四国でも指折りの絶景区間を持つ土讃線、琴平から大歩危まで区間ではかつてトロッコ列車の普通列車が走っていましたが、これを観光列車としてグレードアップした列車が登場しました。
「四国まんなか千年ものがたり」、予讃線の愛ある伊予灘線区間で走る「伊予灘ものがたり」に続くものがたり列車として華々しく登場しました。
種車は新系列車両投入により余剰気味?なキハ185系、生粋の特急型車両である点、3両の改造を必要としたためか全席グリーン車の特急列車となっています。観光による運転停車が多いことから表定速度は普通列車以下の「特に急がない」、列車種別はもはや料金に対してかかっているものですね、本末転倒ですが…。
中間車はJR四国の二代目ジョイフルトレイン、「アイランドエクスプレス四国Ⅱ」の片割れを再改造したものとなっています。
中間車の反対側は白のラッピングとされています。
各色はものがたりの章を表しており、ドアやかつてドアがあった部分(笑)に章の名前が書かれています。
車体中央には伊予灘ものがたりよろしくレタリングロゴが描かれています。一昔前のJR九州も確かこんな感じでしたよね、懐かしきレッドエクスプレス。
2号車の中央にはイラストロゴが入ります。生まれはキロハ、仕切りがあった部分だったのでちょうどよかったのでしょうね。
時代的にビートが入っているわけですが、ここは金色となっています。ええ、さりげない豪華さですよね。
前面へ目を移すと、イラストロゴがドーンと配置され、運転台下にレタリングロゴを入れています。貫通扉にあったヘッドマーク表示幕は撤去され、ロゴのエンブレムが貼られていますね。
そして、連結面付近を見るとミュージックホーンが仕込まれています。移動が主目的の列車に付いているようなドケヨホーンではなく、内外ともに存在するビューポイントに鳴らすエンターテイメントを考慮したものです。
側面方向幕はこの通り。JR四国の本気をふんだんに盛り込んだ自慢の観光列車、久々に長くなりそうです・・。
それでは、まずは1号車の「春萌(はるあかり)の章」から参りましょう。春に芽吹く若葉をイメージしたものなのでしょうね。
デッキ、ドアです。オリジナルの折戸が残されていますが、化粧板は貼り替えられています。
イラストはこの通り。
トイレです。こちらは男女共用トイレで、中は洋式になっています。
女性専用トイレです。昨今は普段鉄道に乗らない女性客も増えているからこその設置なんでしょうね。
デッキとの仕切りを外側から、アテンダントさんが後述するマットを片付けようとしているところでした(笑) 窓は細長く、余白に章名とイラストロゴを入れています。
ドア上には飾り照明を取り付けています。
いよいよ車内です。実用一点張り殺風景なあの姿はどこへやら、観光列車らしい内装に大変貌しています。
デッキとの仕切り、こちらは車内側です。仕切り扉を含めて木目調の化粧板としていますね。
左側には前面展望を映し出すためのテレビモニターが設置されています。限りあるスペースですからね…。
最前面です。構造自体は改造前から変わらずで、半室構造で中央に仕切りの棒を付けて立ち入りを阻んでいます。
車掌台側の衝立の中には懐中電灯や消火器が収納されています。
かつてここはデッキでしたが、仕切りの壁を撤去し客室に含められています。またドアの跡には二枚のガラスをはめ込んでいます。これで大歩危の絶景も余すこと無く見ることが出来ますね。
それではお席です。こちらは4人組ボックスシート席で、お食事が楽しめるように大型の固定テーブルが付けられています。
2人組ボックスシートです。よく見ると、モケットの色合いが2パターンあることが分かります。若葉も単に緑一色じゃないですもんね。
そしてお一人様に優しいカウンター席です。両側に展開されていますが、どちらが良いかはWebに記載されている車窓風景と相談になりそうですね。あとは日射問題でしょうか…。
席自体はボックスシートと同一の固定席、肘掛けが短めなのはやっぱり出入りを考慮した結果でしょう。なおランチョンマットが異なっているのは往復で別々に撮影したからでございます。
カウンターテーブルはこの通りで、暖房配管はそのまま残されています。あめつちのように足掛けを兼ねて斜めに処理が出来ていればよかったのですが…。
座席下には荷物置き場があります。車内空間を創るにあたり荷棚を総撤去しているからですね。
お次は3号車、「秋彩(あきみのり)の章」へと参りましょう。
先頭のドアを埋めた部分を外側から。鉄板で継ぎ足ししてますね(^^;;
デッキ、ドアです。土讃線は低床ホームのため、足元にデッキが残っています。アテンダントさんにも言われますが、足元に注意しましょう。
イラストロゴは紅葉ですね。
デッキの壁には植物が描かれています。
そしてこちらはススキですね。
そしてこちらも仕切り扉を外側から。仕様は大きく変わりませんね。
車内です。燃えるような赤、個人的にはこの車両がお好みではあります。夕暮れにもマッチしますので、多度津行きで乗車するのが良いかもしれませんね。
デッキとの仕切りを内側から。肩部分は原型と異なり斜め手前に傾いた壁を付けていることが分かります。
最前面です。運転台側の窓は常時締切扱いのようですね。
車掌台側にある衝立上には乗車記念証明カードとスタンプが置かれています。この辺りは非常に観光列車らしいですね。
天井です。古民家の囲炉裏から屋根を見上げたようなイメージらしく、格子状の飾りがアクセントとなっています。
窓です。配置は改造前から変わっていませんが、柱が木目調の化粧板になっています。
日除けは簾のようなデザインです。フリーストップ式なので日射の状況により使い分けが出来ますが、観光列車ではなるべく下げずに使いたいですよね。
柱間には飾り照明があり、座席番号も同時に記載されています。
で、座席が無い場所の飾り照明では、季節のイラストロゴが書いてあります。
この飾り照明が威力を発揮するのがトンネル、柔らかなオレンジの光がまるで囲炉裏のほのかな灯火のように天井へ向けて上がります。復路は高松まで運転すると、この照明が生きるのになぁとも思います。結局高松まで行くわけですし(後述)。
それではお座席です。こちらは4人組ボックスシート席です。座席のモケット以外は大きく変わりませんね。
テーブルにも飾り照明が置かれています。ろうそくのようなイメージでしょうか。
で、ランチョンマット別バージョンも撮ってました(笑)
こちらは2人組ボックスシート席。グリーン車とは言え座り心地はまぁレストランのそれで、あくまで移動空間ではなく食・景色を楽しむためのものと捉えればよさそうです。
ひとつの窓に一組のボックスシートを配置するのはさすがに窮屈なため、ボックスシート間に小物を置ける荷物棚が設置されています。運転停車時の散策時間、貴重品はお忘れなく。
続いてカウンター席です。なお、両側ともに1番の席のみコンセントが使用可能です。
カウンター席を後方より。列車内とは思えませんね(^^;;
最後は2号車の「夏清(なつすがし)の章」ですね。この車両は通常で入り口が無く、両先頭車から乗り降りすることとなります。一応ドアは残されていますが非常用となります。
というわけで車内です。この車両には7mに及ぶソファが設置されており、グループ利用を念頭に置いた車両となっています。
デッキとの仕切りです。こちらにはテレビモニターが無く、変わりに絵画が掛けられています。
で、反対側にはカウンターがあり、食事や車内販売の準備を実施するための基地となっています。特に名前は無いようです(笑)
奥に設置された非常ボタンは案外アッサリしたものですね…。多度津工場の改造ステッカーも貼られています。
さて天井を見上げると…なんと鏡面仕上げとなっているではないですか(驚) なるべく天井を高く見せようと考えられていますね。
窓です。座席で少し隠れちゃってますが…(^^;;
で、テレビモニターはこんなところにありました。座席がロングシート方向なので、視線がこちらへ向くから…なのは分かりますが、側面展望しながら前面展望の映像見るのって何か違和感ありますよね(^^;;
座席です。11人掛け、ソファタイプのロングシートです。ソファ自体は着席区分が明確になっていますが、更にクッションを置いて着席位置を示しています。それにしても真っ白なソファ、維持管理が大変そうで…。
テーブルは木製、化粧板に合わせたものですね。
カウンター側の席は車椅子対応席となっており、乗り移りのために折り畳みが可能となっています。
テーブルに再度ズームイン。一部にガラスが入っており、下から照明で照らしています。そのガラス面には席番が記載されています。
で、一部にはこの列車が関わるイラストが額縁に入れられて置かれています。いやはや何とも家庭的観光列車。
車端部付近にはひそやかに燈台風飾り照明が置かれています。
さて、車内は夏らしい爽やかな雰囲気があり「夏清の章」らしあなぁと思った反面「あれ、冬清(ふゆすがし)の章は?」と思いながらデッキへ出ると…白い化粧板でまとめられた空間、なるほど、ここがある意味冬清の章ということですか。
反対側から。観光列車にはありがちな地元工芸品を飾るショースペースも小さいながら設置されています。
デッキとの仕切り扉です。いやー、「あ、そういうこと!?」という勝手な(笑)ひらめきで満足しておりました。
洗面台です。ここも元々はドア跡ですね。
蛇口は自動式で、横にはペーパータオルが備わります。
車椅子対応トイレです。ええ、撮ってはいませんが中の空間もそれなりとなっています。
もう一度ショーケースです。トイレ待ちのひとときにいかがでしょうか(笑)
細かいところを見ると、貫通路の握り棒が金色に塗られています。手の触れるところ、目につくところを銀色にしないのは「伊予灘ものがたり」から続くこだわりでもありますね。
そして、スタッフオンリーのステッカーにまでロゴマークがあるではないですか…どこまで細かいの(笑)
さて車内はここまでとしまして、列車が入線しますとアテンダントさんが専用のマットを敷き準備完了です。
1編成2箇所の出入り口、マットは2種類存在します。
琴平駅ではこの列車の発着時のみ専用の休憩スペースが開かれます。
で、一番奥の腰掛けにはなんと金の畳があります。一体いくらすんのこれ…。
上りの讃岐財田駅では、駅舎の脇にある香川県の保存木に指定されているタブの巨木を見学することが出来ます。
スイッチバック駅の超秘境駅、坪尻駅では乗務員さんの移動も兼ねてホーム付近を散策出来ます。下りの方が散策時間が長く、坂をもろともしない南風号が駆け上がっていく勇姿を見ることも出来ます。
坪尻駅の行き止まり。ここから進行方向を変え、スイッチバック用の引き込み線へと動き出します。
徳島県に入り阿波池田駅では、甲冑姿の観光ボランティアの方と記念撮影が出来ます。なお、どうやら毎日ではないようですのでご注意を。
上りの阿波川口駅ではタヌキの被り物をした地元の方々のおもてなしと、駅マルシェ的に地元特産品を購入することが出来ます。アテンダントさんも記念撮影に応えてくれます。
で、記念撮影用にボードもございます。
この列車に乗るならやはりお料理は外せません、列車の予約後にみどりの窓口でお食事券を購入することが出来ます。予約をしていると、このようにおしぼりや箸などが用意されています。
今回お料理を頂いたのは下り大歩危行き「空の紀行」、アテンダントさんにお食事券を渡すとメニューとウェルカムサービスの引換券が手渡されます。
引換券は先程ご紹介の琴平駅の休憩スペースで利用するもので、いろはすとスープを頂けます。金色の畳で頂きました。
メインはこちら、4品が入っています。蓋にはロゴマークが入っております。なお、1ドリンクはエクストラチャージ無しで頼むことが出来ます。頼んだのは讃岐ビール、やや辛口で食事には合いますね。
その後に出てくるボルチーニ風リゾット。最近は増加傾向にあるとは言え、車内で温い食事を頂けるのは今や貴重な体験です。
食後にはコーヒーが付きます。お茶菓子まで付いてますね(笑)
コースメニューはこちら。もちろん、季節、年度により高頻度で更新されますのでご参考までに。
復路ではコースのお料理は頼まずに軽食を。確か阿波ポークの焼豚、味付けは濃いめですがビールに合うんですよねぇ。
多度津行きで飲んだのは阿波ビール、四国まんなか千年ものがたりオリジナルラベルとなっております。こちらはフルーティな爽やかさが広がる味となっております。
食後のデザートではケーキセットを頂きました。
一日の運用を終え、高松駅にも顔を出していました。入庫の関係かと思いますが、高松駅までの運用があってもいいのになぁ、とも思わなくはありません。あまりにも間延びしますかね?(笑)
「伊予灘ものがたり」に続くものがたり、新たなページを刻み始めたばかりながら乗車率は上々で、指定席も取りづらいと聞きます。リピーターも増えつつあり、何かと暗い話題が多い地方路線に射す明るい光明とも言えます。