
英国のSteamhammerというバンドの存在を知ったのは、大好きなStatus QuoがCoverした“Junior's Wailing”が彼らの曲だと知ったからである。Freddie Kingの英国Tourのバック・バンドも務めるなどClubで腕を磨いてきた叩き上げ系のBlues Rockを演奏するバンドだ。独特のうねりを生み出すMartin PughのギターとSoulfulなKieran WhiteのVocalの2枚看板に、本作からは短期間だが、なんとTangerine DreamのメンバーであったMulti-InstrumentalistのSteve Jolliffeが加わり、脱Blues Rock的な試みが顔を見せ始める意欲作となっている。唯一のオリジナル・メンバーとなるベースのSteve Davyと本作から加わったドラムスのMick Bradleyのリズム隊も躍動感に満ち、Bluesを基盤にしたPsychedelicで呪術的なサウンドに勢いを与えている。時代を考えれば、来るべき70年代を前にJazzや民族音楽の要素も取り込みながら、極めて英国的なサウンドに仕上げた本作は傑作と言っても過言ではない。一般的にはJolliffeが脱退して4人編成になった次作『Mountains』の評価が高く、彼らの最高傑作とされているが、脱Blues Rockへと舵をきった本作のごった煮感覚に満ちた魅力は、この手のRickが好きな人間にはたまらない好物となるだろう。ある意味で、同時期のTen Years Afterに匹敵する創造性に満ちたBlues Rockの進化形とも言えるサウンドを探求していた。そして彼ら同様に未だに過小評価され続けているバンドでもある。Blues RockがHeavyでLoudな方向へ向かいつつあった時期に、こういった彼らのVersatileな音楽性は、煮え切らないようなイメージを持たれてしまうことになってしまったが、逆にそれ故に今聴いても、いや今だからこそ、その非常に個性的な音楽性を楽しむことができる。
『MK II』はSteamhammerがCBSから69年にリリースした2ndアルバム。
アルバム1発目は爽快なギターのRiffで始まる“Supposed To Be Free”。Kieran WhiteのVocalやSteve JolliffeのBrassの多重録音がイイ感じ。
Jolliffeの弾くHarpsichordが重厚な雰囲気を醸し出す“Johnny Carl Morton”。いかにも英国調の雰囲気が色濃く出たナンバー。このあたりからBlues Rockの枠からドンドンはみ出ていく彼らの個性が出てきている。
Martin PughのAcoustic Guitarの妙技が堪能できる“Sunset Chase”。
メンバー5人の共作“Contemporary Chick Con Song”はアコギで始まりエレキが唸りを上げるBluesyでご機嫌なBoogieに展開するナンバー。 JollifeのWildなSaxも良い。
JollifeのFluteとHarpsichordが欧州的な翳りを漂わせる“Turn Around”。個人的にはタイトルを繰り返すGentle Giantを思わせるのフレーズがツボ。
文字通りFluteが6/8拍子のRiffを繰り返す“6/8 For Amiran”。WhiteのHarmonicaもイイ感じ。
Martin Pughの粘り気のあるギターがPsychedelicにうねりまくる“Passing Through”。
1分足らずの“Down Along The Grove”は煌く宝石のような小曲。
16分越えの大曲“Another Travelling Tune”はJollifeのSaxが彼らをありきたりのBlues Rockとは一味違うものにしている。Percussionも加わり、ギターとFluteが浮遊する後半の展開は実に気持ち良い。
アルバム最後を飾るのはArpeggioとEffectをかけたギターの絡みがPsychedelicな“Fran And Dee Take A Ride”。
Jane BirkinとSerge Gainsbourgもご機嫌ですな。
◎Autumn Song/Steamhammer
(Hit-C Fiore)