LC/The Durutti Column | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


BLACK CHERRY

 ガサツな人間である。そして多分、体育会系なんだろう。それにしても面白いのは年を取るにつれ、自分の友人関係は不思議なくらい、自分とはまったくタイプの異なる人々が集まってくることだ。ありがたいことである。繊細でよく気がつく美容師さんや天文好きの絵描きさんとか神経質な文学青年とか、マメでセンス抜群の写真家さんとかアキバ事情に詳しい電脳派とか、神経の細やかな収集家さんとか整理整頓好きの麗人とか。これまで全く自分には縁のなさそうな世界を垣間見せてくれる友人達に感謝している。その一方で、どうしようもなく自分と同類の所謂、悪友という連中がいる。一緒にバカやってきた仲で、お互い恥ずかしいところを見せ合ってきたヤツラだ。こういう連中は、皆ガタイがいいし、食事の量も半端ではない(遊びもだが)。薄汚れた路地裏の焼肉屋とか小汚い中華料理屋に行っては、バカ話をしながら半端じゃなく食べまくるわけだ。それはそれでいい。しかし、困ったことに前述の自分とは違うタイプの友人たちは、決まったように小食なのである。で、そんな中でバカ食いしている自分が恥ずかしいというか、ま、なんだ、彼らに連れられていく店というのはオサレな店が多く、それでなくとも自分ひとりが明らかに浮いているように感じてしまうのだ。かといって自分が食べる量を減らすでもなく、彼らに「もっと肉食べようぜ、肉、ガンガンいこうぜ」とも言えないのである。しかし、そんな場違いの自分を楽しんでいたりもする今日この頃。オサレなカフェ(うわっ)で大盛りを注文して笑いとったりとか。年をとるってこういうことかもね。

 The Durutti ColumnVini Reillyさんはかなり小食な人らしい。写真などで拝見すると、うなずけてしまうが、元々折れてしまいそうな、やせ細った身体で繊細で真面目そうな顔立ちをした人であった。最近の写真でもまるで世を達観してしまった若き仙人のような風貌になっている。それでも夢見がちな少年の面影を残していて、基本的には変わらぬ印象を受けた。自分は元々が「おうよ、ギターはアンプ直、エフェクター?いらないわ。ストラップは長め。ギターは腰で弾け。」みたいな人間である。それでも、自分の世界とはほど遠い、エフェクターを駆使しながら繊細にギターを爪弾いて、まるで俗世界から隔離された絵描きさんのように独自の音世界を描き出すDurutti Columnの音楽を聴くのだ。


 『LC』は81年にリリースされたThe Durutti Columnの2枚目のアルバム。デビュー・アルバムである前作『The Return of the Durutti Column』同様、Factory Recordsからの作品。Durutti Columnは最初こそバンドであったが、Vini ReillyのSolo Projectとなっている。70年代後半のManchesterに現われて、Post-Punkの時代を生き抜き現在も活動を続けている。この唯一無比存在感、世界がどうなろうとも、ずっと季節はずれの絵葉書を送り続ける姿勢こそがRadicalなのだ。淡々と漂うように、ガラス細工のように壊れやすく幽玄な孤高の世界を築き上げる。どこか退廃的な香りがするのも、この時代性かもしれない。その繊細であり、痛々しいほどピュアで、時に眩いばかりの神々しさも感じさせるサウンドは聴き方によっては、ひどく内向的なものになるかもしれない。そして不思議なことに、開放感歓喜を味わうことも可能であろう。Martin HannettのProduceによる紙やすりのSleeveに包まれたデビュー作では小鳥のさえずりとリズム・ボックスから始まる名曲“Sketch for Summer”で永遠の夏を描いたVini Reilly。本作からはドラマーのBruce Mitchellが加わっているのとピアノやVocalが入っているナンバーが含まれているが基本的には1枚目と変わらない。

Nav KatzeのE村さんもDurutti Columnを好きだといっていたっけ。

(Hit-C Fiore)