無骨なTenor Sax奏者が好きだ。Titanとも呼ばれる力感溢れるTenorで魅了するHeinz Sauerは大好きなTenor Sax奏者だ。今やドイツJazz界の重鎮的存在だが、ピアニストMichael WollnyとのDuoなど、80歳を越えてもまだまだ現役で活躍しているようで嬉しい。ドイツのMerseburg出身のSauerは60年代に頭角を現してきた人だが、彼の名を初めて意識したのは、やはりAlbert Mangelsdorff Quintetでの活躍だ。そこで一緒だったSax奏者Günter Kronberg、ドラマーのRalf R. Hübnerと共にベーシストDieter Petereith、米国人鍵盤奏者のBob Degenを加えたVoicesというグループを70年代には結成している。本作はベースにAlbert Mangelsdorff Quintet時代の盟友Gunter Lenz、上述のVoicesで一緒だったBob Degen、ドラムスにはBob Degen TrioのThomas Cremerを迎えたワン・ホーン・カルテットでの充実したLive盤である。Subtone、Overtoneが心なしか多めのSauerの剛腕ぶりにBob Degenは耽美派の仮面を脱ぎ捨てて豪快に弾きまくり、勿論、表情豊かなベースのGunter LenzのバッキングとThomas Cremerのセンスの良いドラムスは抜群のノリである。
『Cherry Bat』はHeinz Sauer Quartetが89年にFrankfurtのJazzkellerでの演奏を収録したLive盤。
アルバム1曲目は“Lush Life”。ElegantなBob DegenのピアノにのせてSauerがムード満点にむせび泣き。男の色気たっぷりにSubtoneが炸裂すれば、Degenは思わず声を出す気合の入ったソロで魅了する。剛直な路線ながらBreathilyに歌い上げるSauerの無骨な男の魅力がたまらない。
“Cherry Bat”は本作唯一のSauzerのオリジナル・ナンバー。Bob Degenのピアノに導かれてModalなナンバーが始まる。SauerはSoprano Saxで無国籍風のフレーズを吹くと、Lenzが高音部を使ったベースでドラムスのCremerと躍動する。Sauerも負けじと爆発的なソロで応戦。Gunter LenzのFunkyなベース・ソロも中々イイ感じ。
英国に古くから伝わる民謡“Green Sleeves”は苦み走ったSauerのTenorが炸裂すると、今度はBob Degenも大暴れ。この人もストロング・タイプなわけであるがソロになるとプレイ中に声を上げて、このノリノリな感じがいかにもである。格調高いこの曲もソロになると一気に世界が変わってしまうところが面白い。ソロでない時のDegenのModalなピアノも中々良いのであるが。
ゴリゴリとOvertone炸裂のHauserのTenorで始まる“I Want To Die Easy When I Die”。TraditionalなGospel Songを材料に“Softly As In A Morning Sunrise”や“Loverman”引用して盛り上げるDegenとOvertone連発でいぶし銀の味を強調するSauerの対比が面白い。
最後をシメるのはBillie Holiday作の“God Bless The Child”。SauerはSoprano SaxでDegenとのしっとりしたDuoでエンディングかと思いきや、ベースとドラムスも参戦して演奏は次第に熱を増していくのが良い。例によって唸り声をあげてDegenがBluesyなソロが良い。
(Hit-C Fiore)