『住めば都』は永久に来ず。 -10ページ目

『住めば都』は永久に来ず。

浅田 ゆみ、名城 蘭、結城 薫による、リレー小説『住めば都』は永久に来ず。を連載中…?

父の遺産のアパートの管理人になってしまった来島草太郎(華も恥らう高校2年生!)と変わった人ばかりのアパートの住民約6名とのハチャメチャどたばた系(仮)な管理人生活。

5th[小さき赤毛、瞳は翡翠]

拝啓、父上殿。
貴方が残したこのアパート、まともな住人はいないのですか?

僕が会ったこのお姉さん。
とてつもなくインパクトが強い人で正直困っています。
っていうより、ほんとなんでレイ君巻き込まれたんだろう……。

「あの、倫音さん」
「なあに?あ、アタシの事は、気兼ねなく倫って呼んでちょうだい!」

ははは、倫音さん。さっきあったことを見たばかりではとても恐ろしくてそんなこと言えませんよ。
とりあえず、小麦粉まみれになった階段の惨事を見て、再びため息が出たのは言うまでもないだろう。

「それじゃあ、倫さん、何でOLなのに学生寮にいるんですか?」

…………。
ち、沈黙が重いよ!!
何か聞いたらいけないことだったのかな?

「あはは、そこはまあ乙女の事情ということで」
「あはははは、そうですよねー」

とりあえず、色々と突っ込みたいところは有るけど、突っ込まないことにした。
例えば、乙女とまだ言ってもいい年なのか。とか、理由になってないだとか……。
うん、気にしたら負けだと信じている。
(というよりも気にする程の体力気力が僕にはもう残ってません)

「あの、倫さん。白銀さんと仲が悪いんですか?」

僕は後ろで倒れている二人をちらりと見て、倫さんに聞いた。
倫さんは、ああとか言いながら、肩をすくめておどけたようなため息をついた。

「ええ、そうなのよねぇ。まったく何故かしら?白銀とはソリが合わないのよねぇ」
「そうなんですかー」

あははうふふ、と続く会話で僕は半分以上は苦笑いでした。
これから上手くやっていく自身がないんですけど。

とりあえず、今気になっているどうしてレイ君が打たれたのかということを聞こうと思った。

「ちなみに、何でレイ君はえっと……『ロングヘアーアタック』でしたっけ?ど……」
「ああん、もぅ!やっぱかわいい!!何、今の必死で思い出してる姿!もーカワイイ!!」
「うわああぁぁ!!」

皆さん、今の状態がどれかわかりますか?
 1:倫さんが発狂した
 2:僕の息が止まりそう
 3:目の前に呆れた顔の少年がいる
さあ、どれだと思います?

……まあ、見当はつくと思いますが1~3全てが答えです。

僕は倫さんにいきなり抱きしめられて体制を崩してしまって、地面にうつぶせの状態で倒れた。
(ちなみに倫さんは僕に抱きついたまま)
すると、誰かの靴が見えた。その人物はしゃがみ込んで、僕と目線が合うようにまで顔を下げて近づけてきた。

その顔立ちはまだ幼く、僕よりも年下に見える。
きっと、今年僕も編入する予定の『龍ノ宮学園』に入学する子だろう。
しゃがんでいるから解りにくいが、身長は小さい。
……僕の従兄弟も同じ年だけど、もしかしたらそれよりも小さいかもしれない。

その幼い顔つきに、誰からもわかる位に呆れと哀れみの色が表れていた。
そして、僕の顔を見ると、ため息をついて立ち上がり倫さんの頭を叩いた。

「倫!お前どこの中学生をさらってきやがった!」

ええ!?ちゅ、中学生って僕のこと!?
確かに僕は同世代の子よりも背が低いし、顔つきも幼いって言われるけど、中学生はないよ。

「あら、失礼ね!彼はいまそこで拾ったのよ!!」
「いや、違いますから!それに、僕は高校生です!高校2年!」

ある意味怒涛の勢いで突っ込んで、しまった。
すると、目の前の少年は笑いながら言った。

「なんだ、俺といっこ違うだけかよ。ん?ってことはお前が今日来るとか言ってた管理人か」
「あ、はいよろしくお願いします。来島草太郎といます!それで君は?」
「お。俺か?俺は日比谷亮[ひびやりょう]。まあよろしく頼むぜ、管理人さんよ」

そう言って亮君はレイ君に何か声をかけていると、レイ君ががばっと起きて二三回頷いていた。
僕は、レイ君の面倒を見ている亮くんを見て思った。どっちが年上かわからないと。
ちなみに、僕と亮くんが話している間ずっと、きゃーショタが二人で絡んでるー!とか倫さんがいっていた気がしたのは僕の空耳だろう。

「よろしくおねがいします。亮君」

そう言ったとたんくるりと首を回してとても嫌そうな顔をしていた。

「おい、草太郎。俺様の事は亮『大先輩様』と呼びやがれ」

あー、そうですねー。
先輩ですねー。先輩ですかー。
先輩……えええぇぇぇ!!?

「りょ、亮く、いや亮さんってもしかして……」
「龍ノ宮学園3-D、日比谷亮!お前より一つ年上だ!!」
「す、すいませんでした!亮先輩!」

うっし、とかいってそのまま亮先輩はレイ君と一緒に階段を下りていった。
……あれ?レイ君って部屋に帰るんじゃなかったんだっけ?
そう思って倫さんに訊ねると「ああ、レイもあなたと同じように先週引っ越してきたばっかだからきっと、荷物とか届いたんじゃないの?」って教えてくれた。

そうか、レイ君はどうやら別の学校から引っ越してきたようだ。
だから同じ学年の亮先輩が面倒を見ていたのか。と一人納得してしまった。

「あー!!ってもうこんな時間じゃない!」

倫さんは唐突に、腕時計を見てあわてだした。

「あ、用事があったんですか?」
「そうなのよ、同僚に呼ばれてるんだったわ。いってくるわね!」

そう言うが速いか、階段を駆け下りて行った。

「うぐはっ!!」

……気のせいじゃあないと思うけど、どうやら倫さんは白銀さんを丁寧にも踏んでいったようだ。
さあ、これで空き部屋はもうないかな?と思って地図を広げていると、後ろからある意味恐怖の声が聞こえてきた。
そう、真後ろの耳元から。

「置いていかないで……くださいよ」

ひぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!
また出た――!!しかも耳元で息がかかったああ!

next…

結城

4th[修羅場 adult ver.]

レイ君と共に二階へ上がる。

その間



無口!!
(いや、かと言ってレイ君にベラベラ喋って貰うのは些か無茶苦茶無理難題ではないだろうか。)

そう思いながら冷や汗を額に垂らす僕の感情を読み取ったのか

レイ君がぐるりと振り返った。

当然いきなりの事なので僕は驚いた。
(螺子を外すみたいに頭が回るんだもんよ、びっくりするさ)

「…白銀に何されたかは聞かない。だからそんなに気に病まないで。」
「は…はは。」


元気づけてくれた。

でもね。


レイ君…

手遅れだよ。


もう既に僕の精神はあの悪魔に浸蝕されつつあるかもしれないんだ!!

「さ、レイ君。行こう?ずっと立ち止まってる訳には行かないし「どうして…どうして僕を連れてってくれないんですかぁ~っ……」ひぎゃ―――――――――――――――――――っ!!」


し…

白銀さんが背後から迫って来たァ!!

しかも水溶き小麦粉塗れで!!
(露出してる背中にベッタリとこびりついてる!!そこでチラッと見える真っ赤な十字架の刺青が気になる!!)


「…白銀。」
「おやおやレイくぅ~ん?感心しませんねぇ?…僕の『標的(エモノ)』を引き連れて歩くなんて。」


…?

この二人…

仲良くないのか?


なんかオーラが…

…っていうか。


僕は先程の風さんの言葉を思い出す。

『白銀さんは悪戯好きですが飽きたら…(中略)…特定の人以外は…。』


つまり

白銀さんにとって僕の位置(ポジション)は

新しくやって来た管理人

から

都合の良い悪戯の標的(マト)。


に!?

「死ね!!白銀さんッッ!!!」
「…っ!!?」

突如口から出た叫びに隣りのレイ君が驚いて肩を震わせた。

なんだろう…

僕っていつか発狂して死ぬタイプだよな…


そして僕の叫びを耳で拾った白銀さんは

両腕を広げて

「さぁ草太郎くん!!…いいえマイハニー!!僕は此処に居ます!!」

寝言を言い始めた。
(この人耳大丈夫?)

疲れた…。

チラッと僕はレイ君を見る。

きっと今僕はレイ君に助けを求めているのだろう。


僕の視線に気付いたレイ君は

「…。(ジー)」

視線で返してくれました。

レイ君って…

目で語るタイプ?
(目は口程に物を言うを実践?)


レイ君と異世界コミュニケーション(視線の投げ合い)をし

白銀さんとこれまた異世界コミュニケーション(一方的なアピール)をしていたら。


急に

「いつまでも外でベラベラ喋ってんじゃないわよ!!近所迷惑って日本語早く覚えやがれ白銀えぇ!!」

女性の強い声がして


ズビシィッ!!!


白銀さんの顔面に束になった何かが飛んで来た。

それは見事なまでに白銀さんにヒット。


そして

廊下の突き当たりにまで白銀さんが吹っ飛んだ。

記録:測定不能。


呆然。

口が塞がらない…。

異種格闘技見てるみたい…。


そしたら次は

「レイイイ!!アンタのその根暗な顔見てるだけでイライラするんじゃあぁ!!ちゃんとシャキッとしてから来いやぁ!!」

ズビシィッ!!!

あ、二発目。


なんでレイ君がその餌食に…(汗)

二人がグッタリしてる地獄絵図な廊下に僕が佇んでいると


部屋から女の人が出て来た。

「あら…?貴方新しい管理人さん?」

栗色のとてつもなく長い髪の毛が特徴的な

20代前半くらいの人だった。

「あ…っ!僕…来島草太郎と言います!!新しく管理人としてやって来ました!!」
「畏まらなくても大丈夫よ。この学生寮は無礼講パーティみたいなモンだし。アタシは相田倫音(あいだりんね)。OLよ。」

そう言われたら…

もっと腰が低くなっちゃうよ…(涙)

でも…

さっきのは一体誰が…?


「あの…。」
「何?」

申し上げ難いなぁ…

『二人の青年が吹っ飛んだ』なんて。


「この…二人がグッタリしてるのって…」
「あぁ!それはアタシがやったのよ!」
「ですよねー………ってえぇ!!?」

信じられない!!

目の前のゴージャスなお姉さんが…

あの二人を吹っ飛ばすなんて!!


「因みに…どのように…?」
「アタシのこのロングヘアを使ってね…こうしたのよ!!」

力一杯倫音さんがロングヘアを振り回すと

ズビシィッ!!


…壁に引っ掻き傷みたいなものが出来た。



ギャアァ!!

髪の毛は…

女の命じゃなかったんですか!?

寧ろ武器じゃないですか!!


「アタシはこれを『ロングヘアアタック』と呼んでいるわ…。」
「お…恐ろしくそのままなネーミングですね…。」

なるべく怒らせないようにしなくては…。


恐怖に僕が震えていると

倫音さんは

「イイ…イイわ!!その…幼児が恐怖に震える姿!!ヤダ!これだからショタコンって止められないのよねぇ!!」

ギュッ!!

抱き締められた。


……。

もう…。






好きにして。

(ていうか一階から二階に掛けての小麦粉の跡は僕が掃除する事になるの?)

next…

3rd[かくも恐ろしき争いは無し]

僕が叩かれる扉を見ると、ゆっくりと少しだけ開けて人の声が聞こえた。


「借りてた砂糖、返しに来た……」


そう言って中を覗き込んできた人は、銀の髪をして、瞳が蒼い日本人離れした外見の少年だった。……男の子でいいんだよね?


「……君、誰?」
「あ、初めまして!新しく管理人になった来島草太郎です」
「僕は、如月レイ……はじめまして」


僕が挨拶をすると、向こうも名前を名乗ってくれた。
どうやらこの人も、このアパートの住人らしい。
よかった。本当によかった……!住んでいる人たちが皆、涼風さんみたいな人だったら僕、死んだお父さんを死した後も恨むところだったよ!?


そんなことを思っていると、向こうで僕にお茶を入れてくれていた風さんもやってきた。
(いや、彼女の部屋なんだから、客人が来たら出迎えるのは当たり前なんだけどね)

そのすぐ後、僕のお父さんへの恨みは確実なものになった。
お父さん、モットーが『人生サプライズ』なのはいいですけど、息子を巻き込まないで下さい。
本当にお父さん……ある意味、貴方を尊敬しますよ。無駄に。


「あら、どうして如月君がいるのかしら?」
「星野……。借りていた砂糖、返しに来た」


風さんは僕にどうぞ、とお茶を目の前に置いてレイ君の前に砂糖を受け取りに行った。
それにしても、一日に同じような光景をこんなに短時間で見るとは思っていなかった。
しかし、みんなで調味料貸し借りするなんて、どれだけ調味料難民がいるんだよ!


「あ、ちゃんと……買いなおしといた。……いつもすまない」
「いいえ、いいのよ。……あら?」


問題はここからだった。
まさか、このやり取りをみているときはあのようなことが起こるとは誰も想像しまい。
風さんが手渡されたスーパーの袋からは、どこででも見られる某大手企業の、ロゴがついた砂糖であった。
一見すると、何て事がない光景だろう。だが、僕達には何て事が無くとも、彼女には大問題だったらしい。


「如月君、コレうちで使ってる砂糖のメーカーと違うんだけど?」


それはもう、素敵な黒い笑顔で言う風さん。
それに対して、表情を微動だにせず、淡々と言い返そうとするレイ君。
はっきり言って怖いからね、二人とも!!


「砂糖は……わからない。だけど、砂糖買う人、皆それ、買ってた」
「だから、我が家はコレじゃないのよ!」


少しだけ、声を大きくして言った風さんにレイ君は、不満そうに言った。


「……砂糖は……砂糖だ。」


最後の一言が引き金となった。そこから先は……両者無言だった。
そう、無言なんだ、無言なんだけど、怖いんだ……!
そう、いわゆる冷戦。うん、そんな感じ!


僕を挟んでお互いがにらみ合っている。
いや、性格には風さんが微笑んでいる(って言っても、明らかに歓迎ムードじゃないよ)から、睨んでいるのはレイ君だけだった。
しかも、レイ君はレイ君で、表情が変らないので睨んでいるというよりは、ただ見ているだけにも見えるけど。
それよりも、間に挟まれた僕はどうすればいいの!?


「まったく話にならないわね」
「……そっちこそ」


お父さん、今更ながら貴方がなぜ僕にこのアパートを残したかわかりました。
貴方は……死んでまでも僕を困らせて楽しみたかっただけでしょう!


「草太郎、どこか行く……?」
「え?」


不意に話をふられてびっくりした。
そもそも、今までの話と何の脈略も無い。
僕が少し答えられないでいると、レイ君は僕が答えるまできっと見ていると思われる視線を投げかけてきた。
……これは、質問というよりも無言の尋問ですよ、レイ君。


「あ、はい。他にこの竜宮荘に住んでいる人に挨拶をしようと思ってます」
「ふうん……誰に、した?」


よくよく考えると挨拶というほどのことをしていないような気がする。
……いや、違うか。皆と挨拶以上の濃いコミュニケーションを取ってしまった。
来て早々、僕は何をしているんだろうな。


「風さんと、レイ君。…………それと、涼風さん」
「洗礼……受けたんだ」


最後に名前を出したことによって、何となく何があったのかレイ君は察してくれたのか、それ以上は追求してこなかった。
ありがとう、今はその優しさが嬉しいよ!だって、だって!
ファ―ストキスがあれとか……。誰だって話したくないよ!


「じゃあ、1階、終わり……次、僕を含めないで、2階の人だけ……」


あれ……?ちょっとした疑問が沸いた。
レイ君が「僕を含めないで」って言ったっていう事はつまりレイ君は2階に住んでいるということだ。
だけど、1階には確か4部屋あったはずで、僕が尋ねたのはまだ2たったの2部屋だ。


「ねえ、残りの2部屋は?」
「「空き部屋……」なんですよ」


二人に同時に同じ事を言われてしまった。


「あら、真似しないで下さる?」
「……そっちこそ」


結局冷戦は起こってしまうのであった。
仕方が無いので僕は無理矢理割り込んでいった。
どうやら、この二人は(似てないけど)同属嫌悪らしい。


「僕はもう帰る……行こう、草太郎……」
「あ、はい。それでは、風さんこれからよろしくおねがいします」


風さんがこちらこそ、と言っている間に僕はせっかく入れてくれたお茶を一気飲みにした。
……やはりすっかり冷めてしまっていた。

そういう訳で、僕は残りの部屋を後にして、レイ君と階段を上って2階へと上がった。


next…

結城