Vampire State Building/Alcatraz | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 やっぱりドイツの、特に70年代のバンドのジャケットのセンスに関しては如何ともしがたいものがあるわけで、この音盤にしても、このジャケットと親父ギャグみたいな悪趣味のタイトルじゃ購買意欲湧かないだろうみたいな。The NDR Big BandのRegular Guestとしても知られるTenor Sax奏者Klaus Nagurskiが在籍していたドイツのバンドAlcatraz。ギタリストKlaus Holst、ベースのRonald Wilson、ドラムスのJan Rieck、Vocalと鍵盤担当のRüdiger BerghahnにTenor SaxとFluteを演奏するNagurskiの5人組。本作71年にリリースされているが、当時のドイツのRock Bandの中でこういったCoolで浮遊感漂うJazzのアプローチを志向していたのは先見の明がある。Blues Rockを演奏していたバンドが母体になっており、時折そういった演奏が顔を出すのが微笑ましい。もし優れたComposer、Arrangerがいたならこのバンドの運命は変わっていたかもしれない。英米のJazzやRockを彼らなりに取り入れ、演奏技術はそれなりにあっても、創造性や個性で圧倒的に彼らを凌駕するドイツの後進のバンドに軽々と追い越されていったのも仕方ないかもしれない。それでも、このバンドは幾つかの作品をリリースし続けたのだから偉い。 FaustのWümme Studioで録音された本作に感じられる若さゆえのがむしゃら感やドイツらしい何でもありのごった煮感は洗練とは程遠いかもしれないが、この当時のわけのわからない爆発的なエネルギーを少なくとも感じることはできる。Conceptも定まらず未消化であったり構成力の甘さや楽曲の二番煎じ的な部分もなくはないが、自分たちなりに何か新しいことをやろうとする前向きな野心を秘めた音楽として楽しめるのだ。

 『Vampire State Building』はAlcatraz71年ににリリースしたアルバム。
アルバム1曲目は鍵盤とベースのRiffによるHypnoticな反復フレーズの上をFlutePsychedelicに浮遊するSimple Headphone Mind”。しかし、これはNucleusの1stアルバム『Elastic Rock』収録曲“Torrid Zone”まんまではないだろうか。しかし彼らの場合は勢いよくKlaus Holstのギター・ソロが飛び出すとフォービートに展開する。NagurskiのTenorソロが炸裂しても淡々としたバックの演奏がひたすらCool
モノ哀しいピアノに続いてチョイ力入り過ぎの英語で歌うVocalで始まる“Your Chance Of A Lifetime”。哀愁の男泣きBalladかと思いきや途中から気合の入りまくったShuffleに展開していく。
ゴリゴリしたギターのRiffで始まる“Where The Wild Things Are”は骨太なリズム隊にのってTenor Saxソロが炸裂している。
軽快なギターのRiffで始まるタイトル曲“Vampire State Building”。9拍子のベースのRiffにのってTenor Sax、そしてギターが吼える。いきなりドラム・ソロが披露されると浮遊感のあるエレピをバックにFlute英語で歌われるVocal、Chorusが独特の雰囲気を醸し出す。ギターが一生懸命Octave奏法をしているのが微笑ましい。
最後は疾走するRhythmにのって“Piss Off”。Klaus NagurskiのTenor Saxソロ、そしてドラムスのみをバックにギター・ソロと多重録音の管楽器ソロのかけ合いは彼らの意気込みと気合を感じる。ギターはAlvin Leeのごとく弾き倒しでエンディング。
(Hit-C Fiore)