さまざまなジャンルの壁を越えた音楽が生み出されて、今でこそようやく、そういったジャンルレスの音楽がそれなりの脚光を浴びるようになった。Post Classicalなどという呼び名が騒がれるようになってずいぶん経つが、Classical Musicの要素と他の音楽ジャンルの融合みたいなものも、実はずっと昔から行われてきたことであった。単にViolinやCello、ViolaといったClassical Musicに使用される楽器を使ってElectronicsと組み合わせたものやClassical Musicの楽理や方法論をベースに他のジャンルの音楽形態で演奏するものも含め、さまざまな試行錯誤が続けられてきたのである。例えば、JazzとClassical Musicとの関係でいえば、かつてThird Stream なんて呼ばれるものがあった。 Gunther SchullerやJohn Lewisらがその筋として知られるが、Juilliard School of Musicに学びPolytonalをJazzで演奏した『New Directions』などExperimentalでProgressiveな作品を残したVibraphone奏者Teddy Charlesもそういった文脈の中で語られることも多いMusicianだ。所謂Be Bopの先にあるJazzを探求したGil EvansやMiles Davis、Charles Mingusらのように音楽理論の部分で現代音楽から民族音楽に至るまで幅広くジャンルを横断し先鋭的な試みに挑んできたMusicianと共通する部分も多い。MingusがLennie Tristanoに学んだSax奏者John Laportaと共同名義で“Jazzical Moods”というタイトルでリリースした10"にはMingusのJazz Composers Workshopに参加した
Sax奏者Teo Maceroと共にCello奏者が参加し現代音楽的なアプローチをしているが、それはThird Stream的な香りを感じる。本作では、そのMingusが参加したTeddy Charles New Directions Quartetの録音が
大半を占めている。他のメンツはドラムスにJerry Segal、Tenor SaxにJ.R. Monterose。残りの2曲のみがCurtis CounceのベースにShelly Manneのドラムス、Jimmy GiuffreのTenor SaxにShorty RogersのTrumpetにTeddyというTeddy Charles Quintetの録音である。
『Evolution』はTeddy Charlesが55年にTeddy Charles New Directions Quartetで録音した作品と53年にTeddy Charles Quintetで録音した2曲が収録されたCompilationアルバムでPrestigeから57年にリリースされた。ジャケットには、ややこしいことにTeddyとRogers、 Giuffre、ManneになぜかMingusという名義になっている。これだけみればWest Coast JazzにMingusが乱入みたいな感じである。面白いことにTeddy Charles New Directions Quartetの演奏は実に瑞々しい活きの良いJ.R. MonteroseのTenorの演奏もあって意外に聴きやすい。53年のTeddy Charles Quintetの方はExperimentalである。
アルバム1発目“Violetta”はTeddyの涼し気なVibraphoneと男っぷりのよいJ.R. MonteroseのTenor Sax。MingusのSwingyなベースも勿論ご機嫌。
Mingusの雰囲気たっぷりのArcoで始まるStandared“The Night We Called It A Day”はLyricalなBalladに仕上がっている。
J.R. Monterose作の“Jay Walkin'”はSegalの軽快なCymbalにのってMingusの唸るようなベースで始まるが、これまたご機嫌な指パッチンJazz。
Segalのバタバタしたドラムスで始まる“Speak Low”もMingusのDriveするランニングにのってTeddyのVibraphoneとMonteroseのTenorがCoolで心地良い空間を創り出す。
Teddy自作の“Relaxo Abstracto”もRelaxして実に気持ち良くSwingするナンバー。
RomanticなBallad“I Can't Get Started”。歌いまくるMingusのベース・ソロも最高。ここまでがTeddy Charles New Directions Quartetの演奏。
一転して緊張感の高まるなShorty Rogers作の“Free”。スリリングなキメがカッコイイ。
アルバム最後を飾るのはJimmy Giuffre作のタイトル曲“Evolution”。リズム・チェンジなどGiuffreらしい捻りのあるナンバー。
(Hit-C Fiore)