Mr Bigというと、どうしてもギタリストPaul GilbertとベーシストBilly Sheehanが80年代に結成した4人組のMr. Bigの方を思い浮かべる方が大多数だと思われるけれど、本日ご紹介するのは70年代に英国はLondonから登場したDickenことJeff Pain率いるツイン・ドラム体制のバンドのMr Bigの方。こちらも4人組としてアルバム・デビューしているが、70年代後半に解散して、その後90年代に復活して活動を続けていたようだ。元々はBurnt Oakといバンド名でDickenが中心となって60年代後半から演奏活動していた彼らが、72年にMarquee Clubに出演した時からMr Bigを名乗るようになったという。DickenのVocalとGuitarにPete Crowtherのベース、そしてDrumsはJohn BurnipとVince Chaulkの2人という編成は個性的だ。74年にEpicと契約して何枚かのSingleをリリースした後、EMIと契約して75年にDebut Album『Sweet Silence』をリリースしている。QueenやSweetのSupportも務め、一躍その名を高めた彼らは、ギタリストEddie Carterを新たに迎えて、5人編成となってAristaと契約。2nd Albumとなる本作『Photographic Smile』を77年にリリースする。興味深いことに、Drummerが2人いるにもかかわらず、Jim Keltnerと Simon Phillipsを参加させて、さらにAndrew GoldがPercussionで参加しており、リズム面でDynamismが増して引き締まった感じがする。Dickenによるごった煮というかよく言えば多彩な曲想も前作のようなバラつきもなく、一本筋が通っているように感じられるのは、この生命感に満ちたリズム隊によるところが大きいかもしれない。Dickenの哀感漂うHuskyな歌声も生き生きとしている。しかし、時代のめぐりあわせなのか、Punkが台頭してきた英国で、この手のバンドが生き延びるのは難しかったのかもしれない。楽曲も悪くないし、演奏技術だってそれなりだし、DickenのVocalは魅力的である。契約のゴタゴタで消滅してしまったのが残念過ぎるバンドである。
『Photographic Smile』はMr Bigが76年にAristaからリリースしたアルバム。Debut Album『Sweet Silence』とEMIからリリースの『Mr. Big』の曲が収録されている。
アルバム1曲目はタイトル曲“Photographic Smile”。Dickenお得意のナンチャッテ中華風なナンバー。Queen風なPopな味付けとChorusは中々聴かせてくれる。
“Wonderful Creation”はキレキレのリズム隊にSharpなギターのRiffが絡んで気持ち良い。VocalはPopでGlamな香りも感じられる。これまた英国的な味わいのナンバー。
“Louisiana Street”も、どこかVocalのOrientalな無国籍風な味わいが彼らの独特の個性だろうか。2本のギターの絡みも面白い。
冒頭のChorusがチョイYesを思わせる“What Color Is The Wind”。
アコギの弾き語り風に始まる“I Ain't Bin A Man”。DickenのVocalとChorusがイイ感じ。泣きのギターも良し。
Debut Albumのタイトル曲“Sweet Silence”はバタバタしたドラムと音数の多いベースにEdgeの立ったギター、DickenのShoutが激しく絡む。
Fakeな中華風で始まる無国籍でわけのわからないOriental風味の“Zambia”はMr Bigらしい個性が発揮されている。1st収録曲。
個人的にはアルバムで一番好きな“Feel Like Calling Home”。アコギをバックにDickenの哀感に満ちたVocalの魅力がグッときますなあ。
Singleでリリースされ人気を集めた名曲“Romeo”。こちらもアコギをバックにDickenの切ないVocaの魅力が思う存分発揮されている。隠れた名曲。
“Can We Live / Angel Of My Life”はピアノで始まるBalladから刻々と展開する曲とStringsも導入された抒情的なBalladから成る組曲。
最後をシメるのはDynamismに満ちたリズム隊をバックにHardにキメる“Easy”。
◎Romeo/Mr Big
(Hit-C Fiore)