岩手が生んだ詩人、宮沢賢治の代表作に「銀河鉄道の夜」があります。あのお話も生きるとは何ぞやというものを問うた重い物語ですが…。そのモチーフとなったのが現在はJR東日本釜石線となっている岩手軽便鉄道です。ここに、岩手県の震災復興支援を目的として2014年からSLが走り始めました。
C58、ローカル線用の機関車で、この239号機は釜石線でも運用実績があった機関車でした。復活以降、臨時快速「SL銀河」として走り続け、時折JR東日本管内で出張運転を行っているとのこと。
遠野駅での小休止を終えて峠を越えます。後ろ側を見るのもまた珍しいですね。
乗車時は5月、運転席にはこいのぼりが付いていました。石炭の煤で真っ黒になっていますが(^^;;
陸中大橋にてまた小休止。
列車は花巻発着ですが、盛岡車両センターから回送されるため盛岡駅にも顔を見せます。
運行5周年を記念してか、ヘッドマークも特別仕様でナンバープレートは赤プレが付いていました。
側面もこの通り。この「SL銀河」、片道のみの運転で2日で1往復な上、運転日もそこまで多くないので乗りに行くときには注意が必要ですね。
で、私のメインはやはりこちら、SLと来れば付き物となるのは客車、2014年にして客車の手配を一から行うのは大変だったでしょうに…。がしかし何やら状況がおかしい。動力を持たない客車のハズなのになぜか前照灯が4発も付いているではないか…。
題名時点で盛大に出オチをかましてはおりますが、この車両、元は北海道で活躍したキハ141系ディーゼルカーで、更に出自を辿ると登場時は本当に客車であった車両です。
客車列車の削減により余剰となった51系客車に運転台とディーゼルエンジンを取り付け、JR北海道学園都市線で活躍しました。その後同線の電化でまたも余剰となり、北海道で活躍することを許されなかった車両をJR東日本がSL銀河用に買い取って改装したのが現在の姿となります。
釜石線の峠越えはC58の動力だけでは不十分と判断され、この車両の動力はそのまま残され補機の代わりとなっています。確かにこうすればDLを連結する必要もないですね。
社内では動力付きのこの客車を「旅客車」と言う当たり障りの無い呼び方をしているそうです。ちなみにこの旅客車の運転士にお聞きしたのですが、C58が検査に入った時にはDLが代替機となるそうです。えっ…?(^^;;
車体にはSL銀河の名の通り、大きな星座のレリーフが貼り付けされています。塗装としなかったのはさすがですね。こちらは1号車のさそり座です。
お次は2号車、いて座となっています。ちなみに中間車は動力無しのキサハ144となっています。オハでもいいような気がしますが、台車はキハ56の流用品だそうな。SLが使えない時の代走でDLが付くのは、この付随車のためでしょうか。
3号車はわし座らしいのですが、白鳥っぽいですよね、これ(笑)
4号車ははくちょう座です。夜明けを意識した塗装となっており、4→1号車と明るくなってゆくグラデーションとなっています。
停車駅では特製の乗車位置が貼り付けされています。
いよいよ車内です。銀河鉄道をイメージしているだけあり星座を各所に配したデザインとなっています。
ドアです。北海道時代はステンレス地そのままでしたが、移籍に際して木目の化粧板が貼り付けられています。床には一部タイルカーペットが貼られていますね。なお、デッキは北海道時代に撤去されており今も変わりません。
一部車両を除いて設置されている半自動ボタンです。遠野や陸中大橋の長時間停車時の車内保温には必要かとは思いますが、何となく観光列車には似つかわしくないような気がします。この辺りに住んでいる方は使い慣れているとは思いますが、首都圏を中心に慣れない方も多いと思います。
ごみばこです。かなり低い位置にあり、容量も大きくありません。
フリースペースです。ちょっとした椅子も用意されています。
その椅子です。1.5人掛けでしょうか(笑)
最前面です。SLの背面もバッチリ見えます。
その運転台部分。あくまで動力確保、ブレーキハンドルは「抜取」とし、「SL補機」のモードを使うことでATSを切った状態で力行が出来るように改造されているそうな。左側にはSL交信用の無線機もあります。
窓には乗車記念ボードがマグネットで貼り付けされています。定位置はここで、アテンダントさんが記念撮影用に持ってきてくれます。
トイレです。さすがに洋式に交換されました。
そしてバリアフリー対応トイレ。円筒形となっています。
天井です。正直乗車した瞬間に「何だか安っぽいなぁ」と思ってしまったのですが恐らく原因はこれですね。照明がカバー付きのLED灯となっていますが、蛍光色にしてしまったばっかりに色合いが飛んでしまってるのでしょうね。暖色にしておけば、水銀灯の雰囲気を少しでも出せたでしょうに…。
窓です。北海道時代の二重窓はそのまま残されており、今は煙の浸入を防ぐために使われています。窓上にはステンドグラスがはめ込まれており、各車のシンボルの星座が描かれています。日除けは横引き式で、生地はやや厚手となっています。
座席です。SLと言えばやっぱりこれ、ボックスシートが整然と並びます。
フレーム自体は従来のままですが、木目の化粧板の貼り付け、持ち手の変更、モケットの貼り替えを行っています。背ズリはヘッドレスト部分が分離したものの厚みが若干増やされています。テーブルは北海道標準の細長いタイプから本州標準の変則四角形のものに交換されていますね。
車椅子対応座席を中心に2人掛けも存在します。座り心地は安定の国鉄クオリティを保っていると思います。足元の暖房用の配管が邪魔と言えば邪魔ですが、我慢我慢…。
各車にはLCDディスプレイが搭載されており、各種情報を流せるようになっています。
2ボックスに一箇所の割合で入れられている装飾です。かなり良い雰囲気が出ていると思います。
各車にはちょっとしたギャラリーがあります。ボックスひとつ分を潰してカーテンを降ろした状態で展示しています。
ギャラリーその2。銀河鉄道について触れられています。
ギャラリーその3。ここは面積が広めですね。
ここは月と星のミュージアムだそうで。自然が多い宮城県、星がよく見えそうです。
フリースペースも兼ねたギャラリーです。宮沢賢治に関する展示物がそこかしこにあります。
向かい側はこんな感じ。宮沢賢治って、色んなことをしてますよね。
4号車の車内販売スペースを兼ねた車両です。奥がそのスペースとなります。
その手前はやはり簡単なギャラリーとなっています。
車内販売スペースです。駅弁やアルコールを含むドリンク等、販売内容は充実しています。
向かい側のフリースペースです。ロングシート配置のゴツいソファが置かれていますね。
その先にはSL銀河のギャラリーもあります。構想段階のスケッチ等、貴重な資料が展示されています。
その中でもこちら、車内の構想図はこんな感じですね。
このスケッチを見ると、ボックスシートだけでなく2人掛け等も描かれています。座席自体も元のフレームを使うのではなく、全く新しいソファ調の座席を置く予定だったのかもしれません。実際はえらく現実的な感じにまとまってしまっていますが・・。
1号車のミニプラネタリウムです。
鑑賞には車内で発行される整理券が必要との事。内容は・・まぁ乗ってからのお楽しみとしましょうか。多くは語りません。
新製から様々な伝説を作ってきたキハ141系列。ここにまた、新たな伝説の1ページを刻み込んだのでした。末永い活躍を祈ります。
最後に運転席にカメラを伸ばしてみました。色んなレバーが並んでいます。