Europium/Zeus B. Held | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

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 Vocoderという楽器の魅力に一度取り付かれてしまうと大変である。自分は恐らく最も多感であったろう時代に出会ってしまったのだ。KraftwerkYMOMike OldfieldThe Alan Parsons Projectの楽曲で出会った、その近未来的な響きを感じさせるサウンドにすっかり夢中になってしまった。思えばSF小説や漫画や星新一の本に描かれている真鍋博さんのイラストなどに夢中になっていた十代の頃である。あの不思議な、人間の声を模したロボットやアンドロイドから発せられる言葉のようなサウンドは、それだけで自分の好奇心を満たしてくれるものであった。 正直にいえばELOは音楽的には自分とは殆んど縁がないけれど、彼らが“Mr. Blue Sky”で使ったあのVocoderの音は大好きであった。そしてStevie WonderHerbie Hancockが使っているVocoderは、Black Musicにドップリ漬かっていく自分にとって黒くて洗練された都市の生活から生まれてくる音として響いてくるのであった。つまりジャンルを問わず使用されてきたVocoderのサウンドの魅力に自分はずっとまいってきたのだ。そんなVocoderのMaestroとして日本でも一部で盛り上がっていたのがZeus B. Heldである。ドイツのBirth Controllというバンドの鍵盤奏者として知られる人物である。このBirth Controllの音からはVocoderは中々想像が結びつかないが、Zeusが70年代に残したソロ・アルバムは実はVocoder好きにとっては、たまらないものなのである。そういえば個人的には大好きなChas Jankelのアルバムでも渋くてカッコイイVocoder使いの曲があったと思ったらZeusと関係があったようだ。

 『Europium』はZeus B. Held79年にリリースしたZeus名義のソロ・アルバム。ドラムスに2曲のみだがCanのJaki Liebezeitが参加している。Birth ControllからベースのHorst Stachelhaus 、ドラムスのManfred Von Bohr が参加している。
Analog Synthesizerがビュンビュン飛び交う期待度満点のオープニング“Introduction Spaciale”。
お待ちかねのVocoderが登場するDisco Shuffle “Held It”。
Slap BassVocoderの共演“Mechanical Choir”。
Blues Rock風のノリにVocoderが意外と映える“Sound Trigger”。
Waltzナンバー“Intermezzo In Aqua”。
続いても3拍子の“Harlie's Waltz”。
Intermedium Nepalese
CoolなMusik,Music,Musique...”はJaki Liebezeitが叩くドラムスも素晴らしい。
アルバムの最後をシメる“Europium Suite”というタイトルの組曲は4つのパートから成る。
Hammondが映える“Coulered Tan Go”、Slap BassやイナタいVocoderがダサカッコイイ“Europium”、遊び心満載の“Four Phases Of An Imagist's Blue”、最後はManfred Von Bohrのドラミングがカッコイイ“Sound City Song”。

Europium/Zeus B. Held

(Hit-C Fiore)