Musique Pour L'Odyssée/Art Zoyd | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 決して夜に聴いてはいけない音楽。もうジャケットからして怖そうだし。Art Zoyd異端者の音楽として恐怖映画のサントラみたいな彼らの音楽との出会いは衝撃的であった。Art Zoydが結成されたのは60年代後半だそうで、Art Zoyd 3名義の1stアルバム『Symphonie Pour Le Jour Où Brûleront Les Cités』がリリースされたのは76年であるから、長い間、不遇の時代を送っていたのであろうか。ベースのThierry ZaboitzeffにViolin、Viola、Fluteを演奏するGérard Hourbette、Trumpet奏者Jean-Pierre Soarez、ギタリストのAlain Eckertというのがデビュー・アルバムのメンツである。このドラムレス、キーボードレスの管楽器奏者と弦楽器奏者のみという編成は興味深い。その後、ギターのEckertが脱退して本作が発表されるが、ベルギーのUnivers Zeroから打楽器奏者Daniel DenisBassoon/Oboe奏者のMichel Berckmansをゲストに迎えた本作では暗黒度とテンションがさらに高まり、得体の知れない凶暴性が随所に蠢いている。PunkishでありながらCanterburyな香りやHumorousな部分が感じられた1stから一気にSeriousさを増し、AcademicなBarbarismが極まった室内楽ともいうべき本作はMagmaと並ぶフランスが生んだ異端者の音楽として傑作といえるだろう。

 『Musique Pour L'Odyssée』はArt Zoyd79年にリリースした2ndアルバム。ギタリストAlain Eckertが脱退したことにより、室内楽的なEnsembleがDarkに染め上げていく作品は、唯一無二の世界を構築している。
アルバム片面をすべて使用した組曲“Musique Pour L'Odyssée”。執拗なまでに繰り返される弦楽器のフレーズに不気味なChorus、ゴツゴツとした歪みまくったThierry Zaboitzeffのベース。
Bruit, Silence - Bruit, Repos”もMinimalなベースの上に重なる異国情緒漂う弦楽器の反復フレーズが印象的。刻々とRhythmや曲調が変わり、途中から変拍子になったり落ち着きのない展開であるが、宙を彷徨う弦楽器と管楽器のフレーズ不思議な空間Tripさせてくれる。突然Recorderが登場するところが大好き。
アルバムの最後を飾る“Trio "Lettre D'Automne" ”。イントロのMinimalな弦楽器のフレーズが暫し夢見心地の気分にしてくれるかと思いきや、やはり途中から凶暴性が見え隠れする。ドラムレスゆえの浮遊感が心地良く感じられたり、情緒的な瞬間もなくはないが、やっぱり恐怖映画のように、いつ悪夢に陥れられるかと思うと、やっぱり怖い音楽である。
(Hit-C Fiore)