作者の牧さんは、何とアノ松本零士さんのご夫人。
「水藻草」「化粧坂」「銀蛾の塔」の3編を収録。いずれも昭和48~49年の作品。
全般に昭和の薫りが、濃厚にプンプン漂う。セリフといい、ファションといい。
女性の服装が、
☆真ん中分けでロングのウェーブに、ミニスカートに厚底の
パンプス
☆小さめショルダーバッグ・クラッチバッグ
☆ショート丈のコート・へそ出し・レイヤード(重ね着)
と、今と同じなのが面白い。(ていうか、今のがリバイバル)
またほとんどの女性が美人でグラマーで色っぽく、読んでて香水の匂いを嗅いでる錯角に陥る。
とにかく絵が美しい。ストーリー展開とセリフも素晴らしい。
なので、「どれが一番好きか?」と問われても、甲乙つけがたい。
水藻草…半同棲中の男女が住んでるアパートと踏切と金魚蜂が、
印象に残る。
自由でいたい男と安定を求める女の感情のすれ違いが、
ほろ苦い。
化粧坂…鎌倉に実在する化粧坂を中心に、主人公が性に目覚め
少女から大人の女へと変化する様を、丁寧に描いている。
(*私は実際、化粧坂を上ったことがあります)
銀蛾の塔…一つの燭台を巡りプレイボーイの男・過去の女・
現在の女の想いが絡む。結婚を決めた女の微妙で複雑
な心の揺れは、男性にはなかなか理解できないかも。
一見劇画チックかと思いきや、性描写が多いが品があり、色っぽく、文学的である。
昔のドラマか映画を観てる気分になり、昭和の雰囲気にどっぷり浸かれる。
とにかく文句無しの、傑作!
by ヴィヴィ