Mistress/Gabi Delgado | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC


  硬派だった先輩がいきなりナンパ師になったようなキマッテいないポーズと自信無げな視線。

爽やかサンを気取ったジャケットから漂う不穏な空気。

イカツイBODYから繰り出されるWhisperが宙を舞う。

無骨なまでに力技にたよってきた男はセクスィー番長に生まれ変わった。

FunkでLatinなサウンドに塗れて、小癪なまでに快感に忠実な技を繰り出す男。

Conny Plankのプロデュースが冴え渡りぎこちなかった男が突然自信に満ちた笑みを浮かべる。

“キスの歴史”だとか“アモーレ”だとか、あんなに硬派だった先輩、正気っすか?

Sex Goddess”ってなんなんすか?

DAFの時の雄叫びは何処にいってしまったのだろう?

鍛え抜かれた肉体が柔らかに弧を描き熱帯夜の中に消えていく。

Jaki Liebezeit の叩くドラム、Manfred Schoof のTrumpet、女性コーラスが煽り続ける。

それはそれで身体を流れるラテンの血が成せる業なのかもしれない。


 『Mistress』はGabi Delgadoの唯一のソロアルバムは83年に発表された。

DAFDeutsch-Amerikanische Freundschaftの略)時代とはうって変わり享楽的な作風がいかにも80年代的。

この作品に先立つDAFの片割れRobert Görlのソロがヘタレなエレポップ(それはそれで面白い)だったのとは対照的。

80年代的いんちきトロピカルなムード漂うジャケットも良い。

Conny Plankのプロデュースが元々Gabiの持っていたエロな部分を見事に引き出している。

エレクトロとCanJaki LiebezeitやドイツJazz界の大御所Manfred Schoof や女性コーラスの生音が絶妙に絡み合う。

この時代らしいシンセ・ベースも腰にくるウネりがあって良い。

汗臭いセクスィーでマッチョなGabiとバックのドイツっぽい醒めたラテン・ファンクな演奏が描く仮想トロピカルな世界。

元DAFのChris haasが結成したLiaisons Dangereusesの81年発表の同名アルバム(これもConnyのプロデュース) と並び80年代エレクトロニック・ミュージックの名作。

元DAFといえばKurt DahlkeDer Planも忘れてはならない。


                     Hit-C Fiore