey Carboneという
アルバム1発目はBryn HaworthのMandolinの響きが郷愁を誘う“Audience With The Man”。
Jimmy HorowitzがCelesteを弾くご機嫌なShuffle“Woodchopper”。Giblinのベースが最高。
The English ChoraleのChoirをFeatureしSingleでもHitした“Freedom's Prisoner”。
Acoustic Guitarとエレピ、HoammondをバックにGentleに歌いあげる“Love On The Rocks”は英国の香り漂う大好きな曲。
“Who's Afraid?”はこの時期のHarleyらしいSpringsteenの影響を感じさせる。
“One More Time”は男泣きのRock-a-Ballad。Nostalgicなハチロクのリズム隊にのって切々と歌い上げるHarleyが良い。
“How Good It Feels”もSpringsteenの影響が伺える。Steve GregoryのSaxが良い。
“From Here To Eternity”は唸りを上げるご機嫌なSlideから始まり、これまたイイ感じのドッシリ腰を落としたRock。
アルバム最後をシメるのはタイトル曲“Young Hearts (The Candidate)”。MellowなエレピをバックにHarleyがしっとり歌い上げる切ないBallad。
さようなら、Steve。
遅ればせながらSteve Harleyの御冥福をお祈りいたします。
(Hit-C Fiore)