『Alfie』は、やっぱりイギリス映画の中では『Joanna』と並ぶMid SixtiesのLondonの雰囲気がバッチリ出ている大好きな作品だ。
主人公は、自分勝手でキザで、手当たり次第に知り合った女性を口説いては手に入れるプレイポーイで、釣った魚に餌はやらないタイプ。
ロンドンのEAST ENDのアパートに住んでタクシーの運転手をしている。
ビシッとブリティッシュ・スタイルのスーツを着こなし、言葉巧みに様々なタイプの女性を渡り歩く。
女性の敵のような男でテーマも実はシリアスだったりするのだけれど、主人公を演じるマイケル・ケインのチョイ自意識過剰気味のナリキリっぷりが、どこか憎めない。
(主人公の生き方は、女性にとっては、かなり不快な点があるかもしれないが)
当時のLondonの街並みや人々のファッションや、Sonny Rollinsがスコアを手がけた粋な音楽を堪能する分には実に楽しめる映画だ。
*自分にとってマイケル・ケインといえば、何といっても『国際諜報局(The Ipcress File)』のメガネをかけたスパイ役である
(「オースティン・パワーズ」などでもネタにされていて、ケイン自身もオースティンの父親役で出演したりしている)*
この映画では,ロンドンの下町のCasanova風にCockney訛りで,まるで友人に話しかけるように絶え間なくカメラに向かっていちいちコメントを入れるのが面白い。
EAST ENDのくすんだ空気の中で、主人公が独身貴族の生活を謳歌する様にRollinsの書いた‘‘Alfie’s Theme’’が実にマッチしている。
当時ポール・マッカートニーの恋人で、67年のクリスマスに婚約したのに翌年にポールの浮気が原因?で婚約破棄してしまうJane Asherが、料理の得意な女の子役で出演しているのが、個人的にはポイントが高い。
勿論Alfieにナンパされる役なのだが、Alfieのワガママが原因で結局、別れてしまう。
けなげに主人公につくすJaneの赤毛がまぶしい。
(JaneといえばGongやCat Stevensの音楽が使われた『DEEP END(早春)』は、いつになったらDVD化されるのであろうか?)
主にロンドン西部で撮影されたであろう、この映画には幾つかの英国を象徴する美しいシーンが登場する。
自分が印象的だったのは、主人公が入院した綺麗な庭園(これが英国式庭園というものなのか?)に囲まれたサナトリウム。
そして、そこで親しくなった隣のベッドの患者を見舞いに来た妻を
Alfieが家に送る途中で口説くシーンで流れた美しいジャズ・ワルツが素晴らしい。
Rollins作曲の “On Impulse”というモーダルな曲で、まどろみを誘われる。エンディングで流れるバート・バカラック作曲の有名なテーマ曲よりも好きだ。
実はこの映画の中で流れている音楽は、Rollinsが書いた曲を、
Stan TraceyやRonnie Scott、そしてTubby Hayesといったブリティッシュ・ジャズ好きには堪らないメンツが演奏しているらしい。
音源化されていないそうだが、なんとかして聴いてみたいものだ。
Impulseから出ているRollinsのアルバム『Alfie』は、Rollinsが書いたスコアをOliver Nalsonが編曲し、RollinsがKenny BurrellやPhil
Woodsらと演奏したもの。
リラックスしたRollinsが縦横無尽にアドリブをくりひろげる世界。
こちらも当然、素晴らしい作品。
(Hit-C Fiore)