Gli Occhi Di Un Bambino/Toto Torquati | BLACK CHERRY

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JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


 今年の9月に観たLiveは、どれも強烈な印象を残してくれた。9月の怒涛のLive観戦のラストを飾ったTigran Hamasyan Trioもまた、ある意味で印象深い、濃い演奏で、楽しませてくれるものであった。昨年に最も聴いて感銘を受けたアルバム10枚にも選出したTigranの『Shadow Theater』でも感じていたものが生の演奏を聴いて一気にクリアになった気がした。ここ数年ずっと書き続けてきたことだが、中南米を中心として誕生してきた、あらゆるジャンルを超越した新しい才能と通じるところがTigranにあるのは明確だ。しかし、Tigranの音楽を聴いた時に感じた、ある種のDéjà-Vu感。それは彼の個性でもあった。ある意味で過剰なまでの血の濃い音楽であるのだが、かつて欧州の変拍子ビシバシExoticな民族音楽風の旋律がのたうち回る音楽を聴いて悶絶していた時期を思わず想い出してしまったのだ。Jazzや民族音楽も、クラシックやElectricaも、今でいう音響系まで呑み込みながら自分独自の音楽を創作してきた先達。彼らは主に70年代をProgressiveに闊歩してきた連中だ。英国には今から40年以上も前に変拍子やPolyrhythmCross-Beat(Cross-Rhythm)、Polymetricを駆使しつつPolytonalityまで取り入れた楽曲をCoolに演奏していた連中もいたわけだ。面白いことにFlying Lotusあたりの音楽にも彼らの影響は強く感じるであった。70年代にはイタリアにもそんな凄腕連中がいて、地中海の旋律を変拍子にのせて楽しませてくれたのだ。ただし、本日ご紹介する鍵盤奏者のToto Torquati、彼はどちらかといえば、そういったInovativeで革新的な側面は殆どない。しかし、さすがは芸術と情熱の国である。Jazz、クラシックとRockを実に美味しくブレンドしてイタリア的なDramaticな演出で我々を楽しませてくれる。Toots ThielemansGato BarbieriBill ColemanEarl Hinesとも共演歴のあるTorquatiだが、Popsの世界にも足を突っ込み、Claudio BaglioniLucio Dallaとの仕事でもよく知られている。

 『Gli Occhi Di Un Bambino』はToto Torquarti73年RCAからリリースしたアルバム。本盤ではMassimo BuzziMichele Jannacconeツイン・ドラムス体制。ベースはMario Scotti、ギターはLuciano Ciccaglioniといった腕利きMusicianを揃えて演奏は非常にまとまったアルバムに仕上がっている。
アルバムの1発目“La Terra Che Nessuno Conosce”は厳かなOrchestraの響きで思わずジャケットのような幻想的な世界に誘い込まれる。
一転してエレキ・ギターとベースの奏でるBluesyなRiff軽やかなWurlitzerのエレピが絡む“Il Mattino Dopo”。意外にFunkyな鍵盤使い。極めつけはSynthesizerとカッコ良すぎるHammondソロ。これは思わず腰が動く。
切れ目なく、ベースラインに導かれてオルガンをバックにいきなり荘厳な男女Chorusで始まる“Dove Il Buio È Signore”。TorquartiのVocalも登場。この曲も途中からキレの良いリズム隊とピアノがFunkyに盛り上げる。そして唸りをあげるギター・ソロ、鍵盤ソロ。
Tu”はピアノ・ソロ、そして優しく語りかけるようなTorquartiのVocalが入る。最後はイタリアらしい混声Chorus、Vocalも力強くShoutしてピアノのみになり、エレキも加わってエンディングへ。
続いてもTorquartiのGentleなVocalで始まる“Adagio Per Gli Occhi Di Un Bambino”。途中から女性ChorusFluteが入り混じりながら、Tempo Upして短いカッチョイイHammondソロ
HammondがFunkyに跳ねるGesù Quel Giorno”は徐々にGospelっぽいノリで盛りあがっていく。ここでも男女混声Chorusが大活躍。
StringsとVocalによる不穏な始まり方でいきなり終わる“Presagio”。
疾走感に満ちたUomo Nasce Fiore Cresce Appassisce E Muore”。ここでもHammondとSyntheが抜群にカッコイイ。
Nicola Samaleの指揮するStrings Orchestraが抒情的な世界を描く“Adagio Per Gli Occhi Di Un Bambino”。
アコギのカッテイングHammondがカッコ良すぎる“Il Conto Alla Rovescia”。
Romanticなピアノ弾き語りのBalladEra L'Ora Del Tramonto”。後半から加わる女性ChorusStrings Synthesizerも素晴らしい。
最後は“La Terra Che Nessuno Conosce”でクラシカルにアルバムは幕を閉じる。
(Hit-C Fiore)