Spirit of Eden/Talk Talk | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 Henry Lowtherの静謐なTrumpetが流れてくるTalk Talkの『Spirit of Eden』のアルバムのA面を聴いていると、ふと時が止まったかのように感じてしまう。80年代に登場したありふれたSynth Pop BandであったTalk Talkが、まるで一つ一つの楽器が絡み合いながら抽象画を完成させていくようなOrganic淡々とした音世界を描き出すバンドへと変貌を遂げた作品。Steve WinwoodがOrganで参加した前作となる『The Colour of Spring』で、Talk Talkのそういった方向性は顕著になった。1曲のみだがPentangleのDanny ThompsonDouble Bassで参加したのが印象的だった。2ndアルバムである83年作『It's My Life』からTim Friese-GreeneProducer鍵盤奏者として、さらにComposerとして彼らと関わるようになり、音楽性が変化していったのかもしれない。Acoustic楽器の使用がさらに目立ち、多数のGuest Musicianが参加した本作では、さらに進化を遂げた彼らの音楽性は、60年代のMiles DavisやHerbie HancockらがJazzというFormatの中で成し遂げていったスタイルとの共通性さえ見つけることができる。刻々と表情を変えながらMinimalisticに、Coolに紡ぎ出されていく音の連なり深遠Atmosphericな世界に我々を誘い込んでいく。いわゆるPost-Rockの走りとも言えるかもしれないこのアルバム。次作となる91年にリリースされた『Laughing Stock』は、彼らの最終作であり最高傑作となった。

 『Spirit of Eden』はTalk Talk88年にリリースしたアルバム。
アルバム1発目は“The Rainbow”。Trumpet不穏なSynthesizer歪みまくったギター囁くように歌うMark Hollis静寂を噛んでるピアノ荒ぶる魂を響かせるHramonica、すべてが有機的に絡み合いながら丁寧に描き出していく風景に惹きこまれていく。
再び静謐なTrumpetや不協和音で始まり、緩やかに物語が始まる“Eden”。時にEmotionalにShoutするMarkのVocalと、相変わらず淡々とSompleで美しい音の塊を響かせるピアノ、神経質にかき鳴らされるギター、見果てぬ地へと運ばれていくようだ。
Desire”もTrumpetが鳴り響き、Organが流れる。MarkのVocalが高まりを告げると、音の粒子が一気に拡散していく。
ピアノをバックに呟くようなMarkのVocalで始まる“Inheritance”。Paul Webbのベースが鼓動を伝え、闇夜に輝く星のきらめきのような電子音OboeClarinetが幽玄でPastoralな雰囲気を醸し出す。
Lee Harisの淡々としたドラミングで始まるAnti-Heroin SongI Believe In You”。苦闘を乗り越えてMarkのVocalが辿り着こうとしている場所で、我々は何を感じることができるだろうか。混沌と静寂の中真摯に歌うMarkのVocalに心が震える。まるで讃美歌のようだ。
Markの呟くようなVocalで始まる“Wealth”。Organとピアノの敬虔な響きとMarkのVocalによるMinimalistic美しい世界に思わず息をのむ。
(Hit-C Fiore)