Joao Gilberto | BLACK CHERRY

BLACK CHERRY

JAZZ, BRAZIL, SOUL MUSIC

Joao Gilberto三度目の来日公演が近づいてきた。


2003年の初来日公演の驚きと興奮は多くの人々に語られているけれど、


なによりもJoao自身が、日本を特別に愛着のある場所と考えてくれて


いる事が嬉しい。


そして弾き語りというフォーマットこそが彼の音楽を楽しみ、味わうに


あたって一番理想的なのだ。


演奏する度に、毎回異なったヴォイシングリズムパターンを取り入れ


ながら弾くギターと、囁く様な歌が一体となって生み出されていく魔法


決してクリシェに陥ることなく70歳を過ぎた今でも、新しいリズムと


ハーモニーとメロディの調和を探求し続ける孤高の創造主


とことんまで研ぎ澄まされた日本の侘び寂びの文化のごとき味わい深さ


を堪能するにはサイドマンなしの弾き語りで聴いてこそ最高である。


ブラジルではVioraoと呼ばれるナイロン弦のクラシック・ギター。


ベース奏者がいなくても、右手親指で低いベース音を弾き、残りの指で


美しい和音をシンコペートさせながら躍動感と心地よさを生み出す。


「いかに声量がありヴィブラートを付けられるか」という常識を嫌って


生み出されたポルトガル語の美しい響きを生かす、囁き、語りかける


ようなノン・ヴィブラート唱法




NY7273に録音された『Joao Gilberto』は侘び寂びの美しさ


に圧倒される。


基本はJoaoの弾き語りにシンプルな打楽器奏者


この時期のJoaoAstrudとの別れもあって不遇の時代と言われている。


しかし、この初心に帰ったシンプルなフォーマットから作り出されていく


修行僧が何かを探していくごとき深遠な音楽に圧倒されずにはいられない。


部屋の電気を消して蝋燭の光だけ付けて正座して聴きたくなる。


Joaoが打楽器奏者の演奏に厳しく注文を付けるのは、彼のViorao


生み出すシンコペーションの魔術の邪魔をしない為である。


音符を前やうしろにずらしたり、休符を入れてみる、強拍ではない拍子に


アクセントを置くといった数々の試行錯誤の結果、作り出されたマジック。


それに極めてシンプルな打楽器が心地よくアクセントを付けていく。


このアルバムでこそJoaoの最大の魅力が発揮されている。


このアルバムは邦題で『三月の水』というタイトルが付けられている。


そのアルバム・タイトル曲の Aguas De Marco”はJobimの名曲。


まず、このアルバム1曲目で心を鷲掴みされる。


Valsa”ではJoaoのコーラスがダビングされた娘に捧げられた曲


そして最後は不遇時代のJoaoを支えたMiushaとのDuet


最後に心があたたまって終わるところもいい。





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