Herbie Harper Sextet!/Herbie Harper Sextet | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

 20代の頃は、まさかこういう音盤を聴いてニンマリするようになるとは想像がつかなかった。West Cast Jazzとの出会いはChet BakerBud ShankGerry MulliganJimmy Giuffreであったわけだが、Chetは特別な存在としても、最初はMulliganやGiufffreにはピアノレスであったり、ドラムレスであったり、そのArrangementsの妙に惹かれてのめりこんでいったのである。そして、ようやくShorty RogersBill Holman関係のレコードを集めるようになったのもその辺からである。だから白熱したスリリングなInterplayや黒々としたBop魂に満ちたImprovisationなどは当然期待していなかった。爽やかで洗練されたWest Coast Jazzはまだ当時の自分にとっては研究材料でしかなかったのも事実だ。そして、ふとしたきっかけでMode Recordsからリリースされていたこの音盤を手にすることになった。勿論、大好きなJoanne GrauerやVictor Feldman、Pepper AdamsのModeからの音盤はとっくに手に入れて気に入っていたのだが、本作については正直それほど強く印象に残る作品ではなかった。時は過ぎ去り、何年かぶりに聴きなおしてみたところ、実に寛げる、そして聴きこめば聴きこむほどスルメ味のイイ感じの作品に思わず指パッチン。Kansas州Salinaに生まれたTrombone奏者Herbie Harper40~50年代Benny GoodmanCharlie Spivakの楽団でSwing Jazzを演奏していたという。Tenor SaxのJay Coréという人物については自分は詳しく知らないが、Big Band出身の人らしいが、これが中々の実力の持ち主。ギターに名手Howard Roberts、ピアノにはMarty Paich、ベースにはRed Mitchell、ドラムスにはMel LewisFrank CappというWest Coast Jazzの腕達者なMusicianが安定した演奏を聴かせてくれる。

 

 『Herbie Harper Sextet!』はMode Recordsから57年にリリースされたHerbie Harper Sextetのアルバム。

アルバム1曲目は上述のTenor Sax奏者Jay Coré作の“Jay's Tune”。これが疾走感に満ちたご機嫌なナンバーに仕上がっている。CoréのTenorソロも良いし、Roberts、Herper、Paich、Mitchellと続く目くるめくソロに思わず指パッチン

Little Orphan Annie”はRelaxした演奏が実に心地良く響く。この手のWest Coast Jazzは昔は退屈に聴こえたが、今では実に和めるお気に入りの作品である。

Chloe”は心地良くSwingする指パッチンJazz。HarperのTromboneは派手さこそないが実に良く歌っている。そしてRobertsの鮮やかなギター・ソロがこれまた歌っていて素晴らしい。Red Mitchellベース・ソロ、Jay CoréのTenorソロ、Paichのピアノ・ソロと続くが、これも小粋でイイ感じ。

軽快なピアノで始まるHarold Arlen作曲のStandard“Let's Fall In Love”。同名映画の主題歌であるこの曲は正に寛ぎのJazzに仕上げている。Tenorがおっとりしたイイ感じ、HarperのTromboneもマッタリしてRobertのギターはやっぱりキレの良いPassageで魅了する。

Hoagy Carmichael作曲“Skylark”はRobertsの優美なギターで始まるが、HerperのTromboneとギターのDuoで演奏される。これがまた、和みのJazzとなっていて実にイイ雰囲気なのである。Harperは技巧的にも優れた奏者だがToromboneのこういった和ませる響きを熟知している。

Jerome Kern作曲のStandard“Long Ago And Far Away”。颯爽としたThemeが良い。爽快で夏の朝に聴きたくなるご機嫌なナンバー。

アルバム最後をシメるのは典型的な寛ぎのWest Coast Jazzに仕上がった7“That's For Sure”。

(Hit-C Fiore)