Exit/Tangerine Dream | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 80年代前半Tangerine Dreamは、Edgar FroeseChristopher FrankeJohannes Schmoellingという三人体制が軌道にのり、サントラの依頼も次々に舞い込む充実の時期であった。一方で創造性や実験性が失われてPopになったという批判を浴びることになる。かつてのLP片面1曲の大作主義から小曲が並ぶようになった本作も聴きやすくなった反面、そういった批判の対象となったようだ。そして、Tangerine DreamといえばAnalog Synthesizerであるが、このアルバムからいよいよDigital SynthesizerであるSynclavierの登場となる。80年代前半、飛ぶ鳥を落とす勢いだったSynthesizerでDAW的な機能も有していた。DAW登場前はSynclavierかFairlight CMIかという位で数多くのMusicianが我先にと、この辺のサウンドを鳴らしていたのであった。ところが、この手のDigital Synthesizerは人間的な温もりが感じられないこともあってか、次第に残念なサウンドという認識がされていく。とはいっても本作ではRoland TR-808Prophet-5といった、やはり80年代前半に大人気で今も人気の機材が使用され、ARP OdysseyOberheimMinimoogElka String Synthといった70年代を代表するサウンドがPPG Wave 2PPG 360の響きと共存しているのが今となっては面白い。

 『Exit』はTangerine Dream81年にリリースしたアルバム。
アルバム1発目は“Kiev Mission”。緊張感のあるオープニングからSequencerが続くとDrum Machineと80年代的なSyhntheにのってBerlinの女優さんによるロシア語Whisperな語り。どうでもいいけどアルバムにはスペルが誤ってKiewと表記されていたようだ。雰囲気はもう80年代な曲調も今聴くと新鮮である。当時、まだ東西に分裂したままのドイツにあって核戦争の危機を訴えている。
TDらしいSequencer80年代的なSynthesizerが幾重にも重なっていく“Pilots of Purple Twilight”。
無機的なDrum MachineにSequencerが絡む“Choronzon”。YMOにも通じるThechnoなカッコ良さも感じられる。
ひたすらMinorな響きが続く中、雨音の効果音が印象的な悲壮感漂うExit”。途中で登場する高速Sequencerがカッコイイ。
アルバムで一番のお気に入り“Network 23”はDrum MachineにのってPopな曲調ながらご機嫌なSynthesizerが次々に飛び出すナンバー。この曲もMinor Keyながら陰鬱で暗い曲が続く中、Up Tempoで少し息をつけそうな曲調が良い。
アルバム最後を飾るのは幻想的な“Remote Viewing”。MinimalなSequencerのフレーズは催眠効果があるのか、就寝前に聴くことが多かった作品だ。
(Hit-C Fiore)