Soundin`Off/Dizzy Reece | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 Dizzy Reeceふくよかであたたかみを感じさせるTrumpetはいつ聴いても最高ですなあ。Blue NoteにDizzy Reeceは在欧時のLondon録音の『Blues In Trinity』を含め全部で4枚のLeader Album99年リリースのお蔵入り音源『Comin' On!』を含まず)を残しており、どの作品もお気に入りだけど、特にOne Horn作となる本作は格別の味わいである。JamaicaKingston出身で、10代でプロの活動を開始英国で50年代半ばから後半にかけてTempo Recordsに残した作品も好きだけど、Blue Note4部作の最後を飾る本作はReeceのTrumpetの味わい深さからいったら最高の出来だ。PianoにWalter Bishop Jr.、BassにDoug Watkins、DrumsにArt Taylorという玄人ウケする手堅い、いぶし銀の味わいのリズム隊を配したOne Horn Quartetというのが痺れる。アルバムはStandardを中心に固め、ReeceのOriginal作1曲を含めて、技巧的でありながら人間味あふれるTrumpetに思う存分酔いしれることができる。59年に渡米してから、Funky、Mode、FreeというHard Bopが激動と混迷の時代へ向かっていく中、Reeceはあえて直球勝負の素朴で衒いのない演奏スタイルを貫き通した。Reeceお得意の力強いアタック高速フレーズを時折はさみ、見事にコントロールされた繊細で滑らかなTone絶妙のArticulation技巧的でありながら心地良く、Reeceが目指した人間の声のように響きある種の翳りを含みながら爽やかに響いてくる。決して派手さや強烈な個性があるわけではないけれど、そのTrumpetは実に味わい深い。こういう季節には、情熱的なんだけど、どこか哀愁や人間的なあたたかみを感じさせ、心を穏やかにしてくれるHard Bop Jazz Trumpeterの作品は欠かせない。ReeceのTrumpetに何度、心を癒されたことか。仕事に一区切りついてひと風呂浴びた後に、部屋で一杯やりながら、このアルバムに針を落として、ゆったり寛ぐ至福の時間である。

 

 『Soundin`Off』はDizzy Reece60年Blue Noteからリリースしたアルバム。

アルバム1曲目はBing Crosbyの名唱でも知られるStandard“A Ghost Of A Chance”。沁みますなあ。情感豊かなTrumpetの音色とフレーズ、いきなり冒頭のReeceのTrumpetから一気に世界に入り込んでしまう。のびやかに歌い上げるReeceも最高だけど、Walter Bishop Jr.ピアノ・ソロも絶品である。

典雅なピアノから始まり、ご機嫌にSwingする“Once In A While”。Patti Pageの名唱で知られ、Mose Allisonも歌ったこのStandardをReeceはSwingyに端正に歌い上げる

Fats NavarroCharlie Parkerの共作“Eb Pob”はReeceのBop魂炸裂で思わず指パッチンの男前JazzWalter Bishop Jr.Funkyなピアノ・ソロもご機嫌だし、いきなり飛び出すReeceの高速フレーズはカッコイイ。

Standardの“Yesterdays”は哀感に満ちた歌心溢れるReeceのTrumpetに酔いしれる。時折力強さも感じさせるTrumpetは生命感に満ちているWalter Bishop Jr.の時折速いPassageを盛り込み緩急自在のピアノ・ソロやDoug Watkins推進力のあるランニングもイイ感じ。

Gershwinの“Our Love Is Here To Stay”はコレだよ、コレのReeceのBop魂に満ちたアタックの強いTrumetが炸裂、Walter Bishop Jr.ピアノ・ソロBlock Chordを織り交ぜながら盛り上げていて最高っす。Doug Watkins歌いまくるベース・ソロもイイ感じ。

最後をシメるのはReeceの自作曲“Blue Streak”。軽快にSwingする指パッチンのBluesだけど、生き生きと歌い上げるReeceと心地良くBlock Chordを挟むWalter Bishop Jr.のピアノ・ソロが最高。

(Hit-C Fiore)